都議会の「21年第3回定例会」本会議の代表質問(10月5日)で、羽田新ルートに関して、2名の質疑応答があった。
録画映像をもとに、全文テキスト化(約1700文字)しておいた。
和泉なおみ議員(共産)
和泉なおみ議員(共産党、都議3期、宮城県立第三女子高卒、59歳)
和泉:“固定化回避”はまさに名ばかりです
国際競争力や「稼ぐ東京」の名で、都と国が進める3つの大問題の是正も重要です。まず、都心上空を大型旅客機が超低空飛行する羽田新ルート問題です。
都議選前にNHKが行ったアンケートでは、当選した都議127人のうち過半数の68人が「見直すべき」と回答しています。「見直す必要はない」30人、「回答しない」27人を大きく上回りました。
知事は都議選で示された羽田新ルート見直しを求める都民の意思をどう受け止めていますか。
国は羽田新ルートの固定化回避検討会を設置し、最近2つの新たな飛行方式を選定しました。その中身は重大です。現在の羽田新ルートは引き続き使用されます。知事はそのことを認識していますか。
しかも、それに加えて新たな2つの都心上空の飛行ルートが増設されるのです。そのことを認識していますか。
我が党が批判してきた通り、“固定化回避”はまさに名ばかりです。羽田新ルートは廃止するしかないことを厳しく申し上げておきます。
小池百合子 都知事(2期、カイロ大卒、69歳)
知事:丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります
羽田空港の新飛行経路についてであります。
国が決定した新飛行経路について、都民の皆様などから着実な実施やルートの再考など、様々なご意見があることは承知をいたしております。
将来にわたって、東京が国際競争力を持って持続的な発展を続けていくためには、国内外に豊富なネットワークを有する羽田空港の機能強化を図ることは不可欠であります。都としては、引き続き国に対し、都民の理解がさらに深まるよう、丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります。
都技監:飛行ルート案、さらに検討していくこととしております
東京都技監(千葉大院卒、86年入都 )
次に、羽田空港の新たな飛行方式の選定についてでございます。
国におきましては、地元区の意見等を踏まえ、新経路の固定化回避に係る技術的方策につきまして、現在の滑走路の使い方を前提として検討が進められております。
先般開催された検討会では、騒音軽減や技術的な観点から、好天時におきまして運用可能な飛行方式が2案選定され、この2案につきまして、引き続き安全性評価、基準策定などの検証を実施していくことが公表されております。
都といたしましては、引き続き国に対し、都民の理解が深まるよう、丁寧な情報提供、騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります。
次に、新飛行経路についての最後のご質問についてでございます。先ほど申し上げたとおり、先般開催された国の検討会では、騒音軽減や技術的な観点から、飛行方式が2案に絞り込まれていることが公表されており、今後国は具体的な飛行ルート案につきまして、安全性の評価や運航ルールの策定などを行った上で、さらに検討していくこととしております。
西沢けいた議員(立憲)
西沢けいた議員(立憲民主党、4期、42歳、中央大学法学部卒、元長妻議員秘書)
西沢:羽田空港の都心ルートの見直しを国に強く求めるべき
次に、羽田空港新ルートの見直しについて伺います。
羽田空港で昨年3月から運用されている新ルートは、ルート直下の住民に騒音被害や落下物への懸念などをもたらし、地元自治体、区議会からも、固定化回避、ルート見直しを求める要望・意見書が多数提出されています。
こうした状況を踏まえ、国は新ルートの固定化回避検討会を設けていますが、現在検討中の方策では状況は改善しないのではないかという懸念も地元には根強くあります。私は、東京都の目指す安全で快適な都市づくりのためにも、羽田空港の都心ルートの見直しを国に強く求めるべきと考えますが、知事の見解を伺います。
小池百合子 都知事
知事:丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります
羽田空港の新飛行経路についてであります。
将来に渡りまして、東京が国際競争力を持って持続的な発展を続けていくためには、国内外に豊富なネットワークを有する羽田空港の機能強化を図ることが不可欠であります。
新飛行経路につきましては、国において地元区の意見等を踏まえ、新経路の固定化回避に係る技術的方策について、現在の滑走路の使い方を前提として検討が進められております。
先般開催されました検討会の結果といたしまして、騒音軽減や技術的な観点から、飛行方式が2案に絞り込まれたことが公表されております。都といたしまして、引き続き国に対し、都民の理解がさらに深まるよう、丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります。
雑感
都知事:耳タコ表現で受け流す
両議員とも国交省の固定化回避検討会を取り上げているが、突っ込み不足。一応質問してみました感が拭えない。
小池都知事も都技監も、耳タコ表現で受け流す(都としては、引き続き国に対し、都民の理解がさらに深まるよう、丁寧な情報提供や騒音・安全対策の着実な実施を求めてまいります)。
そもそも、両議員(というか、代表質問だから両党)とも羽田新ルート問題の扱いが低くないだろうか。
共産:質問15項目のうちの11番目という扱い
共産党は2021年都議選の重点公約の4番目「大企業のもうけ優先の政策を転換し、持続可能な東京に」のなかで2番目に「羽田新ルート・外環道・カジノ」を掲げていた(4番目が温室効果ガス排出ゼロ、5番目が首都直下地震)。ジェンダー平等は重点公約の5番目。
それなのに今回の定例会の代表質問では、次のように11番目に追いやられている。
- 都立・公社病院の独立行政法人化問題について
- 新型コロナ対策について
- 事業者への補償と支援について
- 文化・芸術への支援について
- 都民の暮らしを守る支援について
- 教育について
- 保育園について
- ジェンダー平等について
- 気候危機打開について
- 防災対策について
- 羽田新ルートについて
- 外環道工事について
- カジノ誘致について
- 米軍基地について
- オリ・パラ大会について
とはいうものの、共産党は過去の定例会本会議で羽田新ルート問題を取り上げている回数が他会派を圧倒しているので(次表)、この点については評価したい。
立憲:質問8項目のうちの7番目という扱い
立憲民主党もしかり。
立憲民主党は2021都議選の公約で「ダイバーシティーの推進」は8番目。羽田新ルートは7番目「まちづくりの推進と地域産業の支援」のなかで掲げられていた。それなのに今回の定例会の代表質問では、羽田新ルートは「多様性の尊重について」に劣後する扱いとなっている。
- 知事の基本姿勢について
- 新型コロナウイルス感染症対策について
- オリンピック・パラリンピック大会について
- 子ども施策について
- 多様性の尊重について
- 環境施策について
- 羽田新ルートの見直しについて
- 都立・公社病院の地方独立行政法人化について
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