国交省は1月10日、「航空交通管制区又は航空・・・空域を指定する告示」及び「航空交通管制業務に関する告示」の一部改正案に関する意見募集の結果を公表。
「特別管制空域・・・に関する告示」に係るパブコメ結果
このパブコメのタイトルを見て、羽田新ルート関連のことだと気づく人はほとんどいないのではないか。
- 「航空交通管制区又は航空交通管制圏のうち計器飛行方式により飛行しなければならない空域を指定する告示」及び「航空交通管制業務に関する告示」の一部改正案に関する意見募集の結果について
そもそも電子政府の総合窓口e-Govイーガブの「パブリックコメント(結果公示案件一覧)」をチェックしている人でなければ、このパブコメに気づくことさえない。
何のパブコメ結果かと言えば――
これまで都心上空を飛行していた小型機やヘリコプターが羽田新ルートを通過する旅客機と衝突しないように「特別管制空域」を指定し、同空域の適用時間(15 時から 19時まで)を設定するという告示案に関する意見募集に対する結果の公表なのである。
「特別管制空域」については、次のイメージ図を参照。
「羽田新ルート|特別管制空域を指定する告示に係るパブコメ」より
寄せられた意見55件のうち34件はどこにいったのか?
パブコメ募集期間の1か月間(19年11月19日~12月18日)で寄せられた意見は全部で55件ということなのだが、21件の「ご意見」と「ご意見に対する考え方」しか掲載されていない。
残りの34件の「ご意見」はどこにいったのか?
(前略)55 件のご意見をいただきました。
寄せられましたご意見のうち、今回の改正案に直接関係するご意見について、国土交通省の考え方をとりまとめましたので、別紙のとおり公表いたします。なお、とりまとめの都合上、内容を適宜要約しています。
上記文章には、「改正案に直接関係するご意見」の「内容を適宜要約」したとされている。55件の「ご意見」を21件に「集約」したとは記されていない。
ということは、掲載されていない34件の意見のいくつかは、今回の改正案に直接関係する意見ではないものとして、取り上げなかったということなのであろう。
公開された意見21件の中身
パブコメ結果として掲載されている21件の意見の多くは、取材ヘリやドクターヘリ、遊覧ヘリなどの実運用者から提出されたと思われるもの。落下物とか騒音に係るものは見当たらない。
とはいうものの、少々気になった意見もあったので、以下5件抜粋しておこう。
※朱書きは、筆者コメント。
【意見3】都内遊覧飛行について、「風向きによっては飛べません」では予約が取れないため、15 時以降の都内遊覧飛行は実質的に困難となる。
- ⇒(前略)特別管制空域として指定する空域及び当該空域に係る規制の適用時間は、航空交通の安全性を確保するために必要な範囲としていますので、引き続きご理解、ご協力よろしくお願いいたします。
※15 時以降の都内遊覧飛行は諦めるしかない。
【意見9】新設特別管制空域は、該当時間帯のみ設定されることを明確に記述していただきたい。
- ⇒羽田新経路に係る特別管制空域は、航空法第 94 条の 2 第 2 項に基づき、当該空域に係る規制が適用される時間を 15 時から 19 時までとして告示で指定する予定です。
※新設特別管制空域の運用時間帯(15 時から19時まで)は、告示により明確化される。
【意見17】特別管制空域によって有視界飛行方式の航空機に飛行制限をすると、都心部の生活機能を低下させることになり反対。
- ⇒特別管制空域は、羽田空港到着機及びヘリコプター等の小型機双方の安全を確保するために必要な措置ですので、ご理解いただきますようお願いいたします。
※公開された全21件のうち、唯一「反対」という文言が記された意見。常套句「ご理解いただきますよう」で打ち返す国交省。
【意見19】特別管制空域内には規制緩和後に建設された高層ビルも含まれ、その基準設定に整合性が見られない。
管制空域の設定に際し、既存のビルなどを許容し、今後高さ制限を設けると東京の高層建築物の建設が不可能となりかねない。
- ⇒建築物は特別管制空域により制限されるものではなく、航空法第 49 条及び第 56 条の 3 に基づき、飛行場周辺における航空機の運航の安全確保を目的として設定される、制限表面によって制限されます。
※建築物の高さは、特別管制空域ではなく、あくまでも制限表面によって制限される。
【意見21】この特別管制空域に無断で入域するなど違反した者を取り締まれることができるのか。
航空法上の罰則規定はどのようになっているのか。小さなミスが途方もなく大きな事故に繋がりかねない。
- ⇒(前略)管制官の許可を得ることなく、航空機が計器飛行方式によらないで特別管制空域を飛行する等、法令に違反する行為がなされた場合、状況を確認した上で対処してまいります。(中略)違反して、計器飛行方式によらないで航空機を特別管制空域において運航した場合、50 万円以下の罰金となります。
※「50 万円以下の罰金」で事故が防げるのか……。
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