情報開示請求手続きによって、北区がHPで公表している「航空機騒音実態調査結果」の元データ(日報116枚)を入手し、羽田新ルート運用開始前後の航空機騒音の違いを可視化分析してみた。
北区公表の「航空機騒音実態調査結果」の問題点
北区は、羽田新ルート運用開始前後の区内の航空機騒音を把握するためとして、区内3か所(豊島区民センター、袋小学校、西ケ原小学校)で測定したデータの一部をHPで公開している(航空機騒音実態調査結果)。
データの一部が公開されているだけで、しかも分析・評価もされていないので、多くの区民は理解のしようがないのではないか(次図)。
問題は3つ。
一つ目は、3か所の測定地点のうち2か所は羽田新ルートから遠く離れていること(次図)。
袋小学校だけがC滑走路到着ルートのほぼ直下。西ケ原小学校は同ルートからの側方距離2.4km、豊島区民センターは同4.7km。
(国交省資料に筆者追記)
二つ目は、最大騒音レベルが日単位ではなく、計測期間ごと(1週間)の最大値であること(あまりにも雑である)。
三つ目は、決定的にダメな点。
羽田新ルートの運用開始後のデータとして、夏季・冬季それぞれ1週間の騒音測定がされているのだが、冬季(20年12月28日~21年1月3日)は南風運用がゼロ。つまり到着ルートを飛行した時の騒音データが捕捉できていないのである(次表)。
「新飛行経路の飛行に伴う騒音モニタリングの結果|東京都環境局」より作成
情報開示請求で日報116枚を入手
北区がHPで公表している「航空機騒音実態調査結果」の元データ(日報)を入手すべく、「お問い合わせフォーム」で生活環境部環境課に照会したところ、なんだかんだのやり取りがあって、情報公開請求することになった。
「東京共同電子申請・届出サービス」を介して申請し、郵送されてきた「区政情報公開決定通知書」に従って、定額小為替1,740円(白黒コピー116枚@10+郵送料580円)を北区に郵送。
最初の問合せから約3週間でゲットした文書(紙)には小さい文字がびっしり(次図)。スキャナーでPDF化するにしても、OCRは難しそうだ。北区には是非、紙ではなく電子データ(CD-R)で送ってほしかった。この点、国交省はCD-Rで送ってくれるので、北区よりは進んでいる。
(↓ 紙のスキャン、1枚例示)
情報開示請求手続きによって、北区から入手した日報(合計116枚)をスキャンしたデータは、次の通り。
- 20年度データ
豊島区民センター(PDF:1.3MB)
袋小学校(PDF:1.9MB)
西ケ原小学校(PDF:1.7MB) - 18年度データ
豊島区民センター(PDF:1.9MB)
袋小学校(PDF:2.5MB)
西ケ原小学校(PDF:2.7MB)
騒音測定データの可視化
羽田新ルートの運用開始後の騒音(夏季・3地点)
郵送されてきたデータのうち、羽田新ルート運用後の夏季1週間(8月14日~20日)の到着ルートの騒音レベルの最大値を可視化したのが次図(冬季は上述のとおり北風時運用のみだったので可視化の対象外)。
C滑走路到着ルートのほぼ直下に位置する袋小学校の騒音レベルの最大値が65.8~73.7dBであるのに対して、同ルートから離れた西ケ原小学校(側方距離2.4km)は60dB前後、豊島区民センター(同4.7km)は60dBを下回っているだけでなく、暗騒音+10dBルール(注1)によって7日間のうち2日間は航空機騒音が捕捉されていない。
注1:暗騒音+10dBルール
- 測定対象とする単発騒音は、最大騒音レベルが暗騒音レベルから 10 dB以上大きいものとする(環境省「航空機騒音測定・評価マニュアル」20年3月 P14)
羽田新ルート運用開始前後の騒音比較(夏季・袋小学校)
羽田新ルート運用開始前後の航空機騒音の発生状況を比較すべく、C滑走路到着ルートのほぼ直下に位置する袋小学校の騒音レベルの最大値の変化を可視化したのが次図。
羽田新ルート運用開始前の18年データは、C滑走路を出発した航空機騒音が対象で、概ね60~65dBの範囲。一方、羽田新ルート運用開始後の20年データは、C滑走路到着ルートの航空機騒音が対象で、騒音レベルの最大値は65.8~73.7dBの範囲。
ザックリ言えば、羽田新ルート運用開始後は騒音レベルが約10dB増加している。増加の原因は飛行高度の違い。
北区には、袋小学校(C滑走路到着ルートのほぼ直下)での継続的な騒音測定が求められる。
まとめ
- 情報開示請求手続きによって、北区がHPで公表している「航空機騒音実態調査結果」の元データ(日報116枚)を入手し、羽田新ルート運用開始前後の航空機騒音の違いを可視化分析してみた。
- 羽田新ルート運用開始前の18年データは、C滑走路を出発した航空機騒音が対象で、騒音レベルの最大値は概ね60~65dBの範囲。一方、羽田新ルート運用開始後の20年データは、C滑走路到着ルートの航空機騒音が対象で、65.8~73.7dBの範囲(次図、再掲)。
- ザックリ言えば、羽田新ルート運用開始後は騒音レベルが約10dB増加している。増加の原因は飛行高度の違い。
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