「実機飛行確認」という何とも不思議な用語を役人が編み出して、搭乗者に試験飛行便であることの事前承諾を取らずに都心上空を低空で飛行するという、新ルートの試験飛行が開始されてから明日(1月30日)で1年。
これまでの1年を振り返る。
赤羽大臣の苦しいコメント
南風時に都心を通過する到着ルートの試験は、2月2日に始まり同月12日に終了(北風時に荒川沿いを北上する出発ルートの試験は1月30日から2月5日)。
※詳しくは「羽田新ルート|実機飛行確認の結果(まとめ)」参照。
飛行試験開始後まもなく、赤羽国交大臣は「現段階においては、概ね想定した騒音レベルの範囲内」とコメント(2月4日定例記者会見)。
さらに飛行試験が終了し、3月29日からの本格運用に向けて赤羽大臣は「地元の皆さまの理解が深まるように更に努めてまいりたい」とコメント(2月21日定例記者会見)。
さあこれから羽田新ルートの本格運用が始まるというタイミングで新型コロナウイルスの感染が拡大し、羽田新ルートの運用を強行すべく赤羽大臣の苦しいコメントが始まったのである。
- 3月13日:運用を先延ばしにしていいことはない
- 3月24日:減便、ゆっくりデータを収集できる期間
- 3月27日:フル運用に向けた助走期間、いい期間
新型コロナの影響で東京オリ・パラ中止や訪日外国人激減したことから、羽田新ルート導入の必要性3点(国際競争力強化、訪日外国人の増加、日本全国の地域活性化)の前提条件が崩れたことから急浮上してきたのが「首都圏全体での騒音負担の共有論」。
4月6日の衆議院「決算行政監視委員会第四分科会」で航空局長が言い出した。
羽田空港の騒音は、これまで主に千葉県側で負担をいただいておりましたけれども、新飛行経路の運用によりまして、首都圏全体での騒音共有が図られることになります。
その後、赤羽国交大臣は、機会あるごとにこの「騒音負担共有論」をPRするようになった。
※詳しくは、「羽田新ルート|「騒音負担共有論」は妥当なのか?」参照。
技術検討会は反対派に対するガス抜き!?
羽田新ルート周辺住民の反対運動が激しくなり、3区(品川・目黒・港)の公明党の都議、区議からの緊急要望書を受けて尻に火が付いた赤羽国交大臣は6月16日、技術的な課題を検討する有識者会議の開催を表明(結論ありき!? 技術検討有識者会議)。
12月23日に開催された2回目の「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」では、委員の認識として、解決に向けての時間スケールが数年以内ではない様子が垣間見える(第2回技術的方策検討会の「議事概要」をひも解く)。
なんだ、技術的方策検討会がやろうとしていることは、反対派に対するガス抜きだったのか、という疑念。
住民投票条例は自公の反対でボツ。訴訟は…
その間、品川区議会では、羽田空港の新飛行ルートの賛否を問うための住民投票条例案が自公の反対でボツになり(品川区議会、住民投票条例案に反対した自公議員の主張)、南風が吹かない冬場は都心低空飛行がほとんどなく(次図)、マスメディアはコロナ報道一色。
来週2月5日(金)は、羽田新ルート設定の取り消し訴訟の第2回口頭弁論が開かれ、国による主張が展開されることになっている(羽田新ルート設定の取り消し訴訟、国のスタンスは門前払い)。
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