練馬区議会の「19年第3回定例会」本会議一般質問(9月6日)で、羽田新ルートに関して、小松あゆみ議員(共産党)の質疑応答があった。
議会放映(録画)をもとに、テキスト化(約2千500文字)しておいた。
※以下長文なので、時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
小松あゆみ議員(共産)
小松あゆみ議員(共産党、区議1期、川村学園女子大学卒、45歳)
問1:新ルートの決定は認められない
次に、羽田空港の新飛行ルートについてお聞きします。
8月8日国交省は、都心上空を低空飛行させ発着回数を現行の6万回から9.9万回に増やす羽田空港の新ルートについて、来年3月29日からの運用開始を決定しました。
この計画をめぐり、品川区議会では容認できないとする決議が、渋谷区議会では見直し等を国に求める意見書が全会一致で挙げられています。都内各地の住民説明会でも、計画に反対し、納得できないという声が相次いで出されていました。
これまで国も都も「地元自治体や住民の理解を得ることが新飛行ルートの前提条件だ」としてきました。今回の決定はその約束を反故にするものに他なりません。
8月7日に国土交通省が開いた協議会で、新ルートについて2020年までの実現に向けて手続きを着実に進めることを東京都が要望し、国交省がこれをもって「理解が得られた」としていますが、全く根拠になりません。新ルートの決定は認められないと考えますが、区の認識をお答えください。
問2:なぜ区民に反対意見があることを(都・国に)伝えなかったのか
練馬区では、5月、6月にようやく教室型の説明会が2回開かれたばかりです。この説明会でも、騒音や落下物などの不安、住民の安全を考えていないなどの厳しい声が出され、反対意見が圧倒的でした。
しかし、国交省の協議会の前に、東京都が事前に新ルートの容認する意見案について、関係区市に意見を求めたところ、練馬を含め、すべての自治体が「なし」と答えていたことが我が党の都議団が情報公開で入手した資料で明らかになりました。羽田新ルート問題はこれまで区議会でも取り上げられてきました。国の説明会には区職員も出て区民の声を聞いているはずです。
また7月25日の都市整備委員会では、「住民理解が全て得られたと全く思っていない」と環境部長が答弁しているではありませんか。それにもかかわらず、意見を挙げなかったことは重大です。なぜ区民に反対意見があることを伝えなかったのか。また、住民理解に対する認識は変わってないか、2点お答えください。
問3:新ルートの運用決定に区として異議を唱えるべき
住民の持つ不安は全く払拭されていません。
第1は落下物です。国交省の資料では、2017年11月からの1年間で部品欠落が447件、1日1件以上あったとのことですが、これに今は海上に落下させている氷塊を加えると落下物はさらに多くなります。
未然防止策を強化しながら、事故時の補償も充実するということ自体が落下物をゼロにすることは困難であることを示しています。
練馬上空は着陸態勢に入るため、落下物に見舞われる可能性が大です。これを防ぐには、新ルートを止める以外にありません。第2は、低空飛行による騒音も大きな不安要因です。
練馬では、1,000m前後と現在の2分の1の高さを飛び、騒音は70デシベルに上がります。
団地や住宅地など閑静な地域にこれまでなかった騒音が響くことになり、区民生活への影響は避けられません。騒音は脳卒中や睡眠障害、心疾患などの健康被害、子供には読解力・記憶力の低下があると言われています。そのため、WHOの勧告では、航空機騒音を45デシベル以下にするよう求めているのです。国交省は騒音・落下物対策を講じるといいますが、限界があり、それは新ルートの設定自体に問題があるということではありませんか。
そもそも、羽田飛行ルートは、関係自治体との合意により生活環境を守ることを前提に、現在の東京湾上空に設定された経緯があります。それを反故にする新ルートは国際競争力強化を掛け声に、企業の儲けのために住民生活や地域の意向を置き去りにするものです。
国はオリンピックや観光立国を口実にしていますが、観光政策の理念は住民が誇りと愛着を持つ活力に満ちた地域社会の実現にあります。
こうした理念にも反し、住民をないがしろにする新ルートは強行するべきではありません。区民を危険にさらす新ルートの運用決定に区として異議を唱えるべきです。お答えください。
環境部長
環境部長
答1:関係地方公共団体等の意見を踏まえ、国の責任において決定した
私から羽田空港の機能強化についてお答えします。
新飛行ルート経路の決定過程についてです。
国は平成27年から、これまで5段階にわたる住民説明会を区内では延べ10回開催しました。これに加え、新聞広告や折り込みチラシなどによる周知も行っています。加えて区としては、区民へのより丁寧な説明が必要との考えから、国に要望し、地域住民を対象とした教室型形式の地域説明会をさらに2回開催しました。
また、現在、航空機音の体験などができる情報発信拠点を区役所アトリウムに開設し、周知に努めています。新飛行経路は、南風時の午後3時から7時の間の実質3時間程度、約3,000から4,500フィートの練馬区上空を飛行することになります。
このため航空機騒音や落下物等の問題が発生する懸念があり、区民の安全と安心のために、区はこれまでも国に対し丁寧な情報提供と騒音対策や落下物対策の確実な実施や区民へのさらなる周知などを求めてきました。
国は降下角度の引き上げ、低騒音機の導入を促進する着陸料の料金体系の見直しによる騒音対策の実施、落下物対策基準の策定、駐機中の機体チェックの強化といった、未然防止策の徹底と補償の充実、情報収集・分析の強化などの事案発生時の対応強化、運行開始後の丁寧な情報提供など、関係区市の要望に応える対策を講じることを発表しています。
国の新飛行経路の決定は、こうした関係地方公共団体等の意見を踏まえ、国の責任において決定したものと認識しています。
答2:「反対意見を伝えてなかった」とのご指摘は当たりません
区はこれまでも区民に様々な意見があることを機会をとらえて国に伝えています。「反対意見を伝えてなかった」とのご指摘は当たりません。
答3:新飛行経路の決定に異議を唱える考えはありません
羽田空港の機能強化に関して、より多くの区民の理解を得ることは当然であり、引き続き丁寧な情報提供が必要であるとの考えはいささかも変わっておりません。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えて、安全を確保したうえでの羽田空港の機能強化は東京の国際競争力を高めるとともに、多くの観光客の誘致、都民の利便性を向上するうえで必要なことであり、区は新飛行経路の決定に異議を唱える考えはありません。私からは以上です。
雑感(コピペ部長…)
練馬区は国交省のアリバイ作りに加担!?
練馬区でやっと2か所で開催された教室型説明会の参加者は、たったの210名(=92+118)。練馬区内で羽田新ルートの影響を受ける可能性のある区民21万人(全区民の3割)に対して、ほとんど説明がなされていないに等しいではないか。
環境部長の答弁の中で最悪なのは、「これまで5段階にわたる住民説明会を区内では延べ10回開催しました。これに加え、新聞広告や折り込みチラシなどによる周知も行っています」というくだり。
何も知らない練馬区民が聞いたら、「国も区もキチンと情報提供してくれているのだな」と勘違いしてしまうだろう。
環境部長の発言に間違いはないが、新聞広告も折り込みチラシも、延べ10回の住民説明会(オープンハウス型)も、国交省のアリバイ作りでしかないからだ。
環境部長のコピペ答弁
環境部長の答弁であと一つ指摘しておきたいのは、コピペ答弁が散見されること。
19年第1回定例会(やくし議員(共産))、19年第2回定例会(やない議員(生活者ネット))の答弁を読み比べてみると、いたるところで同じ文章が登場するのである。
たとえば、下記3回の答弁では朱書きの文言が変わっているだけ。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控え、安全を確保したうえでの羽田空港の機能強化は、東京の国際競争力を高めるとともに、多くの観光客の誘致、都民の利便性を向上するうえで必要なことであり、区は撤回を求める考えはありません。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を控えて、安全を確保したえうでの羽田空港の機能強化は東京の国際競争力を高めるとともに、多くの観光客の誘致、都民の利便性を向上するうえで必要なことであり、区は新飛行経路の決定に異議を唱える考えはありません。
(19年第3回定例会の環境部長答弁)
共産党練馬区議団は直ちに環境部長を呼びつけてもいい事案(笑)
答弁が一貫している環境部長を褒めるべきなのか、議員が舐められているのか。同じ答弁しか引き出せない議員の質問力が問われている……。
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