都議会の「18年第4回定例会」本会議の代表質問(12月11日)で2名(都民F・小山議員、自民・山崎議員)、一般質問(12月12日)で1名(都民F・石川議員)、羽田新ルートに関連した質疑応答があった。
会議録(速報版)が公開されたので整理。
※以下長文なので、時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
小山議員(都民F)代表質問
小山くにひこ 議員(都民ファースト、区議3期、明大卒、元学習塾教室長、43歳)
質問:羽田空港の空港容量の拡大、知事の見解?
まずは、羽田空港の機能強化について伺います。
東京と日本の成長を考える検討会報告書に挙げられました、東京と日本の成長に必要な具体的取り組みの一つが羽田空港の機能強化であります。
先日、小池知事も訪れましたイギリスの首都ロンドンでは、世界の都市総合ランキングの交通アクセス分野では2位でありますが、国際空港のさらなる機能強化に向け、ヒースロー空港における滑走路の新設に約2兆円を投じる計画を決定し2026年の完成を目指しております。
諸外国では国際競争力のさらなる強化に向け、国際空港の機能強化のための取り組みが積極的に行われており、東京もこうした世界の動きにおくれをとることなく、より積極的な投資を行っていかなければなりません。
また、こうした機能強化の取り組みは、都民への丁寧な説明や安全管理の徹底とともに行われるべきものであります。
さらに、安全と環境に配慮した羽田空港の機能強化を図るためには、横田空域との調整も含めた首都圏の空域の再構成が必要であり、国との折衝を進めていく必要もあります。
羽田空港の機能強化のためには、現在、都が国に協力し取り組みを進めています羽田空港の空港容量の拡大がまず必要と考えますが、知事の見解を伺います。
知事回答:2020年までの実現、積極的に取り組む
小池百合子 都知事(1期、カイロ大卒、66歳)
次に、羽田空港の機能強化についてでございます。
東京が国際的な都市間競争を勝ち抜いていくためには、2020大会やその後の航空需要に応えて、国際線の増便を可能とする羽田空港の容量の拡大が必要不可欠でございます。
国が提案した飛行経路の見直しに対しまして、都は、地元への丁寧な情報の提供と騒音影響を軽減する方策の検討や、徹底した安全管理に取り組むことを国に要請してまいりました。
これを受けまして、国はこれまでの4期にわたるオープンハウス型の説明会に加えて、今月から5期目の説明会を開催するなど、丁寧な説明と意見の把握に努めておりまして、今後もさまざまな形で継続する予定と聞いております。
また、国は、騒音影響の軽減策として、低騒音機の導入促進に加えまして、都の要請を受けて、今年度から学校、病院等の防音工事に対する助成制度を拡充いたしております。
安全対策につきましても、航空機のチェック体制の強化などに加えて、本年9月には落下物防止対策の基準を制定いたしまして、国内外の航空会社に対して、来年1月から順次、対策の義務づけを図るなど、総合的に対策を充実していくとしております。
都は国に対しまして、騒音影響の軽減や安全管理の徹底と地元への丁寧な対応につきましてより一層の取り組みを求め、2020年までの機能強化が実現できますよう、積極的に取り組んでまいります。
山崎議員(自民)代表質問
山崎一輝 議員(自民、区議3期、東海大卒、46歳)
質問:羽田空港の機能強化、知事の見解?
国は現在、2020年までの羽田空港の機能強化に向けて、5巡目の住民説明会を今週末から開始するなど、さまざまな取り組みを進めています。本年10月に発表された都市総合ランキングでは、昨年に引き続き世界第3位だったものの、課題であった交通アクセス分野の順位は5位にとどまっております。
公共交通の充実、正確さなどは高水準を保つものの、さらなる上昇のためには、国際線直行便就航都市数の拡大が鍵となっております。
東京の都市間競争の強化に向けて、羽田空港の機能強化と国際化は極めて重要であり、知事も羽田空港の機能強化は必要不可欠とこれまでの議会で述べております。そして、都議会においても、この羽田の機能強化に反対する請願陳情については、共産党など一部会派を除き全会派が不採択とし、まさに知事と都議会が一体となって羽田の機能強化と東京の発展を目指して取り組んでおります。
ところが、さきの品川区長選挙で、この方針を真っ向から否定することを旗印に立候補した候補者と知事がポスターにおさまり、都議会第1党はこの方を推薦をしていました。多くの都民は、知事、そして都議会第1党の政治姿勢に強い戸惑いを覚えたと思います。
多くの都の事業に共通することでありますが、大きな目標達成のためには、時には各地域の方々のご理解とご協力が必要になります。一番いけないのは、選挙対策を優先して、都合のよい言葉を使い分けることであります。都知事、そして都議会の信用にかかわることです。
そこで改めて、都心上空のルートによる羽田空港の機能強化について、知事の見解を伺います。
知事回答:2020年まで実現、積極的に取り組む
小池百合子 都知事
羽田空港機能強化についてのご質問がございました。
東京が、国際的な都市間競争を勝ち抜いていくためには、2020大会、その後の航空需要に応えまして、国際線の増便を可能とする羽田空港の容量拡大が必要不可欠でございます。
国が提案した飛行経路の見直しに対しまして、都は、地元への丁寧な情報提供と騒音影響を軽減する方策の検討、徹底した安全管理に取り組むことを国に要請しております。
これを受けまして、国は、これまでの4期にわたりますオープンハウス型の説明会に加えまして、今月から5期目の説明会を開催するなど、丁寧な説明と意見の把握に努めておりまして、今後もさまざまな形で継続する予定と伺っております。
また、国は、騒音影響の軽減策として、低騒音機の導入促進に加え、都の要請を受けまして、今年度から学校、病院等の防音工事に対する助成制度を拡充、また、安全対策につきましても、航空機のチェック体制の強化に加えて、本年9月には落下物防止対策の基準を制定して、国内外の航空会社に対し、来年の1月から順次、対策の義務づけを図るなど、総合的に対策を充実するとしております。よろしいでしょうか──はい。
都は、国に対しまして、騒音影響の軽減や安全管理の徹底と地元への丁寧な対応につきまして、より一層の取り組みを求めて、2020年までの機能強化が実現できますよう、積極的に取り組んでまいります。
石川議員(都民F)一般質問
石川良一 議員(都民ファースト、区議2期、稲城市長5期、早大卒、66歳)
質問:横田空域返還のための東京都の姿勢?
次に、基地、空港問題について伺います。
平成17年、多摩地域商工会、商工会議所26団体によって、横田基地軍民共用化推進協議会が設立され、その後、多摩地域経済団体横田飛行場民間利用促進協議会も立ち上がり、この会に私も出席をさせていただきました。地元の経済団体も横田基地の軍民共用化が実現すれば、経済効果は、およそ1610億円に上るという試算もあり、多摩地域発展に大きな期待を寄せているわけであります。
しかし、舛添知事の時代には、基地返還問題が俎上に上がることはほとんどありませんでした。2019年にはラグビーワールドカップ、2020年にはオリンピック・パラリンピックの開催があり、横田基地の軍民共用化推進のため、またとない機会と考えます。
横田基地の返還、横田基地の軍民共用化を推進すべきと考えますが、都の姿勢を改めて知事に伺います。
横田基地は、東京5市1町にまたがり、その上空に広がる横田空域は、1都9県にも及びます。戦後、GHQが日本の空の管制権を掌握して以来、日米地位協定に基づき、今も米軍の管理下に置かれていますが、民間航空機がこの空域を飛行する場合、米軍による航空管制を受けねばならず、大きく旋回するルートを通らねばなりません。
1992年に続き2008年、横田空域の一部が返還が決まり、飛行ルートの改善により、燃料削減などの経済効果は年間で98億円に上り、CO2の削減効果も明らかにされました。これは全面返還と軍民共用化を主張し続けた成果といえるかと思います。
しかし今、羽田空港の発着枠をふやす交渉が、横田空域を数分間通るため、米軍との間で難航していたとのことで、通過時間帯を午後の短い時間に限ることで、米軍は日本側の管制を容認するとの報道がありました。
そもそも戦後73年もたって、主権国家でありながら、外国の軍隊が首都の空域を支配しており、米側の容認を求めること自体、どちらに主権があるのかわからない逆転の状態といわざるを得ません。先ほど指摘をした国をアノミー化させる要因となるわけであります。この問題を放置してきたことを国民の1人として恥じるばかりであります。
横田空域返還のための東京都の姿勢について改めて伺います。
知事回答:今後とも、横田空域の全面返還の実現を国に要請
小池百合子 都知事
横田基地のご質問でございます。
まず返還、そして軍民共用化の推進についてであります。
日米地位協定では、米軍基地について、必要でなくなった場合は我が国に返還しなければならない、その必要性を絶えず検討する旨が定められております。
このため、都といたしまして、都民の生活環境を改善し、地域のまちづくりを推進する観点から、横田基地を含めて、米軍基地の返還の可能性が検討され、整理、縮小、返還が促進されますよう、国に要請をいたしております。
同時に、都は、首都圏西部地域の航空利便性の向上や多摩地域の活性化などに向けまして、横田基地の軍民共用化に取り組んでいるところでございます。
さらに、東京2020大会の開催時には、海外からの来訪者の増加も見込まれております。この問題につきましては、外交、安全保障にかかわることから、国と連携していくことが不可欠でございます。
今後とも、地域からの声も聞きながら、国に日米協議の進展を働きかけるなど、横田基地の軍民共用化の実現に取り組んでまいります。
空域の返還についてでございます。
米軍が管理する横田空域は、1都9県にわたる広大な空域でありまして、都はかねてよりこの全面返還に向けて国に要請を重ねてまいりました。
平成20年の9月には、空域の一部が返還されまして、飛行時間の短縮や燃料消費の削減などが図られたところでございます。
首都圏の空域を再編成して、より安全で効率的な航空交通を確保していくためには、今後とも、管制業務とあわせ横田空域の全面返還の実現を国に要請をしてまいります。
雑感(知事・都議会一体となって羽田機能強化を目指す!?)
小山議員(都民F)は、都心が飛行騒音に汚染されることには関心がないのか。諸外国の国際航空の機能強化の動きに後れをとることなく、より積極的に投資を行っていかなければならないという。「都民への丁寧な説明や安全管理の徹底とともに行われるべき」と言いながら、「羽田空港の空港容量の拡大がまず必要」だと。
山崎議員(自民)は、羽田機能強化に反対する請願陳情を不採択としたことを踏まえ、知事と都議会が一体となって羽田の機能強化と東京の発展を目指して取り組んでいると言い放つ。
これら2人の議員に羽田空港の機能強化に係る姿勢を問われた都知事の答弁には、あきれ返る。2つの答弁を読み比べることで初めて気が付くのだが、言葉尻こそ違うものの、最初から最後までほとんど同じなのである。「2人の議員に同じことを問われたので、2つの答弁が同じでも問題ない」と文案を作成した都職員は考えたのだろうか……。
今回の質疑に立ったのは、代表質問5名と一般質問13名。合計18名のうち、羽田新ルート問題に触れたのは、上述の代表質問2名と一般質問1名のみ。羽田新ルートを推進している公明党はまだしも、共産党や立憲民主党が羽田新ルート問題に触れないのはなぜか?
代表質問・一般質問の時間配分を可視化したのが次図。
共産党は代表質問1名(38分)と一般質問1名(13分)だったが、羽田新ルート問題を取り上げなかった。「市場移転」の質問に時間を費やすより、羽田新ルートに時間を割くべきではなかったのか。
残りの会派、「立憲民主党・民主クラブ」1名(14分)と「維新・あたらしい・無所属の会」1名(6分)は、いかんせん持ち時間が少なすぎて、羽田新ルートまで手が回らないということなのかもしれない。
あわせて読みたい