赤羽大臣肝いりの「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」第3回目が昨日(3月17日)開催された。
同日夕刻(17時22分)、国交省HP「羽田空港のこれから」に同会議の配布資料が公開されたことをご存じだろうか。
※投稿3月18日(追記3月31日)
国交省、今回もこっそり公開
赤羽大臣肝いりの「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」の第3回目が昨日(3月17日)開催された。同日夕刻(17時22分)、国交省HPに同検討会の配布資料が公開されたことをご存じだろうか。
普通の人はまずアクセスしない「羽田空港のこれから」のトップページの「お知らせ」欄に、3月15日の日付はそのままで、見出しの後ろに、カッコ書きで「 3/17 配布資料を追加掲載しました」と追記されているのである(次図、赤下線部分)。これでは羽田新ルートに関心のある人でも、気づくことは難しい。
この情報は国交省HPの新着情報にも掲載されず、航空局のページに掲載されているだけなので(同局の新着情報にも掲載されていない)、羽田新ルートに関心の高い人でも「第3回 羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」のページ(次図)にアクセスすることは難しいだろう。
技術的選択肢となり得る6種類の飛行方式
前置きが長くなった。
3月17日に公開された資料(PDF形式)は次の6つ。
※議事概要は、まだ公開されていない(3月17日現在)。
- 議事次第
- 【資料1】技術的選択肢(飛行方式)のメリット・デメリット整理表
- 【資料2】各飛行方式のメリット・デメリット及び課題
- 【資料3】海外空港調査の結果
- 【資料4】海外における騒音軽減方策の代表例(騒音軽減のための管制運用等)
- 【資料5】令和2年度における検討の総括と今後の検討について
かなり専門的な内容なので、門外漢には分かりにくい。まだ議事概要が公開されていないので、配布資料から分かることを中心に一般の方にも理解できるよう、できるだけ分かりやすく説明しよう。
キーになるのは、資料1(技術的選択肢(飛行方式)のメリット・デメリット整理表)。極端に言えば、資料2から4は資料1を補足している資料だ。
資料1には、羽田新ルートの固定化回避に向けた技術的な選択肢として、12種類の飛行方式が一枚の表にまとめられている。コンパクトにまとめられているが、専門用語が多いので門外漢が理解するのは難しい、というか難しい内容を難しく伝えて煙に巻こうとしているのではないのかと勘繰りたくなるほどだ。
極めて簡単にいうと、12種類の飛行方式のうち、固定化回避の実現に向けた技術的選択肢となり得る6種類の飛行方式が選定されたということなのだ。選定した際の判定基準は、安全性と騒音軽減効果の2点。資料1には次のように注記されている。
という2つの観点(赤囲みの項目に対応)を中心に、各飛行方式が固定化回避の実現に向けた技術的選択肢となり得るか判定を実施。
- ①羽田空港(多くの外国航空会社が就航する混雑空港)において多数の航空機が安全に運用できるか(対応機材、運用可能な気象条件、安全性評価時に参考にする基準の有無)、
- ②騒音軽減効果があるか、
難しい内容を分かりやすく伝えるために、資料1に加筆してみた(次図)。
ピンク色の線で囲んだ部分は、固定化回避の実現に向けた技術的選択肢となり得ると判定された6種類の飛行方式だ。
(資料1に筆者が加筆)
6種類の飛行方式に対して、資料2(各飛行方式のメリット・デメリット及び課題)に記された「課題」を当てはめると、「⑨RNP + WP(JFK空港)」だけが短期的な課題扱いとされている。
⑨RNP進入方式+WPガイダンス付き
【課題】
- 国内基準の策定・国際基準との調整(飛行経路の設定に必要な基準、A・C滑走路への同時進入時の運用ルール)(短期)、
- 航空機の運航に関 する基準の整理と飛行方法に関する運航者への確認(短期)
6種類の飛行方式のうち、3種類(⑥LPV ⑦RNP to xLS ⑧GLS)は悪天時の運用。残りの3種類は好天時の運用となっている。好天時の運用3種類の飛行方式は、既に米国の3つの国際空港(ロサンゼルス空港、ニューヨーク・JFK空港、ラガーディア空港)で運用実績があるとされている。
6種類の飛行方式を羽田新ルートとして適用するとどうなるのか?
第2回技術的方策検討会(20年12月23日開催)の公表資料をもとに筆者が12月28日にブログに投稿した記事「現状の羽田新ルートに技術的選択肢を適用してみた」をご覧いただきたい。以下、同記事を抜粋。
3つの国際空港で運用されている曲線経路につき、縮尺を合わせて、現在の羽田新ルートに機械的に重ねてみた(次図)。
「ニューヨーク・JFK空港」と「ラガーディア空港」で運用されているような曲線経路であれば、都心低空飛行を避けることは不可能ではないということになる。
※下図の米国3ルートは、あくまでも曲線経路の可能性を示したのであって、米国3ルートのいずれかが実現するという意味ではないことに要留意。
今後の検討の方向性
資料5(令和2年度における検討の総括と今後の検討について)によれば、6種類の飛行方式をさらに絞り込むとしている。
- 第3回検討会においてメリット・デメリットを整理のうえ絞り込んだ技術的選択肢(飛行方式)について、短期・中期・長期の課題への対応策の検討を行い、更なる絞り込みを行う。
- 絞り込んだ飛行方式について、基準策定(飛行経路設定に必要な基準、 A・C滑走路への同時進入時の運用ルール)、安全性の評価(A・C滑走路への進入機同士の安全間隔確保等)、運航者との調整、騒音軽減効果の確認等、羽田空港への導入を見据えた検討・検証を行う。
- 出発・到着ともに、騒音軽減等に資する管制運用等を含めた総合的な方策を検討する。
上述したように、6種類の飛行方式のうち「⑨RNP + WP」方式以外はすべて、中・長期的課題があるので、すぐに実現できるという話ではない。
逆に言えば、ニューヨーク・JFK空港で運用されている「⑨RNP + WP」方式の課題は短期的なので、早い時期に実現できるということになるのか。
そうだとしても、国際基準への適合手続き、パイロットや管制官の訓練のほか、関係自治体や住民への説明会の実施など、いまから始めても数年はかかりそうなことは素人にも分かる。
【追記】「議事概要」について
※3月31日追記
議事概要(A4判3枚)(PDF:289KB)が3月31日11時、公開された。
一言で言えば、マニアックな技術論が交わされているという印象である。
一般市民にとって重要な情報が含まれている部分があるとすれば、資料5(令和2年度における検討の総括と今後の検討について)に対する次の2つの意見くらいではないか。
- 新飛行経路による現在の滑走路処理能力を維持すること、すなわち A・C 滑走路への同時進入を行うことを前提として、新飛行経路の固定化回避に向けた検討を進めるものと理解している。
- (略)6つの飛行方式から更なる絞り込みを行っていく過程では、羽田空港という世界最大の人口密集地域にある空港として課題を抱えている中で、様々なタイムスケールも考慮した上で、組み合わせや、オリジナリティを必要に応じて加えていくことも想定しながら検討を深化できるとよい。
「A・C 滑走路への同時進入を行うことを前提」となると、少なくとも品川区の上空を避けることは不可能に近いのではないか。
また、「検討を深化できるとよい」とは、さらにマニアックな議論に花を咲かせたいとうことではないのか。
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