今年もまた花粉症の季節がやってくる。
先日このブログに、「花粉症の人のための、初診からオンライン診療が可能な病院・クリニック一覧(23区まとめ)」を投稿した。
本日は、実際に筆者がオンライン診療を受けた内容をご紹介。あと、初診のオンライン診療の恒久化の検討状況についても。
Kクリニック選定経緯
どのようにしてオンライン診療を受けるクリニックを選定すればいいのか?
上述の記事に記した病院・クリニック一覧から選べば簡単なのだが、筆者がオンライン診療を受けたのは、同記事を作成する前だった。そこで実際には、グーグルで「花粉症」「オンライン診療」「初診」でヒットした上位のサイトの中から選んだ。
筆者が選んだのはKクリニック。さすがに上位に表示されるだけあって、オンライン診療のページが充実していて、安心して診察を受けることができた。
あえて気になった点を掲げるとすれば、申し込みから診療、支払いまですべてをネット上で完結させるために、保険証のコピーやクレジットカード情報(キュリティコードを含む)といった個人情報を提出しなければならないこと。
ちなみに、Kクリニックは、厚労省が公開しているオンライン診療の対応機関リストでは、対応診療科は「内科/循環器内科/内分泌・代謝内科」となっていて、「耳鼻咽喉科」の記載がない。なので冒頭で紹介した「花粉症の人のための、初診からオンライン診療が可能な病院・クリニック一覧(23区まとめ)」からは、その存在を知ることはできない。
実践!花粉症オンライン診療
筆者が利用したKクリニックが採用していたアプリは、CLINICS(クリニクス)。ただ、スマホでなくパソコンでもGoogle Chromeブラウザであれば、オンライン診療ができるということだったので、パソコンでオンライン診療を受診することにした。
主な流れを以下に示す。
1.アカウント作成、クレジットカードなど登録
- CLINICSにログインするためのアカウントを作成し、住所・氏名・生年月日・保険証のコピー(写真)、クレジットカードなどを登録する(次図)。
2.予約、WEB問診など
- 診療メニューから「【保険適用可】オンライン診療 内科初診」を選択し、希望日時を選択する。
※筆者は当日の12時~12時30分を選択した。
- 希望日時の入力を終えると、「他院にて継続処方されているお薬がある場合、検査結果やお薬手帳等その情報の写真のクリニクスへのアップロード」を求めるメールが飛んできたので、昨年薬局でもらった花粉症の薬の説明書のスキャン画像を診療開始前までにアップロードした。
- 「WEB問診」にアクセスし、診療開始時刻までに、診療に必要となる情報を入力しておく。
3.オンライン診療
- 診療開始5分前になったら、オンライン診療画面にアクセスし、「診療開始」ボタンを押して、先生がアクセスしてくるまで待機する(次図)。
※筆者の場合は、11時55分からスタンバイし、実際に受診したのは12時20分から3分程度。
待ち時間の25分それ自体は長いかもしれないが、普通のオフライン診療の行き帰りの時間や待ち時間の長さを考えれば、まったっく比較にならないであろう。しかもオンライン診療の場合は、25分間のスタンバイ時間にヤフーニュースを見ることもできれば、パソコン作業さえも可能なのだ。午前中に予約して、当日のお昼の休み時間帯に診療を済ますことができるなんて、驚異的ではないだろうか。
※詳細は、「はじめての方へ – CLINICSサポート」参照。
オンライン診療料金は従来料金の半分以下だった
オンライン診療が終わったら、後日処方箋が自宅に郵送されてくるので、処方箋の期限内(通常4日)に自宅最寄りの薬局に薬を取りに(買いに)行く。
筆者の場合は、診療の翌々日に処方箋が郵送されてきた。
さて、気になるのは金額である。
昨年受診した「従来診療」料金3,020円に対して、今回の「オンライン診療」料金1,410円。なんと半額以下なのである(次表)。
どこでこのような違いが出てくるのか?
診療明細書をひも解いてみた。
一言でいえば、従来診療はムダな検査と処置がされていたということである。
たしかに、オンライン診療の場合には、保険適用外として550円(処方箋の自宅郵送料金)が余分に掛かる(次表)。
従来診療では処方箋の自宅郵送は必要ないが、検査(喉頭ファイバースコーピー600点:1,800円)と処置(鼻噴霧など47点:141円)が掛かっている(次表)。
筆者は毎年、花粉症の症状がまったく表れていない時期にクリニックに出向くので、これらの検査と処置に掛かる1,941円は無駄なのである。というか、実際には筆者が負担しているのが3割なので、国が無駄に7割(4,529円)支払っていることになるのである。
初診のオンライン診療の恒久化は実現するか
オンライン診療はコロナ禍ゆえ、時限的・特例的な取り扱いとして20年4月13日から、初診患者に対しても認められるようになったテンポラルな制度。恒久的な制度ではない。
ただ、田村厚労大臣は昨年10月9日の閣議後の記者会見で恒久化の可能性を示唆している。
(前略)最後でありますが、昨日、一部新聞等で報道もありますが、平井IT担当大臣、河野行革担当大臣といろいろと打合せ、申し合わせをさせていただきました。
確認した点は、1つはオンライン診療についてであります。安全性と信頼性をベースに、初診も含めオンライン診療は原則解禁することでそれぞれが合意と言いますか、意識合わせをしたということです。安全性と信頼性をベースに、ということです。
そして、オンライン診療は、電話ではなく映像があることを原則とするということです。電話だとなかなか症状が分からないということもありますので、そういう意味でこのようなことを改めて確認いたしました。(以下略)
詳細については、「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で詰めていくとされている。
ということで、直近で開催された検討会(第13回、20年12月21日開催)の資料をひも解くと、事務方が用意した「資料3 今後の検討事項について」には、初診オンライン診療を実施するための安全に関するルールのひとつとして以下を掲げていることが確認できる。
- 必要な対面診療の確保
(必要時に速やかに対面診療へ移行できる仕組み、オンライン診療と対面診療との組み合わせで実施する体制の確保)- 事前トリアージ
(オンライン診療に不適な症状を事前に除外し、対面診療へ誘導する仕組み)
「必要時に速やかに対面診療へ移行できる」ことがオンライン診療の前提条件になってしまうと、現状では可能な、たとえば北海道の住民が都内のクリニックのオンライン診療を受けるようなことができなくなる。
現状のような地域的な制約がない花粉症のオンライン診療が恒久制度化されると、サービス・価格競争が起こり、オンラインに力を注がないクリニックの経営に影響を及ぼすことになるのかもしれない。
既得権益の打破とデジタル化を掲げる菅政権は、医師会の反対の声を押さえ、利用者ニーズにどこまで応えることができるのか。今後の検討スケジュール(案)として、オンライン診療の指針改定時期は「秋目途」とされている(次図)。衆院選挙あとに期限が設定されているところがなんとも微妙……。
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