「再公告」で入札資格を緩和し、1社が高い落札率で受注している航空局の案件を調べてみたら……。
※羽田新ルートとは直接関係ないが、備忘録としてまとめておく。
入札資格要件、1件だけ緩和されていた
羽田新ルートに関連して、国交省航空局の入札情報をチェックしていて「再公告」が多いことに気が付いた。入札の参加資格要件が絡んだ不可思議な状況については先日このブログで紹介した。
再公告8件を調べた結果、7件は元の公告より参加資格要件が上級に拡大されていたが、1件だけは下級に緩和されていたのである。
公告したものの応札者がいなかったので、上級業者に助けを求めての再公告というのであればまだしも、下級業者にまで声掛けをしたとなると問題があるのではないのか。
下級業者にまで声掛けをしたのは次の事案。
- 飛行検査機保守点検整備作業(令和3年度DHC8型機・CJ4型機飛行検査システム関連機器)
情報開示請求で明らかになったこと
じつはこの事案は、少なくとも16年度以降毎年、「飛行検査機保守点検整備作業(〇年度DHC8型機・CJ4型機飛行検査システム関連機器)」として、国交省航空局から一般競争入札にかけられている。
なぜ、再公告で下級業者に緩和しているのか。
とっても気になったので、国交省に行政文書開示請求し、18年度と19年度の「入札公告」の文書を入手。過去3か年(18~20年度)の入札状況を整理した結果を次表に示す。
毎回、公告(資格要件:A又はB等級)のあと、再公告(資格要件:A、B、C又はD等級)で、資格等級Cの岡山航空株式会社1社だけが応札し、高い落札率で受注していることが確認できた。
航空局の手続きに瑕疵はないのかもしれないが…
元の公告に記された入札資格参加要件は、次のように「A又はB等級」とされていた。
- (3)令和元・2・3年度国土交通省競争参加資格(全省庁統一資格)「役務の提供等」のA又はB等級に格付けされた競争参加資格を有する者であること(以下略)
ここで「令和元・2・3年度国土交通省競争参加資格(全省庁統一資格)」がポイントとなる。総務省が運用しているサイト「統一資格審査申請・調達情報検索サイト」に示されている「資格の種類別等級区分及の種類別等級区分及び予定価格の範囲」にヒントがあるのだ(次図)。
もとの公告の入札参加資格では「A又はB等級」が求められているので、予定価格の範囲「1500万円以上 3000万円未満」以上、付与点数「80点以上 90点未満」以上が必要になる。そのため資格等級がC(予定価格の範囲300万円以上 1500万円未満)である岡山航空は入札に参加することができない。
では、なぜ岡山航空は予定価格が5千万円を超える入札に参加することができたのか。
再公告によって、入札参加要件が「A、B、C又はD等級」に緩和されたことはもちろんなのだが、問題は、なぜ緩和できたのかということだ。入札手続きに瑕疵はないのか。
じつは、上図の「資格の種類別等級区分及 の種類別等級区分及び予定価格の範囲」には、次のよう注釈(抜け穴)があるのだ。
なお、統一資格に基づき実際に調達を行うに際しては、適正な競争性を確保するため、他の等級の競争参加が可能となるような弾力的な競争参加を認める場合がある。
適正な競争性を確保するために、他の等級の競争参加を可能ならしめた結果、毎年1社が高い落札率で受注しているという実態。競争原理が働いていないのではないだろうか……。
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