実機よる試験飛行を体感した渋谷区民から、これまでの国の説明と違って、「経路がかなりズレる」という声があったらしい。
どのくらいズレていたのか調べてみた。
渋谷区民の声「経路がかなりズレる」
渋谷区議会「20年第1回定例会」本会議一般質問(2月19日)の中継録画を視聴していて、気になる情報をキャッチした。
治田学 議員(立憲民主党)が実機による試験飛行に関して、次のように発言したのである。
2月2日から始まった実機よる試験飛行についてお伺いいたします。(中略)
これまでの国の説明と違って飛行頻度が多い、飛行する高さが低い、経路がかなりズレる、こういった声があるようです。
※詳しくは、「羽田新ルート|渋谷区議会「20年第1回定例会」質疑応答」参照。
「経路がかなりズレる」というのはホントなのか?
国交省が公表している資料によれば、南風時に都心上空を通過する到着ルートは、次図のようにA・C滑走路の2ルートが計画されている。
「FAQ冊子v6.2」P43。ピンク文字は筆者加筆。
南風時到着ルートの航跡を可視化
国交省が2月13日に公表した資料によれば、南風時に都心上空を通過する到着ルートを飛行したのは全部で520便(内訳次表)。
「実機飛行確認の結果(まとめ)」より
羽田新ルートからどの程度ズレていたのか、試験飛行の初日(2月2日)の60便(※1)の航跡を地図に落としてみた(次図)。
- ※1:国交省の発表では、61便となっているが、筆者が確認できたのは60便。
新ルートよりもズレて飛行している便がいくつか確認できる(ピンク色部分)。
赤丸は、60便の航跡を示す。
(Flightradar24のデータをもとに、筆者作成)
60便のうち4便がズレていた!?
羽田新ルートからズレて飛行していたのは、60便のうち次の4便(6.7%)。いずれもJAL。うち2便は大型機。
- 三沢発 JL156(Embraer E190STD)(小型機)
- 女満別発 JL564(B767-346)(中型機)
- 大阪発 JL126(B777-289)(大型機)
- 那覇発 JL914(B777-246)(大型機)
練馬区より南側を拡大したのが次図。
JL914便とJL126便は、A滑走路ルート寄りに飛んだあと、本来の到着ルートであるC滑走路に戻るという異常な(?)航跡を描いている。
「飛行する高さが低い」という渋谷区民の声もあったようだが、この点の分析結果については、「実機飛行確認、飛行高度は低かったのか」参照。
【追記】4便がズレて表示されていたのはMLATが原因!?
※3月7日追記
flightradar24に詳しい方から、ADS-B(GPS位置データ)ではなく、MLAT(3か所以上の地上受信局による位置決定)だから、実際の飛行位置よりもズレて表示されている可能性がある旨のツイートを頂戴した。
MLATだからズレているのでは?
空港近くから着陸後のデータの出ないのは
MLATなので提示している程度の差は常に出てます
特に曲ると外側に膨れる感じに表示されます
どうもflightradar24に表示される航空機の位置データ(緯度経度、高度)は、常にADS-Bを参照しているわけではなく、MLATを参照している場合もあるようだ。
念のためズレていた4便のデータを確認したところ、三沢発 JL156だけがADS-B(GPS位置データ)で(次図)、あとの3便はすべてMLATだった。つまり、少なくとも三沢発 JL156は、新ルートよりもズレて飛行していたということになる。
※3月8日追記
今一度、60便全部の位置データ(緯度経度、高度)について、flightradar24が参照しているデータがADS-BなのかMLATか確認してみた。
結果は、ズレていた4便だけがMLATで、そのほかの便は全てADS-Bであった。
上記(3月7日追記)で、JL156便をADS-Bと判断した根拠は、つくば市上空あたりを飛行していたときのデータであって、その後埼玉県に入ったあたりからはMLATに変わっていた(次図)。
以上のことから、4便だけがズレて表示されていたのはMLATデータが原因であった可能性が考えられる。実際に新ルートからズレていたとは断定できない。国交省の分析結果の公表が待たれる。
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