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羽田新ルート見直し検討、現在の進入ルートに曲線を持たせる!?

羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」では、「現在の滑走路の使い方を前提とした上で、騒音軽減等の観点から見直しが可能な方策がないかについて、技術的観点から検討を行う」とされている。
いったいどのように見直されようとしているのか……。


もくじ

国交省の考え:現在の滑走路の使い方が前提

5月28日に3区(品川・目黒・港)の公明党の都議、区議からの緊急要望書を受けて尻に火が付いた赤羽国交大臣は6月3日、衆議院「国土交通委員会」において、新経路の固定化を回避するための方策を早急に検討するための有識者・専門家検討会を立ち上げることを明言した

第1回目の「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」(以下、「技術検討会」)が6月30日に開催された。この技術検討会によって羽田新ルートによる都心低空飛行が回避されると考えている人がいるとすればよほどの能天気なのではないだろうか。

なぜならば、都心低空飛行を強行し続けようとする国交省の頑なな姿勢が漏れ聞こえてくるからだ。

以下に示す2件の国交省ヒアリングによって、「現在の滑走路の使い方や『1時間最大90回』の発着回数を変えないことを前提」として技術検討会が運営されることが明らかになっている。

山添議員&杉江氏による国交省ヒアリング(6月5日)

赤羽大臣が「新経路の固定化を回避するための方策を早急に検討するため、有識者及び専門家による検討会を今月中にも立ち上げる」(6月3日衆院国交委員会)と述べたことを受けて6月5日、航空評論家の杉江弘氏同席のもと、山添拓参議院議員(共産)による国交省ヒアリングが実施された。

その時のヒアリング結果を踏まえ、杉江氏は次のようにツイートしている。

再度強調したいが、今後の有識者委員会での議論は今のAとC滑走路へ北からの低空飛行とB滑走路を川崎側に離陸させる方式は大前提であると5日のヒヤリングで公言したのである。

では何のための有識者委員会になるのだろう?

※詳しくは、「羽田新ルート|山添拓参議院議員による国交省ヒアリング 」参照。

山添議員による国交省ヒアリング(7月1日)

羽田便減少 新ルート見直しこそ/国の検討会受け 山添拓参院議員が聞き取り


東京都心上空を低空飛行する羽田空港新ルートをめぐり、日本共産党の山添拓参院議員は1日、国土交通省が開いた「固定化回避の技術的方策」有識者検討会 (6月30日)について、同省から説明を聞きました。

同省は「固定化回避」の意味について「新経路をフルに使わないで減らせる方法はないか」という要望があるとして、航空管制や機器の技術の進展をふまえ、現在の滑走路の使い方や「1時間最大90回」の発着回数を変えないことを前提に、「騒音を軽減できる方策はないかなど技術的な観点から検討を行う」と説明。今年度中に方策のメリット・デメリットを整理したいと述べました。(以下略)

日本共産党東京都委員会 7月8日

現在の進入ルートに曲線を持たせる!?

7月8日にコッソリと公開された技術検討会の「議事概要」に新ルート見直しのヒントが記されている。

専門用語が多いので理解しにくいのだが、素人なりに超訳すると、現在の進入ルートに曲線を持たせることで柔軟なルート設定の可能性を見出そうとしているらしい(詳しくは後述)。

  • 管制空域の再編によるルート設定の柔軟性は今後の検討の大きなポイント。曲線の進入経路ができると、かなり柔軟なルートを設定できる。
  • (略)
  • 飛行方式において、ARの次の技術として、RFターン(曲線)とILS又はGLSの最終進入(直線)を組み合わせる技術について、現在ICAO(IFPP)で国際基準化の検討が進んでいる。今回の検討に含めても良いと考える。
  • RFレグの曲がったところを最終進入の最後に使うのは、安全上しっかりと検討が必要だが、一方で直線のファイナルに至るまでのRFレグに関しては、ICAOにおいて、もう少し広く使えるようにしようとの動きがある。

「議事概要」P1

 

現在の進入ルートに曲線を持たせることについては、初めて羽田に飛んでくる外国航空のパイロットでも迷わないようにすることや、ICAO(国際民間航空機関)に認めてもらうことなど、安全性を不安視する委員の思いが行間に滲み出ていないだろか。

  • 色々な可能性を考えつつも、羽田という国際空港で初めて飛んで来る外国エアラインも迷わないような標準的な運用も大事になると考える。そのため、ICAOで広く適用されている方法に基づくものがよいのではないか。RNAVビジュアルについても国によって様々な考えや解釈が出てきている。
  • 何をやっていくかを考える上で、国際的にも受け入れられるものをベースにしながら考えて、ICAOの会議で発信し国際標準にしていくなどしっかりとその理解が得られるような取組が重要
  • 仮にもし、新しい運用を開発するのであれば、航空局として様々なICAOの会議において発信して、それを国際標準にしていくぐらいの取り組みも重要と考える。

「議事概要」P2 

平田氏がかつて提案していた「非直線進入」方式

技術検討会では、柔軟なルート設定の可能性を見出そうとしている。

具体的にはどういうことなのか?

今回の技術検討会のメンバのひとりである平田輝満氏(茨城大学大学院 理工学研究科 都市システム工学領域 准教授)は、現在の羽田新ルートの運用の根拠となっている「中間取りまとめ」を策定した「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」の委員でもあった。

その平田氏は、「航空需要に対応した空港運用研究会」の主査としてとりまとめた「2016年度 航空需要に対応した空港運用研究会報告書」のなかで「非直線進入方式」を提案しているのである(次図)。

時間限定ケース(B)+経路分散(C)
「2016年度 航空需要に対応した空港運用研究会報告書」資料編「 第1、2、3回」(P57)

現在の滑走路22・23へのLDA進入と同様な方式だが滑走路の間隔はより狭い。図はRNP進入(RNP0.3)を想定して描いたイメージ図的なものであり、主要な物件高さは考慮してあるものの、全ての地上物件の高さを詳細に考慮したものではない。

進入経路の配置(進入経路延長線と滑走路延長線との交点の位置と交差角)、進入復行開始点の位置、最低降下高度など、今後検討が必要な事項は多い。(P57)

同報告書に掲載されている、15年11月27日に大阪キャッスルホテルで開催されたときのプレゼン時の議事録によれば、平田氏が現在の羽田新ルートの原案の提案者であったことが分かる。

その平田氏が今回検討しようとしている「曲線の進入経路」につき、すでに当時「新しい技術を使って、オフセットをいれること」として提案していたのだ。飛行経路を分散させることで、騒音を「なるべく皆でシェアする」という……。

先に紹介した都心上空案というのは、今まさに東京湾を通っている着陸経路を都心上空から入れる案ですが、環境基準を超えるので、1 日4 時間とか6 時間とか、都心上空を利用する時間を限定する容量拡大策を考えました。

どこまで騒音を減らして住居地域で環境基準が超えないようにできるかということで検討を進めると、羽田のピーク時間帯だけ都心上空を使わせてもらって、1 日6 時間とか4 時間だけだったら環境基準上は大丈夫だということで提言しました

これからの課題になりますが、今、国土交通省が考えられている都心上空の案も低高度の飛行になります。伊丹の着陸では普通ですが、それが都心上空にくるのはやはり刺激が強いです。都心上空を使う時もどうやって騒音を軽減できるかを考えないといけません。

当時提案したのが、新しい技術を使って、オフセットをいれることです。都心上空の経路を多少分散させ、特定の地域に騒音が集中しないようにします

通常、騒音というのは特定の地域に閉じ込めて集中して対策をするというのが普通ですが、意外と海外の空港では航空交通量が増えてくると、特定の地域に騒音を閉じ込めるという発想がもたなくなってきて、なるべく皆でシェアするという考え方にシフトしている例もあります。

午前と午後とに時間帯を分ければ、1 日4 時間を2 時間と2 時間にシェアできることになります。そうすると、千葉の騒音と東京の騒音が不公平だとずっと言われていたんですが、これをやるとコンター上では、WECPNL という昔の環境基準で同程度になります。飛行経路を分散させれば影響地域は広がるけれど、地域的な偏りは少なくなるということです。(P37)

平田氏が当時提案していた「非直線進入方式」を見直しルートとして現在の羽田新ルートに重ねたのが次図。

※「見直しルート」のうち平田氏資料で描かれていなかった部分(破線部分)は、筆者が適当に描いた。

見直しルート(推定)
実機飛行確認経路(新飛行経路)|国交省」に筆者がピンクを加筆

見直しルートの確度について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。

赤羽大臣が「騒音負担共有論」を言い出したホントの背景!?

赤羽大臣が最近盛んに言い始めた、千葉県に偏っていたこの騒音の負担を平準化するべきという騒音負担共有論

平田氏が15年11月27日に提案した「非直線進入方式」の存在を知ったことで、見えてくる景色が変わってこないか。赤羽大臣のいう騒音負担共有論は、「非直線進入方式」導入の伏線だったのではないか。

つまりこういうことだ。

技術検討会は、「現在の滑走路の使い方を前提とした上で、騒音軽減等の観点から見直しが可能な方策がないかについて、技術的観点から検討を行う」としている。

羽田新ルートの見直しのための有力案が「非直線進入方式」だとすれば、騒音をともに負担しなければならないのは、これまで羽田新ルートを横目に他人事としていた、ルート東側の住民ということになる。具体的には……別途記事化予定。

あと、ついでにもう1点。

東京新聞は6月17日、技術検討会が設置されたことを受けて、「結論が出るまで数年を要する見込み」と報じていた。

羽田新ルート、変更の可能性も 国交省、見直し検討会を設置

(前略)都心上空を通過し、騒音の苦情が相次いでいる新ルートが変更される可能性が出てきた。ただ、結論が出るまで数年を要する見込みという。

(東京新聞 6月17日)

その記事を最初に読んだときはピンとこなかったのだが、技術検討会が「非直線進入方式」を有力案としていると考えれば腑に落ちる。

同案が実際の運用に至るまでに、ICAO(国際民間航空機関)との調整、新たなルート下の住民説明会の実施、関係自治体との調整協議、パブコメ、公聴会、・・・と長い道のりが続くのである。

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