国交省が運用している「羽田空港のこれから」というサイトに、FAQ冊子が掲載されている。最近、v5.1.2からv6.1に改訂されたことをご存じだろうか。
これまでの改訂履歴と今回の改訂で気になった点をまとめておいた。
FAQ冊子、隠密に改訂(v5.1.2⇒v6.1)
国交省が運用している「羽田空港のこれから」というサイトに掲載されているFAQ冊子。最近「v5.1.2」から「v6.1」に改訂されたことをご存じだろうか(次図)。
Google Chromeを使ってデータ更新日を調べてみると、12月5日に更新されたことが確認できる(次図)。
12月5日にv6.1に改訂されたことは、どこにも公表されていない。また、FAQ冊子本文に、改訂履歴が記されていないので、どこがどう変わったのか分からない。
こっそりとデータを差し替える姿勢は、厚労省の勤労統計不正を想起させるようでいただけない。
過去の改訂履歴
- (改訂時期不明):v1.0⇒v2.1
- 17年1月:v2.1⇒v3.0
騒音の影響が及ぶ地域名が削除されていた。
※詳しくは「国交省の体質!? 国民に知らせず公表データ差し替え」参照。 - 17年12月頃?:v3.0⇒v4.1
RNAV方式、パネル脱落などの不具合事案などが追加された。また、飛行経路案の地図上のルートが判別しやすく描かれるとともに冊子の最後に移動した。 - 18年9月:v4.1⇒v5.0
フェーズ4の内容や騒音データグラフなど、新たな情報が追加された。 - 19年1月頃:v5.0⇒v5.1
飛行ルートの一部が拡がるかたちで図が修正(3枚)されていた。
※詳しくは「FAQ冊子こっそり差し替え!?」参照。 - 19年5月10日:v5.1.1⇒v5.1.2
国内線・国際線の利用状況の人数と発着回数が増加する値に差し替えられていた。
※詳しくは「今回もFAQ冊子をこっそり差し替え」参照。 - 変更日不明:v6.0⇒v6.01
v6.1の主な改訂内容
全体の枚数は、v5.1.2(128枚)からv6.1(144枚)へと16枚増加。
追加された主な情報は次のとおり。
- 実機飛行確認(P59)
- 制限表面(P60-61)
- 特別管制空域(P66-67)
- 着陸料の料金体系に騒音要素を追加(P71)
- 着陸時の降下角の引き上げ(P73)
- 離陸する航空機の制限(P75)
- 落下物に関する取組の情報提供(P94)
- 飛行検査(P102)
- 南風時の新飛行経路図(蕨市)(P123)
なお、ニュースレター発行実績など(次図)、v6.1では削除されたページ(ⅺ~xiii)もある。
v6.1で気になる改訂内容
今回の改訂で修正された内容のうち、特に気なったのは「最大騒音レベルの表現」「不動産価値への影響」「新飛行経路図」の3つ。以下、順に説明する。
最大騒音レベルの表現
航空機の騒音データについて、v5.1.2では、飛行高度ごとに小型機・中型機・大型機の経路直下の騒音レベルの最大値が表形式で掲載されていた(次図、左)。ところが、v6.1では騒音レベルが幅を持たせた帯で表示されている(次図、右)。
これまで疑問視されていた最大騒音レベルの確からしさに対して、騒音レベルを帯状で表現することにより国交省は逃げを打っているのであろう。
経路直下の騒音データだけでなく、経路直下からの側方距離に応じた騒音データについても、v6.1では帯状のグラフで表示されるように変更された(次図、右)。
大型機のデータだけではなく、中型・小型機のデータもひとつの帯状グラフで描かれているため、生活者が知るべき最大騒音レベルが目立たなくなってしまっている(次図、右下)。
不動産価値への影響
飛行経路が地価の下落につながることを示す因果関係を見出せなかったという(次図、右)。
3空港(成田、伊丹、福岡)を対象に調査したところ、飛行経路が地価の下落につながることを示す因果関係を見出すことはできませんでした。(P64)
※筆者の独自調査によれば、羽田新ルートの高度が低い品川区や港区では、ルート周辺の一部の中古タワーマンションの価格への影響がすでに出ている可能性があるのだが……。
詳しくは、「羽田新ルートが不動産価格に与える影響について」参照。
新飛行経路図
v6.1では、新飛行経路図に「悪天時」と「好天時」の違いが分かるように、それぞれ追記したうえで、前者を黄色で、後者をピンクで色分けしている。さらに朱書きで次の注釈も追記している(次図)。
気象条件等によっては悪天時と同程度の高度となる場合があります。
何をいっているのかといえば、たとえば、南風時A滑走路が通過する代々木公園付近は好天時は高度約900mで飛行するが、天候が悪いと約750mで飛行する(騒音レベルがより大きくなる)ことを意味している。
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