物件選びが大変なのは、人生で最大の買い物なのに、検討すべき項目が多くて、何を優先したらいいのか判断に迷うことも一因なのではないだろうか。
何を優先したらいいのか、あなたの深層心理を定量化し、物件Aと物件Bの優劣を数値化する「物件選択支援システム」(無料)を開発したので紹介しよう。
評価指標は10項目
スムログメンバーに届く読者からの相談の中には、物件Aと物件Bどちらがいいのかといった類の質問が少なくない。
どちらの物件がおススメなのかは、その人の経済力に加え、広さや間取り、駅からの距離など、その人のライフスタイルによるところも大きい。
物件選びが大変なのは、人生で最大の買い物なのに、検討すべき項目が多くて、何を優先したらいいのか判断に迷うことも一因なのではないだろうか。
何を優先したらいいのか、あなたの深層心理を定量化し、物件AとBの優劣を数値化する「物件選択支援システム」を開発したので紹介しよう。
評価指標は、次の10項目。評価結果は物件A・物件Bそれぞれについて点数で表示される。
- 価格
- 広さ
- 間取り
- 駅からの距離
- 都心へのアクセス
- 専有部の仕様
- 共用部の仕様
- タワーマンション
- 売主、建設・管理会社
- その他
「物件選択支援システム」の使い方
CASIOが運営しているサイト「高精度計算サイト」に筆者が作成した「物件選択支援システム」をアップしておいた。もちろん無料で利用できる。
使い方を以下に示す。
※下記の説明内容は難しいように思うかもしれないが、操作はいたって簡単。プルダウンメニューから該当する数値を選択し、「計算」ボタンを押すだけで結果が得られる。
Step1:評価指標の一対比較を行う
「価格」と「広さ」を比べたとき、あなたにとって、どちらが重要か?
次の9段階で評価する(曖昧さを避けるため、偶数は排除している)。
- 1:両方の項目が同じぐらい重要
- 3:前者の方が後者より若干重要
- 5:前者の方が後者より重要
- 7:前者の方が後者よりかなり重要
- 9:前者の方が後者より絶対的に重要
たとえば、 「価格」(前者)の方が「広さ」(後者)より「若干重要」と思えば「3」となる(次図、ピンク丸囲み)。
また、「共用部の仕様」(前者)よりも「売主、建設・管理会社」(後者)のほうが「より重要」と思えば、「5」の逆数として「1/5」となる(次図、橙色丸囲み)。
このようにして、45か所の一対比較を行う(プルダウンメニューから選ぶ)。一対比較であれば、比較するのは2つだけなので、どちらがどれだけ重要であるのか判断しやすくなる。
10の評価指標の最後に「その他」を設けたのは、その人の拘りたい条件を評価指標として設定できるようにするため。「保育所」「ハザードマップ評価」「マンションの規模」「公園への近さ」「実家との距離」など、あなた特有の評価指標として利用してほしい。
なお、既婚者の場合は、夫婦で協議しながら一対比較を行うのがいいかも。
※デフォルトでは、タワーマンションを選択肢として考えていない人を想定した値が設定されている。
Step2:物件A・Bの評価指標の一対比較を行う
上述した評価指標10項目それぞれについて、物件A・Bを比べたとき、あなたにとって、どちらが重要か?
物件Bに対する物件Aの重要度として、上述したと同様に9段階で評価する。
※デフォルトでは、物件Aは物件Bと比べて、安いが狭く、駅から遠いものとして想定した値が設定されている。
Step3:C.I.(整合性指標)の確認
「計算」ボタンを押すと、計算結果が表示される(次図)。
このときC.I.(整合性指標 Consistency Index)は正の値でかつ0.2以下であることが望ましい。「価格vs広さ」から「売主、建設・管理会社vsその他」まで、45か所の一対比較に矛盾する点が大きいほどC.I.は大きな値になる(C.I.=0は矛盾が全くない状態)。
C.I.が大きい場合には、Step1の一対比較を見直す。
比較か所が45か所と多いため、C.I.を0.2以下に収めるのはかなり難しい。よって、結果をザックリと知りたいのであればC.I.が1.0を下回っていればいい、くらいの緩いスタンスでもかまわない。
物件A・Bを比較した結果(例)
上図のデフォルト値をもとに計算した結果を可視化したのが次図。
物件A(安いが狭く、駅から遠い)よりも、物件B(高いが、広くて駅に近い)のほうが自分の希望に沿った物件であることを示している。
物件Aは特に「価格」の満足度が高い。物件Bは「価格」だけでなく、「広さ」「間取り」「駅からの距離」「都心へのアクセル」「専有部の仕様」といった多くの項目で満足度が高い。
※各評価指標の数値は、最低が0.0、最高が1.0。
ちなみに、評価指標10項目のウェイトに係る計算結果は次図の通り。デフォルトでは「価格」のウェイトが大きい。
【参考】「物件選択支援システム」の詳細
「物件選択支援システム」は、AHP法 ( Analytic Hierarchy Process ) を利用している。AHP法は、主観的判断とシステムアプローチの両面から問題を解決する意思決定手法のひとつで、階層分析法とも言う。
以下、「物件選択支援システム」の詳細を記す。詳細に関心のない方は読み飛ばして構わない。
(1)各評価指標のウェイト計算
評価指標に係る一対比較を行い、各評価指標のウェイト(重要度)を計算する。
入力データ(評価指標に係る一対比較)のデフォルト値は次表の通りである。
各評価指標の横方向の数字を掛け合わせた値の10乗根(比較対象が10項目あるからです)を計算することによって、幾何平均を求める。
「価格」であれば、次の計算によって、幾何平均は3.90。
- (1×3×3×3×3×5×9×9×5×5)^(1/10)=3.90
同様にして、「その他」まで、10の評価指標すべての幾何平均を計算し、小計すると15.07。
各評価指標の幾何平均値を小計(15.07)で割った値が各評価指標のウェイトとなる。
「価格」であれば、ウェイトは0.26。
(2)C.I.(整合性指標)の計算
- C.I.=(各評価指標と各ウェイトを乗じた値の算術平均ー評価指標の個数)/(評価指標の個数ー1)
※実際の計算式はかなり煩雑になるので、上式はかなり省略している。
(3)物件A・Bのウェイト計算
物件Aと物件Bの一対比較を行い、それぞれのウェイトを計算する。計算方法は、上述した「(1)各評価指標のウェイト計算」と同様。
(4)総合評価の計算
物件Aにつき、評価指標ごとに、「(1)各評価指標のウェイト計算」で求めたウェイトと「(3)物件A・Bのウェイト計算」で求めたウェイトを乗じて、物件Aのウェイトを計算する。物件Aの10個のウェイトを合計した値が物件Aの総合評価の値となる。
物件Bについても、同様。
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