石井大臣はまだ羽田空港飛行ルート変更・増便を「決めたとは言っていない」という奈須りえ大田区議のツイートが流れてきた。
決めたか決めていないか論議はさておき、羽田新ルートの見直しを迫るための作戦の実行が急がれることは論を待たないだろう。
奈須りえ大田区議の主張
石井大臣はまだ羽田空港飛行ルート変更・増便を「決めたとは言っていない」という奈須りえ大田区議のツイートが流れてきた。
羽田空港飛行ルート変更と増便が、決まったかのような報道になっているが、大臣は「手続きを進めていく」としか言っていない。
決めたとは言っていない。
決まっていないということ。
「決めたとは言っていない」という主張に違和感があったので、石井大臣は8月8日の記者会見で「方針としては決定しました」と明言している旨コメントしたところ、次のリツイートを頂戴した。
行うこととして、、、手続きを進める。
国土交通省としては、、、方針としては決定しましたけれど、
↓
決定と言い切っていない
ここで断言できないのは、協議が残っているからでしょう。
これをせず、決定と公言したら、行政の暴走・独断になりますから、さすがに「余地」を残した
その後何回かツイッターでやり取りするうちに、だんだん話が噛み合わなくなってきた(と私は思う)。
地方自治体が長い歴史的な経緯の積み重ねで勝ち取った国との約束です。
議論の発端となった奈須りえ区議のブログ記事「まだ、決まっていない、決められない(手続きが終わっていない)、羽田飛行ルート変更」を改めて読んでみると――
過去に国と大田区とで取り決めた「協議」がまだ行われていないので、国交大臣はまだ「決めたとは言っていない」という整理になるようだ。
ここでいう「協議」とは、国交省が10年5月14日付で大田区に回答文書(D滑走路供用後の東京国際空港の運用について)に記された次のことを指している。
6 について
1から5までに掲げる事項(別紙1及び別紙3の経路については、大田区に関連する部分に限る。)を変更しようとする揚合は、大田区と協議する。
ようするに、現状の離着陸ルートを変更しようとする場合、国交省には大田区との協議義務が課せられているのだ。
※詳しくは、「羽田新ルート|質問主意書(大田区との約束は!?)」参照。
奈須りえ区議のブログ記事に戻ると、「大田区と川崎市の合意が、今後の(羽田新ルート)決定のカギを握っている」と括られている。
大田区と川崎市の合意が、今後の決定のカギを握っている。
騒音と危険に住民をさらすことを大田区、川崎市は認められるはずが無い。と思うのだが。
奈須りえ大田区議の主張をまとめると――
石井大臣はまだ羽田空港飛行ルート変更・増便を「決めたとは言っていない」。なぜならば大田区との間で取り交わした「大田区との協議」が果たされていないから、という流れになる。
大田区との「協議」よりUSTRのプレッシャー
米国の4大航空会社(アメリカン、デルタ、サウスウエスト、ユナイテッド)のうちの2社がすでに羽田増便を前提に動いている。
- 米デルタ航空は8月9日、成田空港から撤退し、来年3月から羽田空港に日米路線を集約させると発表。
- ユナイテッド航空は8月16日、羽田空港の国際線発着枠増枠に伴い、成田から羽田へ2路線を移管すると発表。しかも今回新たに配分されたシカゴ・ワシントン・ニューアーク・ロサンゼルス線の航空券の販売を現地時間8月17日から開始するという。
安倍政権は、大田区との「協議」があるからといって、USTR(米国通商代表部)が描いた米国航空会社の商業的利益拡大に抗うことなどできるのだろうか。
羽田新ルートの見直しを迫るための作戦
石井国交大臣は8月8日、閣議後の記者会見で、羽田新ルートの20年3月29日運用開始・国際線増便を公言した。
国土交通省としましては、羽田空港において2020年3月29日の夏ダイヤからの新飛行経路の運用開始及び国際線の増便を行うこととし、今後、各種の手続きを進めてまいります。
※詳しくは、「羽田新ルート|石井大臣「地元の理解が得られた」」参照。
大臣が公の場で宣言したことにブレーキをかけることは簡単ではないだろう。
羽田新ルートの見直しを迫るための作戦として、いま考えられているのは主に3つ。以下説明。
大田区との約束死守
奈須りえ大田区議らが主張している大田区との約束(協議義務)を守らせる作戦。
1年前(統一地方選・参院選の前)だったらまだ、「約束を守れ!」と叫び、区民の意見を議席に反映させることもできたのだが、叶わなかった。
羽田新ルートが通過する13区議会のなかで、統一地方選挙後の大田区議会のパワーバランスは、羽田新ルートを推進している自公の割合が5割を超えている(次図)。
10,901票でトップ当選した奈須りえ議員の力をもってしても、自公の壁を破るのは難しいのではないか。
そもそも、国交省が大田区と交わした約束は、「大田区と協議する」ことは義務付けられているが、「離着陸ルートを見直す」ことまでは義務付けられていない。
国交省としては、「協議」をしたという事実さえあれば、約束を果たしたという理屈が成立する。国交省がいかにもやりそうなことではないか。
ガラパゴス管制の見直しなど
「羽田問題解決プロジェクト」(旧 都心低空飛行問題シンポジウム実行委員会)が8月8日の記者会見で掲げた3つの選択肢(代替案)。
これらを採用すれば、都心上空を飛ばさなくて済むという。
「低空飛行の代替選択肢・フリップ」より
- 成田・関空・中部国際における、「余剰枠」を活用する
「公用枠」として別枠を確保している、1日30枠・年間10950枠を、羽田民間機に開放- (杉江案)離陸機が滑走路に進入する際の過剰クリアランスを15秒圧縮する/
- 英国基準等を羽田に本格的に導入、ガラパゴス管制基準を「羽田では」改める
※杉江弘氏(元日本航空機長)が提案している「過剰クリアランスを15秒圧縮」については、「羽田新ルート|ガラパゴス管制を止めれば都心低空飛行は不要」参照。
10万人クラウド訴訟
※筆者の提案。
筆者の独自調査によれば、22区で羽田新ルートの影響を受ける住民は100万人を超える。このうちの1%、1万人規模の住民が差し止め訴訟を起こせば、さすがに政府もいったん立ち止まざるを得なくなるのではないか。
クラウドファンディングを活用すれば、原告になることを躊躇する人からも資金が集められる。目標は10万人規模のクラウド訴訟である。
クラウド訴訟の主眼は、時間をかけて裁判で戦うことではなく、10万人規模の市民が羽田新ルートに反対の声を上げていることを可視化することで、年内(?)の衆院選を控える政権に見直しを迫ること。
つまり、戦わずして勝つこと(孫子の兵法!)
※詳しくは、「国交省の戦略には「10万人クラウド訴訟」で対抗…」参照。