北風時に荒川沿いを北上する離陸ルートの航空機騒音を把握するために国交省が設置した測定局2か所のうちの1か所が機能不全状態になっている。
なぜ、このような事態になっているのか、整理しておいた。
庁舎屋上の排気ダクトの騒音に邪魔されて、航空機騒音を測定できない
国交省は毎月末、新飛行経路 定期運用報告として「航空機騒音の測定結果(速報値)」を公表している。
筆者は毎月公表される速報値を都度ザっと眺めているのであるが、騒音測定局19か所のうち、江東区の東京都交通局大島総合庁舎に設置された騒音測定局のデータが21年6月以降、測定不良状態になっていることに気が付いた(次図)。
庁舎屋上の排気ダクトの騒音に邪魔されて、航空機騒音を測定できないというのである。
庁舎屋上のダクトから排気音が継続的に発生しており、その影響を排除した結果、航空機の騒音として評価できる騒音が少なくなっています。
同測定局は、北風時に荒川沿いを北上する離陸ルートの航空機騒音を把握するために国交省が設置した2か所のうちの1か所(もう1か所は江戸川区立第五葛西小学校)。
たった2か所しかない測定局の1か所が機能不全状態なのはとってもマズイ。
FAQ冊子v6.2_P121にピンクを加筆
国交省はこのような状態を放置しているのかといえば、そうではなかった。
8月31日に公表された7月の速報値には、騒音測定局の移設準備を進めていることが記されていたからだ(次図)。
庁舎屋上のダクトから排気音が継続的に発生しており、その影響を排除した結果、航空機の騒音として評価できる騒音が少なくなっています。なお、大島総合庁舎については、庁舎の大規模改修工事が計画されているため、騒音測定局の移設準備を進めています。
測定局の移設はいつまでに完了するのだろうかと思っていたら、別の角度から関連情報が入ってきた。
国交省東京航空局が9月27日に出した入札公告「東京国際空港航空機騒音測定局移設工事」である。
測定局移設工事、入札再公告で1か月遅れ。8か月分のデータが欠測!?
国交省東京航空局は9月27日、入札公告「東京国際空港航空機騒音測定局移設工事」を出した(提出期限11月22日)。ところが同局は10月29日、同一件名で再度入札公告を出した。
公告に記載された「発注概要」から、騒音測定局が大島総合庁舎から大島文化センターに移設されることが確認できる。
発注概要
本工事は、束京都交通局大島総合庁舎に設置されている航空機騒音測定局を江東区東大島文化センターに移設し、付帯設備工事を行うものである。
【撤去・移設機器概要】
- 航空機騒音測定局
屋外収容箱 1式
マイクロホンスタンド 1式- 鋼製架台 1式
- その他付帯設備 1式
再公告では「発注概要」は再公告前と同一だが、競争参加資格が「B又はC等級」から「A又はB等級」へとより上級に変更されるとともに、参加要件がより厳しくなったことから、手を挙げる業者がいなかったので、大手に泣きついたのではないかと、筆者は見ているのだが……。
それはさておき、測定局の移設はいつまでに完了するのか?
じつはそのことについても、入札公告・再公告に記されている。
当初の公告では工期は21年12月24日までとなっていたのだが、再公告では22年1月31日までと1か月延伸された。つまり移設後の測定局が航空機騒音データを観測し始めるのは早くても来年の2月1日以降ということになるのではないか。
移設前の測定局の測定データの不備が露わになったのは21年7月30日に公表された6月の速報値。測定局の移設を完了して測定を再開できるのが22年2月1日(筆者予想)。8か月分のデータが欠測する事態である。なぜ、測定再開にこんなにも時間を要してるのか?
気になったので、東京航空局に移設工事の経緯を開示請求してみた。
開示請求で分かった移設決定プロセス
まず、国土交通省ホットラインステーション(航空関係)から問い合せてみたところ、東京航空局の所管なので東京航空局総務部契約課(03-6880-1505)に問い合せるよう回答がきた。
たらい回しされる予感がしたので、次の文章にて東京航空局長宛て開示請求することにした。
東京航空局発注分の入札公告のうち、公告日21年9月27日「東京国際空港航空機騒音測定局移設工事」(下記URL参照)の「発注概要」に騒音測定局が大島総合庁舎から大島文化センターに移設される旨が記されています。
同移設の全ての経緯と意思決定プロセスの分かる一切の文書。https://www.cab.mlit.go.jp/tcab/img/contract/03_koukoku_tcab_ippan_pdf/19-210927-a290.pdf
その後、手数料200円を支払い、「行政開示決定通知書」を受領し、「行政文書の開示の実施方法等申出書」を郵送。開示請求してから42日後にようやく開示資料を郵送にて受領することができた。
開示された資料はA4判21枚。内訳は以下。
江東区から3候補地の提案があり、最終的には国交省が現調のうえ東大島文化センターが最適と判断したことが分かる。
- 【3枚】大島庁舎の改修工事工程案に係るメール(東京都交通局⇒東京航空局)
※肝心の工事工程表(案)はのり弁(次図)※リンク(PDF:762KB)
- 【11枚】騒音測定局の移設候補に係るメール(江東区環境保全課⇒東京航空局)
※江東区が3候補地点(東大島文化センター、第三大島小学校、第五大島小学校)を提案※リンク(PDF:3.5MB) - 【2枚】騒音測定局の移設候補地の現地調査結果(東京航空局)※リンク(PDF:1.2MB)
※国交省にて3候補地点を調査して結果、移転先として東大島文化センターが最適と判断された(次図)。
※ピンク文字は筆者加筆 - 【4枚】決裁・供覧文書※リンク(PDF:1.1MB)
- 東京国際空港航空機騒音測定局移設工事実施設計(21年8月17日決裁)
- 令和3年度行政財産使用許可申請書の提出について(江東区東大島文化センター)(21年8月12日決裁)
- 東京国際空港航空機騒音測定局移設工事(21年9月16日決裁)
※開示文書の詳細に関心のある方は、「開示文書(一式)」(PDF:6.5MB)参照。
まとめ
- 国交省は毎月末、新飛行経路 定期運用報告として「航空機騒音の測定結果(速報値)」を公表している。
- 騒音測定局19か所のうち、江東区の東京都交通局大島総合庁舎に設置された騒音測定局のデータが21年6月以降、測定不良状態になっている。同測定局は、北風時に荒川沿いを北上する離陸ルートの航空機騒音を把握するために国交省が設置した2か所のうちの1か所(もう1か所は江戸川区立第五葛西小学校)。たった2か所しかない測定局の1か所が機能不全状態なのはとってもマズイ。
- 国交省東京航空局は9月27日、入札公告「東京国際空港航空機騒音測定局移設工事」を出した。ところが、応札者がいなかったのか10月29日、同一件名で再度入札公告を出した。再公告により、移設工事完了期日は1か月延伸し、22年1月31日となった。その結果、8か月分のデータが欠測する事態となっている。
- 騒音測定局移設に係る経緯と意思決定プロセスを開示請求したところ、江東区から3候補地の提案があり、最終的には国交省が現調のうえ東大島文化センターが最適と判断したことが分かる。
あわせて読みたい