豊島区議会の「19年第4回定例会」本会議一般質問(11月27日)で、羽田新ルートに関して、清水みちこ議員(共産党)の質疑応答があった。
あれから2週間あまりが経過。昨日(12月13日)ようやく議会放映(録画)が公開されたので、テキスト化(約2千文字)しておいた。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
清水みちこ議員(共産)
清水みちこ議員(共産党、区議2期、愛知県女子短大卒、53歳)
問1:約束(地元の理解を得てから)を反故、区長の見解?
最後に、第3の質問。羽田空港新ルートについてです。
私は第2回定例会の一般質問で、新ルートについて区民の理解が得られていない、区民の命、財産を守るため、国に白紙撤回を求めるよう区長に求めました。さらに、我が党区議団は、区は国に対して教室型説明会のさらなる開催とスケジュールありきで強行に進めることのないよう申し入れを行いました。
ところが、今年8月、国は都心上空を低空飛行する羽田空港新ルートを来年3月末から運用を開始することを決定。小池百合子都知事は、これに同意し、感謝するコメントを発表いたしました。この決定は「地元の理解を得てから新ルートを決める」という国土交通大臣の国会での答弁、つまり約束を反故にしたものと言わざるを得ません。
さらに、国は8月末から小型機による検査飛行を開始し、来年1月からは実際の旅客便で試験飛行実施と運用開始に向け、どんどん計画を進めようとしています。
国や都は羽田新ルートは、増便で経済を成長させるため、国際競争率を高めるためなどと強調しますが、命や健康よりも経済成長を優先させることは本末転倒と言わざるを得ません。
これまで区内でオープンハウス型説明会、情報発信ブースなどが開催され、5月と6月には教室型説明会が開催されました。参加者からは、「落下物、事故、騒音などへの不安」「地域の資産価値が下がる」「人命無視」「白紙撤回すべき」などの意見が次々と出されました。しかし、それに対する国からの具体的な回答はほとんどなく、参加者から怒りの声が上がる一方で、国は「2020年3月を目途に実現を」と期日だけは明確に答えていたのです。
区長は前回の私の質問に対し、「羽田空港の機能強化については、オリンピック・パラリンピック、その先の日本の成長を見据え、必要であると認識」と答弁しています。「ただし、その羽田空港機能強化が、区民の皆さんの安全をないがしろにするものであってはならない」とも述べています。
そこで、質問です。国土交通大臣は、「地元の理解を得てから新ルートを決める」と国会で約束し、「地元とは、地方公共団体、議会、住民を指す」としています。にもかかわらず、来年3月末からの運用開始というのは、あまりにもひどい裏切りではありませんか。
区長はこれまで区民の理解が得られているという認識でしょうか。
羽田空港の機能強化、新ルートの賛否以前の問題として、約束を反故にした決定について区長の見解を伺います。
問2:来年3月末からの運用開始の撤回を求めるべき
また、区長は「今後も教室型説明会を含め、丁寧な説明を続けるよう強く要望する」と答弁しています。3月末の運用開始まで、本区での説明会はオープンハウス型説明会を3回開くという計画が示されていますが、区長はこれをもって強行してよいとのお考えですか。
少なくとも区長も参加した教室型説明会を開催し、区民合意が得られたと判断するまでは強行させないことこそ区民の安心・安全を守る区長の果たすべき役割ではないでしょうか。その立場に立ち、来年3月末からの運用開始の撤回を求めるべきです。見解を問うものであります。
呉祐一郎 副区長
呉祐一郎 副区長(元国交省住宅局市街地建築課 市街地住宅整備室長、都立大学大学院卒、55歳)
答1:国に対しては引き続き丁寧な説明などの対応を
次に、羽田空港新ルートについてのご質問のうち、まず国土交通大臣が約束を反故にした決定に関する見解についてのご質問にお答えいたします。
国は、8月7日に開催した「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」での関係自治体等からの意見を踏まえ、8月8日に新飛行経路の運行開始を決定しました。
羽田空港機能強化について、「国として今後も騒音、落下物対策等を着実に実施し、丁寧な説明を行っていくことを前提に地元理解を得られたものと判断した」と聞いております。
一方で、区内においては、新ルートに対して、ご心配や不安の声があることは認識をしております。区は今後も新飛行経路の運用について1人でも多くの方に理解をしていただくための努力が必要だと考えております。このため、国に対しては引き続き丁寧な説明などの対応を強く求めてまいります。
答2:撤回を求める考えはありません
次に、来年3月からの運用開始の撤回を求めることについてのご質問にお答えいたします。
豊島区は、騒音対策や落下物対策の徹底については、国が責任を持って対応することを前提として、羽田空港の機能強化の必要性については理解をする立場です。
また、平成30年第3回定例会において新飛行経路撤回を求める陳情については本会議で採決となりました。これらのことを踏まえ、区は国に対し、現時点では来年3月からの新飛行経路の運用開始の撤回を求める考えはありません。
なお、教室型説明会につきましては、7月30日に開催された「都及び関係区市連絡会」において、豊島区は私が出席をし、区民の皆様および区議会から様々な意見や要望が出ていること、要望のなかで特に説明会に関するものが強いことを述べた上で、豊島区としては教室型を含めた説明会を複数回開催するなど、これまで以上に丁寧な説明を国に対して要望しています。教室型説明会の開催については国に引き続き強く求めてまいります。
雑感
前回の定例会(第3回)一般質問では、14名の区議のうち羽田新ルート問題を取り上げたのはゼロ。共産党2名(儀武さとる議員、小林ひろみ議員)さえも取り上げていなかった。豊島区内では羽田新ルートの影響を受ける可能性のある区民は4万人(全区民の15%)もいるのに、区議会議員の羽田新ルート問題への関心はすこぶる低い。
今回の定例会(第4回)一般質問14名のうち唯一、羽田新ルート問題を取り上げたのが清水みちこ議員(共産)。ただ、残念ながら、前々回の第2回定例会の本会議一般質問と代わり映えせず、教室型説明会の開催と計画の撤回を訴えていた。前々回の高野之夫区長の答弁は、今回の副区長の答弁と同様だった(国に対して引き続き丁寧な説明を求める。撤回を求める考えはない)。
区との撤回論議が交わされているのは、他の区議会でもさんざん観測された、不毛なやり取りである。年6回発行される区議会だよりで、議員の質問実績として記録される以上の意味はないのでは。
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