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羽田新ルート|USTR「外国貿易障壁報告書」

USTR(米国通商代表部)が3月29日に公表した「外国貿易障壁報告書」の最新版(2019年)に、羽田増便の件が触れられていたので、まとめておいた。


もくじ

増便目的は、米国航空の利益確保!?

2月に入って羽田増便枠の半数が日米路線に決まり、米航空4社が増便枠の獲得に走り出している。横田空域通過と引き換えに米国航空枠の増加をディールした可能性はないのか。

増便目的がアジアからの訪日外国人受け入れではなく、米国航空の利益確保に変わっていないだろうか、というブログ記事「羽田新ルート|横田空域とのディールで大義名分が失われた!?」を投稿したのが3月3日。

このブログを宮本徹衆議院議員(共産党)の関係者が読んでくれていたのかどうかはさておき、4月12日の衆院国交委員会で同議員が石井大臣に同様の指摘をしていた。

観光立国というのは口実で、アメリカ側の、とりわけビジネスの要求に応えるというのが真の狙いというのが羽田新飛行ルートなんではないか、と考えざるを得ないんですよね。

(略)

石井大臣はUSTRの指摘に沿って、アメリカ航空会社の昼間時間帯のアクセス拡大を進めてきたと、こういうことなんじゃないんですか。

これに対して石井大臣は、次のように否定している。

横田空域の調整と羽田空港の発着枠の調整は全く別の問題でございまして、ご指摘のような事実はございません

※詳しくは、「羽田新ルート|衆院国交委、石井大臣vs宮本徹議員」参照。

USTR(米国通商代表)の要求とは

宮本議員が言及していたUSTR(米国通商代表)の要求とは何なのか?

じつは、外務省の「米国経済に関する資料」のページに、「通商政策」として、「2019年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書」の英語版のほかに、外務省が作成した日本語版(日本関連部分概要)が掲載されている(次図)。

通商政策

 

英語版は全537枚もの膨大な量だ(次図)。

2019年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書

羽田新ルートについて、P294に次のように記されている。

Japan is an important U.S. Open Skies partner in the Asia-Pacific region. While the United States and Japan enjoy an Open Skies relationship, Tokyo’s Haneda airport is operationally constrained, and access to the airport for international operations continues to be limited. The United States continues to monitor this situation, as Haneda is expected to open additional slot pairs for international service by 2020, some of which should be available to U.S. carriers.

外務省が作成した日本語版(日本関連部分概要)では次のように記されている。

日本は米国にとってアジア太平洋地域における重要な「オープンスカイ」のパートナー。羽田空港が 2020 年までに追加の国際便発着枠を開設させることが見込まれており、いくつかは米国航空会社に利用可能となるべきであるところ、米国はこの状況を引き続き注視していく。

 

「(増便枠の)いくつかは米国航空会社に利用可能となるべきであるところ、米国はこの状況を引き続き注視していく」と、日本政府に対してずいぶんな圧力をかけているのである。

米国による羽田増便枠の要求圧力はいつから始まったのか?

USTRが1年前(18年3月30日)に公表した「2018年外国貿易障壁報告書」(PDF:3MB)P276にも、同様の記載が見られる。

ただ、このときはまだ、「いくつかは米国航空会社に利用可能となるべき」という踏み込んだ表現はなかった。

The United States continues to monitor this situation, as Haneda is expected to open additional slot pairs by 2020.

(羽田空港が 2020 年までに追加の発着枠を開設させることが見込まれており、米国はこの状況を引き続き注視していく。)

 

「2017年外国貿易障壁報告書」にはまだ、2020年羽田増便枠への言及はなかった。ということは、日本政府は少なくとも2年以上前から、米国から羽田増便枠の要求圧力を受けていたことになる。

TPPやTAGはさんざんニュースになるのに、米国による羽田新ルート枠の要求がほとんどニュースにならないのは、マスメディアの忖度……。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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