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質問主意書(エレベーター事故の再発防止)長妻衆議院議員

第202回国会(20年9月16日~9月18日)の衆議院の質問主意書31件のなかに、28番目としてエレベーター事故の再発防止に係る次の質問主意書が埋もれている。

長妻昭 衆議院議員が9月16日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成。

※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

長妻昭 衆議院議員
長妻昭 衆議院議員(7期、立憲民主党、慶応法卒、60歳)

平成18年6月に港区で発生したエレベーター事故により、当時16歳の被害者の尊い命が失われた。その後も、国交省が把握しているだけで、平成22年12月から令和2年4月までの間に全国で150件の事故が発生している。エレベーター事故の再発を防止する観点から質問する。

問1:戸開走行保護装置、すべてのエレベーターに義務付けるべき

平成20年9月19日の建築基準法施行令の改正・関連告示の整備によって、平成21年9月28日以降に設置されるエレベーターに戸開走行保護装置を設置することが義務づけられた。

しかし、それ以前に設置されたエレベーターについては、戸開走行保護装置は義務づけられなかった


戸開走行保護装置が義務付けられていないエレベーターについて、戸開走行保護装置の設置はどのくらい進んでいるか。

また、戸開走行保護装置の設置をすべてのエレベーターについて義務付けるべきであると思うが、政府の見解はいかがか。

答1:設置の必要性、所有者・管理者に対し啓発を行うよう関係団体等へ要請

平成30年度に建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項の規定に基づき定期検査の結果の報告がなされたエレベーター70万7,170台中、戸開走行保護装置が設置されている台数は16万2,808台であり、このうち当該装置の設置が義務付けられていないエレベーターは3万5,276台であった。


戸開走行保護装置については、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)を改正し、平成21年9月28日に、同日以降に新たに設置されるエレベーターへの設置を義務付けたほか、同日より前に設置されたエレベーターについても、設置の必要性について、あらゆる機会を捉えて所有者及び管理者に対し啓発を行うよう関係団体等へ要請するとともに、防災・安全交付金の交付等による設置の促進を図ってきたところであり、引き続きこのような取組を徹底していくことが重要と考えている。

問2:すべてのエレベーター、保守点検マニュアル提供義務づけるべき

平成20年11月28日の建築基準法施行規則改正によって、エレベーターの確認申請の際の添付図書として保守点検マニュアルを添付することが義務づけられた

しかし、管理者や保守管理業者に保守点検マニュアルが必ず渡されているかどうかについて、国交省や特定行政庁も把握しておらず、また、古いエレベーターは、この義務づけの対象外となっている。


そこで、すべてのエレベーターについて、保守点検マニュアル及び保守点検に必要な最新の情報を所有者、管理者及び保守管理業者に提供することを義務づけるとともに、所有者、管理者及び保守管理業者が希望した場合、製造業者から、保守点検マニュアル及び保守点検に必要な最新の情報を容易に入手できるようにすることを義務づけるべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。


また、製造業者に対して、保守点検マニュアルを改定する都度、それを所有者・管理者に渡すだけでなく、保守点検する保守管理業者に対し、年1回以上、講習会などを通じて周知する必要があると考えるが、政府の見解はいかがか。

答2:「昇降機の適切な維持管理に関する指針」、周知を図っているところ

エレベーターを適切に維持管理する責務は一義的には所有者が有していることから、製造業者から入手した保守点検に必要な情報は、所有者から保守点検業者に提供されるものと考えている。

このため、国土交通省においては、建築基準法施行規則(昭和25年建設省令第40号)を改正し、平成21年9月28日に、同日以降に新たに設置されるエレベーターの所有者が、建築確認の申請手続を通してエレベーターの保守点検の内容に係る情報を入手することとなるようにしたところである。

また、平成28年に同省において作成した「昇降機の適切な維持管理に関する指針」において、全てのエレベーターを対象として、所有者及び製造業者が、エレベーターの維持管理に必要な情報の提供等の責任を製造業者が負うことを売買契約等において明確にすることを求めるとともに、所有者又は管理者(以下「所有者等」という。)が、製造業者の作成した保守点検に関する文書等を保守点検業者に閲覧させ、又は貸与することを求めており、その上でこれらの周知を図っているところである。


さらに、同年に製造業者団体宛てに発出した通知において、全てのエレベーターを対象として、製造業者が、所有者等又は保守点検業者に対し、エレベーターの保守点検マニュアル等の技術情報を提供するとともに、所有者等又は保守点検業者が確実に最新の情報を入手可能となるよう対応することを要請しているところである。


引き続きこのような取組を徹底し、エレベーターの適切な維持管理の推進を図ることが重要と考えている。

問3:日常の保守点検報告書に検査結果表や写真の添付を義務化する必要がある

平成20年4月1日に施行された建築基準法施行規則の改正、関連する告示の整備により、年1回の定期検査・報告制度が見直され、検査項目・検査方法の細分化・具体化、検査結果の判断基準の定量化、特定行政庁への報告内容についての実測データ等を記載した検査結果表や写真の添付が義務化された

特にブレーキについては、ブレーキ各部の取付けの状況、パッド(ライニング)の残存厚みの状況、パッド(ライニング)とドラム及びディスクとの接触の状況、ブレーキ制動時のプランジャーの状況及びブレーキコイルの発熱の状況等について検査することとなった。


しかし、日常の保守管理については、実測データ等を記載した検査結果表や写真の添付を義務化していないため、異常がいつ発生したかを知ることができず、事故の予防に失敗し、事故原因の解明や責任の解明を困難にして、利用者の安全を脅かすとともに事故被害者・遺族を著しく苦しめている。


そこで、保守管理業者による日常の保守管理についても、検査項目、検査方法の細分化・具体化、検査結果の判断基準の定量化をするとともに、保守点検報告書にも実測データ等を記載した検査結果表や写真の添付を義務化する必要があると考えるが、政府の見解はいかがか。


また、保守点検報告書及びその添付資料については、エレベーターの所有者、管理者及び保守管理業者に3年間の保存を義務づける必要があると考えるが、政府の見解はいかがか。

答3:通知において、日常の保守点検における・・・求めており

国土交通省においては、建築基準法施行規則の改正及び関連する告示の整備により、平成20年4月1日から、定期検査・報告制度の検査項目及び検査方法の細分化・具体化並びに検査結果の判定基準の定量化を行うとともに、特定行政庁への報告に際し、実測データ等を記載した検査結果表や写真の添付を義務付けたところである。


また、建築基準法第8条の趣旨に鑑み、所有者等がエレベーターの適切な維持管理を行えるよう、二(答2)についてで述べた「昇降機の適切な維持管理に関する指針」、平成28年に同省において作成した「エレベーター保守・点検業務標準契約書」並びに同年に所有者団体及び製造業者団体宛てに発出した通知において、日常の保守点検における標準的な点検項目、点検内容等を示すとともに、保守点検に当たって実測データ、写真等をもって報告すること、作業報告書を3年以上保存すること等を求めており、その上でこれらの周知を図っているところである。


引き続きこのような取組を徹底し、エレベーターの適切な維持管理の推進を図ることが重要と考えている。

雑感

全国のエレベーターには戸開走行保護装置がどのくらい設置されているのか。

政府答弁(答1)の数値の羅列では全体像が分からない。

エレベーター70万7,170台中、戸開走行保護装置が設置されている台数は16万2,808台であり、このうち当該装置の設置が義務付けられていないエレベーターは3万5,276台

その数値の羅列を可視化したのが次図。なんと、約8割のエレベーターに戸開走行保護装置が設置されていないのである。

「戸開走行保護装置」の設置状況(18年度)

ただ、すべてのエレベーターに戸開走行保護装置の設置を義務付けるべきという長妻議員の主張には無理があるのではないか。特に、老朽化したマンションの管理組合ではカネのかかる工事の合意形成は困難であろう。

 

問2以降の質疑応答内容は、煩雑で分かりにくい。極めて簡単にいえば、次のようになる。

シティハイツ竹芝エレベーター事故(06年6月3日発生)を受けて関連法令が改正されて、エレベーターの保守点検に係る情報提供が義務化されたが、その対象は09年9月28日以降に新たに設置されるエレベーターが対象であって、それ以前の古いエレベーターは義務化の対象外なので、すべてのエレベーターを義務化すべきだというのが長妻衆議院議員の主張

それに対して、通知文書をもって全てのエレベーターをキチンと点検するように関係者に周知している(義務化をするつもりはない)というのが政府答弁

あわせて読みたい

長妻議員がこれまでに提出した羽田新ルート問題に係る質問主意書は、以下の4件。

※日付は、質問主意書提出日。

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