中国事情に詳しいジャーナリスト中島恵氏の新刊『日本の「中国人」社会』日経プレミアシリーズ(2018/12/11)を読了。
「第1章 なぜ、この街にばかり集まるのか」で、中国人富裕層のマンション選びに触れているところがあったのでピックアップ。
中国人富裕層が海辺に住みたがる理由
中国人富裕層が海辺に近い高級タワーマンションを選ぶのは、風水的に運気がよいだけでなく、窓から海の景色が見えるのが気持ちいいからだという。
中国人富裕層が海辺に住みたがる理由
(略)東京都内だけでも約20万人もの中国人が暮らしているのだから、1ヵ所にまとまっていることのほうがむしろ特殊で、年々分散化しているのは自然だろう。ただし、富裕層に関しては、次のような傾向があると聞いた。
「よく名前を聞くのは月島、豊洲、勝どき、お台場、田町、品川など比較的海辺に近い高級タワーマンションです。海辺は風水的に見て運気がよいだけでなく、窓から海の景色が見えるのは気持ちがいいようです。東京オリンピックの影響もあるかもしれません」
東京・池袋で不動産業を営む朱海氏はこう語る。
「爆買い」が騒がれた2015年ごろ、朱氏は中国に住む人々の投資用として日本のワンルームマンションを斡旋していた。だが、最近では、セキュリティが万全で高級感があることから、とくに富裕層の中国人が自宅用としてタワーマンションを購入したいという希望が増え、その仲介も行っているという。(P45-46/第1章 なぜ、この街にばかり集まるのか)
※不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は、3年前に上梓した著書『2020年マンション大崩壊』のなかで、最高層分を数億円で購入した中国人が「管理組合の総会の議事進行は中国語で行うべき」という信じがたいエピソードを紹介していた(管理組合総会は中国語!? 2020年マンション大崩壊)。
中国人が多いところには住みたくない中国人富裕層
港区に住む40代の中国人女性は、池袋や新宿で中華食材を買い求めるが、住みたくないという。
中国人が多いところには住みたくない中国人富裕層
一方で、自由が丘、広尾、渋谷、恵比寿、白金、麻布十番、成城、田園調布などといった、いわゆる「高級住宅地」を好む中国人富裕層もいる。40代のある中国人女性はいう。
「港区の小学校は国際クラスが充実しているので、区内でマンションを探しました。教育環境がいいだけでなく、高級食材なども手に入るスーパーがあってとても便利です」
ときには池袋や新宿で中華食材を買い求めるが、「食事だけならいいですけど、正直いって、あちらのほうにはあまり住みたくない。なぜかって? だって中国人が多いから」と笑いながら話す。この言葉を聞いて、訪日中国人観光客の富裕層の言葉を思い出した。
「中国人の団体客が大勢いるところには行きたくない。彼らは騒がしいし、マナーが悪いから。自分も彼らと同じような人間だと思われたくない」(P46-47/第1章 なぜ、この街にばかり集まるのか)
※新宿区の中国人は24年に1.9万人を突破。豊島区に住む外国人は中国人が圧倒的に多い(次図)。中国人富裕層はこれらの階層とは住む世界が違うということか……。
「【データで見る】外国人が多い6つの区とは(東京23区)」より
「なぜ日本人は、いい学校の学区に引っ越さないの?」
中国ではいい学校がある地区にあるマンションのことを「学区房」と呼ぶ。中国人業者は「いい学区の不動産」を中国人富裕層に紹介するという。
「なぜ日本人は、いい学校の学区に引っ越さないの?」
(略)中国国内での厳しい「学区房戦争」を思えば、日本での住まい選びは「自由で楽。選択肢が多いし価格も安い。なぜ日本人はいい学校がある学区にあまり引っ越そうとしないのか不思議に思うくらい」と郭氏は笑う。
郭氏に聞いて驚いたのは、そうしたいい学区の不動産を求める声が大きいため、日本で不動産を扱う中国人業者がいて、個別に持っている物件を案内してくれるそうだ。物件は日本のデベロッパーのものだが、不動産紹介者も購入者も中国人なのだ。(P49/第1章 なぜ、この街にばかり集まるのか)
※中国人向けの中国語の不動産サイトとして、日本温州総商会が運営しているサイト「日本捜房」や、台北に本部を置き上海と香港に事務所を構える「日本房産網」、江東区青海に本社を置く「 JC here 」などがある(都心のタワーマンションは中国人に占拠されるのか?)。
本書の構成
7つの章から構成されている。全231頁。
- 第1章 なぜ、この街にばかり集まるのか
- 第2章 日本に持ち込まれた”コミュニティ”の構造
- 第3章 勉強に駆り立てられる人々
- 第4章 日本の教育はゆるすぎる!
- 第5章 日本に住むこと、その利点と難点
- 第6章 私たちは”違う世界”に生きている
- 第7章 彼らが、この国に住み続ける理由
Amazon⇒『日本の「中国人」社会』
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