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荒川北上ルート、都の騒音測定データは適切か【追記あり】

最近気になっているのは、北風時に羽田空港を出発して荒川に沿って北上するルートの騒音データ。
東京都の騒音計測地点は、首都高7号線が隣接しているのだが……。

※投稿11月29日(追記12月2日


もくじ

荒川北上ルート、都の騒音測定データは適切か

東京都は羽田新ルート周辺の騒音測定局(5か所)で測定した騒音モニタリング結果(速報値)をタイムリーに公表している。

筆者は東京都が公表したデータを元に随時可視化。

※詳しくは、「羽田新ルート|東京都の騒音測定データを可視化【随時更新】 」参照。

 

最近気になっているのは、北風時に羽田空港を出発して荒川に沿って北上するルート(運用時間帯は、午前7時~11時半と午後15~19時)の騒音データだ(次図)。

最大騒音レベル(北風時)都測定データ

  • 1 本モニタリング結果は速報値であり、今後修正することがある。
  • 2 最大騒音レベル(単位:デシベル (dB))とは、(個々の) 航空機騒音の発生ごとに観測される騒音レベルの最大値で、本モニタリング結果は、騒音計の時間重み付け特性をS(Slow)に設定したものである。
  • (3 省略)
  • 4 騒音発生回数は個々の航空機騒音の最大騒音レベルが暗騒音より10 dB以上大きい航空機騒音の集計値である
  • (5~6省略)

(航空機騒音モニタリング結果「注」より)

何が気になっているのかと言うと、都の公表データの「注」にある「暗騒音より10dB以上大きい」のくだり。

環境省の「航空機騒音測定・評価マニュアル」に「10dB以上大きいものを測定対象とする」と記されているので、この点については問題ない。

単発騒音は、最大騒音レベルが暗騒音レベルから 10dB以上大きいものを測定対象とする。(P17)

問題は、計測地点についてである。同マニュアルには次のように記されている。

測定地点の周辺条件

  • 航空機の飛行経路の主要な部分が見渡せる地点を選定し、大きな建物等に近接する地点は避ける。また、工場・事業場、幹線道路、鉄道等が近接し、主要な航空機騒音の最大値が暗騒音より 10dB以上大きくない地点は避けるその際、暗騒音は時間帯、曜日、季節又はマイクロホンの設置場所等により変化することを十分に考慮する。(P11)

幹線道路に近接したような測定地点だと航空機騒音が暗騒音にかき消される場合ある。だから、航空機騒音の最大値に対して、暗騒音+10dB未満に収まるような静かな地点を選べというのである。

ところが、東京都が騒音を計測している地点である江戸川区立小松川第二中学校は、首都高7号線が隣接しているのである(次図)。

隣接している首都高7号線の影響

江戸川区「離陸機騒音実態調査結果」(2012年)をひも解く

首都高7号線が隣接した場所で航空機騒音の測定を行って正しい結果が得られるのか?

航空機事情に詳しいT氏のリツイートで、江戸川区が2012年6月に実施した「離陸機騒音実態調査結果」(PDF:1.2MB)がヒントになることが分かった。

「航空機騒音測定・評価マニュアル」に沿って適切に選定された2か所(上小岩小学校、篠崎第二中学校)で1週間(2012年6月21日~27日)、24時間連続で騒音測定した結果が詳細に記されているのだ。

上小岩小学校、篠崎第二中学校
江戸川区「離陸機騒音実態調査結果」P9より


上小岩よりも飛行高度が低い篠崎の測定データをもとに暗騒音の影響を可視化してみた。

「暗騒音+10dB以上」「暗騒音+10dB未満含む」の違いは、騒音発生回数に大きな違いが出てくる。また、最大騒音レベルの最小値には影響が大きいが(次図)、最大値への影響は一部にとどまる(次々図、ピンク部分)。

暗騒音が多少大きい場所で測定しても、最大騒音レベルの最大値は「暗騒音+10dB」を上回る場合が多いからなのであろう。

航空機騒音測定結果に係る暗騒音の影響 (江戸川区「篠崎」2012年)

航空機騒音測定結果に係る暗騒音の影響 (江戸川区「篠崎」2012年)

環境省の測定ルール「暗騒音+10dB」の影響

では、現在東京都が騒音測定している小松川第二中学校ではどうなるのか。

江戸川区が公表している「平成28年度調査結果」(PDF:40KB)の、小松川第二中学校のすぐ近くで測定した自動車騒音データをもとに推定してみる(次図、次表)。

騒音測定位置図


江戸川区が公表した「平成28年度調査結果」


昼間の騒音レベル65Leq(dB)。LAeq(等価騒音レベル)は、ある時間内で変動する騒音レベルのエネルギーに着目して時間平均値を算出したものだから(次図)、便宜的に暗騒音と見なすことにする。

等価騒音レベル(LAeq)とは
等価騒音レベル(LAeq)とは|横浜市

 

小松川第二中学校の昼間の暗騒音が65dB±3dBくらいだと想定して、飛行騒音測定ルールである「暗騒音+10dB」を適用すると、72dB未満の飛行騒音の発生頻度の一部はカウントされないことになる(次図、次々図は概念図)。

飛行騒音の発生頻度の一部はカウント
飛行騒音の発生頻度の一部はカウントされない

まとめ

都が計測している小松川第二中学校は幹線道路(首都高7号線)に近接しているので暗騒音が大きい。

計測結果には環境省「航空機騒音測定・評価マニュアル」の飛行騒音測定ルールである「暗騒音+10dB」が適用されているので、暗騒音が高いと騒音発生回数が少なめになる。また、日によっては最大騒音レベルの最大値に影響が出ている(小さくなっている)可能性がある

【追記】都の見解

※12月2日追記。

幹線道路(首都高7号線)に近接して設けられた騒音測定場所の妥当性について、都の担当者にメール照会してみた結果を以下に記す。

まずは、筆者の照会メール。

環境局環境改善部大気保全課ご担当者様

羽田新ルートに係る騒音モニタリングにつき都の測定場所の一つに「江戸川区立小松川第二中学校」が設定されています。


同中学校の北側には首都高7号線が隣接しています。

一方、「航空機騒音測定・評価マニュアル」の「4.2 測定地点の周辺条件」によれば、「工場・事業場、幹線道路、鉄道等が近接し、主要な航空機騒音の最大値が暗騒音より 10dB 以上大きくない地点は避ける」とされています。

なぜ、小松川第二中学校は測定地点として、幹線道路(首都高7号線)に近接(北側に隣接)しているにもかかわらず選ばれたのでしょうか?

2週間後に、環境局環境改善部大気保全課から次の回答が送られてきた。

東京都環境局では、羽田空港新飛行経路運用開始に伴い、騒音の発生状況を把握するため騒音モニタリングを実施しております。
モニタリング地点は、地元自治体の意見も参考にしながら国が示した飛行経路のほぼ直下を選定しております。

新ルートのほぼ直下を選定条件としたことは理解できるのだが、「地元自治体の意見も参考」の意味が曖昧だ。

地元自治体とは、この場合江戸川区の意見を参考に決めたということになるのだが、いったい江戸川区はどのような意見を言ったというのだろうか。

再質問してみた。

環境局環境改善部大気保全課ご担当者様

再度質問です。

 

「航空機騒音測定・評価マニュアル」により幹線道路近接地点は避けることが求められているのに、そのようにしなかった「地元自治体の意見」とは、具体的にどのような内容だったのでしょうか?

1週間後に、環境局環境改善部大気保全課から次の回答が送られてきた。

羽田空港新飛行経路の運用開始に伴い、まずは飛行経路直下における騒音の広がり等を把握するため、測定を行っており、測定地点の選定にあたっては、マニュアルを参考としていますが(原文ママ)、完全には準拠しておりません

この測定地点については、地元自治体に確認をした上で設定しています

なお、都は都内外の空港周辺(羽田空港、横田飛行場、厚木飛行場、立川飛行場、調布飛行場)について、別途、定期的に騒音測定を行っておりますが、この測定地点についてはマニュアルに基づき設定しているところです。

マニュアルに完全に準拠していないから、質問しているのに、全く回答になっていない。「地元自治体に確認をした上で」って、自治体(江戸川区)にどのような意見を聞いたのかを照会しているのに……。

誤字(朱書き)が入っているくらいだから、課長のチェックが入っているのかどうかも疑わしい回答である。

 

これでは某国会で流行っている「はぐらかし答弁」にもなっていないではないか。

再々質問をするは時間のムダなので、ここは区議さん、都議さんの出番に期待したい。

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