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羽田新ルート|ジェット燃料投棄リスク

ロサンゼルス国際空港付近で1月14日、上空を飛んでいた飛行機から投棄された燃料が地上に降り注ぎ、複数の小学校などで計60人が被害を受けたという。

羽田新ルートでも起こり得るのか?


もくじ

上空で旅客機が燃料投棄、小学生ら60人被害(CNN)

ロサンゼルス国際空港付近で1月14日、上空を飛んでいた飛行機から投棄された燃料が地上に降り注ぎ、複数の小学校などで計60人が被害を受けたというCNNのニュース。

上空で旅客機が燃料投棄、小学生ら60人被害 米ロサンゼルス

米カリフォルニア州のロサンゼルス国際空港付近で14日、上空を飛んでいた飛行機から投棄された燃料が地上に降り注ぎ、複数の小学校などで計60人が被害を受けた。(中略)
米デルタ航空によると、同空港を出発した上海行きのデルタ便が直後にエンジンの不具合を起こして緊急事態を宣言し、空港へ引き返していた。通常の手順に従って、機体の重量を着陸時の制限以内まで減らすために燃料を放出し、無事に着陸したという。

ユーチューブに投稿されたビデオには、上空を飛ぶ飛行機の翼の先から白い液体が噴き出す場面が映っている。

専門家によると、燃料を十分に消費していない航空機が着陸する場合は安全確保のため、余分な燃料を廃棄する必要がある。

米主要空港の発着便に対する規定では、居住者がいない指定区域の上空で、燃料が気化または拡散して地上に到達しない高度から投棄することが定められている

(CNN.co.jp 1月15日)

通常の手順に従ったというのに、なぜこのような事故が発生したのか?

ロサンゼルスで何が起きたのか?

まずは、米デルタ航空89便のボーイング777-200機がド派手にジェット燃料を投棄しているYouTube動画(1分)を視聴してみよう


Delta flight dumps jet-fuel over Los Angeles

 

ニューヨークタイムズの1月15日付けの記事「Why Did a Delta Plane Dump Jet Fuel Over Los Angeles Schools?」には、燃料を投棄する飛行機は2,000フィート(約610m)以上の高度が割り当てられるから、 投棄された燃料は地面に到達する前に蒸気に変わるとされている。

If the plane is high enough — at least 5,000 feet above the ground — the jettisoned fuel will turn to vapor before reaching the ground, according to Boeing.

Federal regulations do allow dumps at lower altitudes: The F.A.A. instructs air traffic controllers to assign planes dumping fuel to an altitude at least 2,000 feet higher than anything on the ground within five miles.

(The New York Times 1月15日)

ボーイング社によれば、飛行機が十分に高い場合(少なくとも地上5,000フィート)、 投棄された燃料は地面に到達する前に蒸気に変わるという。

連邦政府の規制では、より低い高度での投棄が許可されている。すなわち、FAA(連邦航空局)は、航空管制官に、燃料を投棄する飛行機を、5マイル(約8km)以内の地上のあらゆる物より少なくとも2,000フィート(約610m)高い高度に割り当てるように指示します。

 

パイロットがFAA(連邦航空局)の規定通りに、燃料を投棄したのかどうかについては、今後の当局の調査結果が待たれる。

羽田新ルートでも起こり得るのか?

緊急時のジェット燃料放出問題は、これまでの国の委員会の場ではほとんど議論がなされてこなかったのではないだろうか。

では、ロサンゼルスのような事態は羽田新ルートでも起こり得るのか?

次のように、問題ないと考えている人がいる。

羽田都心新ルートは遠方からの着陸時なので、燃料はほぼカラであり燃料投棄はないです。離陸は東京湾に向かってするので、もし離陸直後にトラブルが発生した場合は東京湾上空で燃料を投棄したのち着陸ルートに入ります

都心上空を通過する着陸ルートについては、燃料が空っぽなので問題なさそうだ。でも、離陸ルートのほうはどうだろうか?

ロサンゼルスの事故は、海に向かって離陸した飛行機が不具合で戻ってくるときに小学校所空を飛行しているのである(次図)。このような事態は、羽田離陸ルートでも起こる可能性はゼロではないのではないだろうか。

ロサンゼルスの事故
上空で旅客機が燃料投棄、小学生ら60人被害|CNN.co.jp

 

とはいうものの、そもそも燃料を投棄しなければならない非常事態はどのくらい発生しているのか?

ANAの2013年のアニュアルレポート(PDF:16MB)によれば、過去22年間(1992~2013)で燃料投棄した回数は最大でも年間8回(次図)。しかも市街地域を避けて洋上などで行われているとされている。

燃料投棄回数と投棄量の推移
2013年ANAアニュアルレポート(P94)

 

以上をまとめると、ロサンゼルスで発生したような燃料投棄事故は、羽田新ルートでも起こり得るが、その可能性は極めて低いというのが筆者の結論。

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