新型コロナの影響により国内線・国際線ともに大幅な減便が続いているなかで、羽田新ルートの運用が強行されている。4月に南風時の到着ルートが運用されたのは17日間。合計804機が都心上空を舞った。
804機を分析すると、新ルートを飛行する機数が大幅に減少するという量的変化だけでなく、小型機の割合が増えるという質的変化も生じていたことが分かったという話。
大幅な減便にも係わらず羽田新ルートを無理やり運用
新型コロナの影響でテレワークを余儀なくされている首都圏民は、窓を開け放して爽やかな風を感じたい。でも、羽田新ルート周辺の住民はそれができない。頭上から航空機騒音が降り注ぐからだ。
なかには国交省がこれまで説明してきたルートから外れて、東京湾をショートカットしておきながら、わざわざ都心上空を飛ぶ事例が多数観測されている(次図)。
東京湾上空を飛行しているのなら、わざわざ都心上空を経由せずに、なぜ従来の経路であるB滑走路やD滑走路に着陸しないのか。
国内線・国際線ともに大幅な減便が続いているなかで(次図)、無理やり羽田新ルートを運用していないだろうか。
「南風時の到着ルートはスカスカ」掲載グラフを最新データに更新
コロナの影響でスカスカ(量的変化)
3月29日から運用が開始された羽田新ルート。南風時に都心上空を通過して羽田に到着するルートが初めて運用されたのは4月3日。4月にこの南風時の到着ルートが運用されたのは17日間(うち、悪天時ルート運用1日)。合計804機が都心上空を舞った。
実機飛行確認(2月2日~2月12日)のときと、運用開始以降の通過機数を比べると、後者はコロナの影響で機数が大幅に減少していることが確認できる(次図)。
※実機飛行確認の機数はflightradar24で、運用開始後の機数は「羽田空港飛行コース」の航跡動画で調べた(以下、同じ)。
上図を1時間当たりの通過頻度で描き換えたのが次図。
国交省の計画では、A滑走路到着ルートは1時間当たり14回(4分17秒ごと)、C滑走路到着ルートは1時間当たり30回(2分ごと)の頻度で飛ぶことになっている。
ところが、新型コロナの影響による減便が著しい。4月下旬に入ると、A滑走路到着ルートでは1時間当たり5機程度、C滑走路到着ルートでは1時間当たり10機を下回っているのである。
※上図訂正(20年6月11日)
小型機の割合が増加(質的変化)
新ルートを飛行する機数が大幅に減少するという量的変化だけでなく、小型機の割合が増えるという質的変化も生じている。
機材区分別(小型・中型・大型機)の通過機数の推移を可視化したのが次図。
4月初旬に20機前後飛行していた中型機は、下旬に入ると10機を下回るようになった。逆に小型機のほうは漸増傾向が見られる。搭乗人数が少なすぎて、もやは大型・中型機では運用効率が悪いということなのだろうか。
国交省の説明資料によれば、羽田空港で使われている飛行機は、小型機48%、中型機25%、大型機26%となっている(次図)。
FAQ冊子v6.2_P58
一方、筆者が今回独自に調査した結果では、国交省データ(19年1月時点)と比べて大型機の割合が小さく、そのぶん小型機の割合が大きくなっていることが分かる(次図)。
なお、機材区分(小型・中型・大型機)は次表の通りとした。ボーイング737-800(小型機)がダントツで多い。
※機材区分は概ね、大型機(300席以上)、中型機(200~300席)、小型機(200席未満)とした。
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