大田区議会の「18年第4回定例会」本会議一般質問(11月29日)で、羽田新ルートに関して、奈須利江区議(フェアな民主主義)の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、テキスト化(約1千500文字)しておいた。
奈須議員:区長は新飛行ルート案による都心低空飛行、賛成ですか、反対ですか
奈須利江議員(フェアな民主主義、区議4期、青学卒、57歳)
(略)羽田の飛行ルート変更案も経済利益から始まった事業です。
住民を蚊帳の外に、国交省の関係研究機関、運輸政策研究機構が2010年に検討結果を取りまとめ、ほぼその内容をもとに都心低空飛行を始めようとしていますが、「内陸飛行してでも増便して便利にしてほしい」という区民の声は聞いたことがありません。
現在の羽田空港の飛行ルートは一朝一夕でできたものではなく、戦前戦後を通じた長い歴史のなかで、区民と区議会と大田区とが作り上げてきたものです。
航空機事故があり、敗戦に伴うGHQによる空港とその周辺の接収、48時間強制退去、その後の騒音・大気汚染、空港移転。ここから、海から着陸して海へ離陸する。モノレールの内側、内陸側は飛ばないといった原則を大田区民が勝ち取ったのです。「オリンピック」「再国際化」「横田空域返還」「経済発展」などの言葉により、私たち大田区民が求めてきた本質を忘れさせかけた部分もありますが、羽田空港からの区民生活の安全と騒音を含めた環境は侵されるべきではなく、私たち大田区民が守るべき最低限の権利です。
「羽田空港の共用を変えるには、大田区との協議が必要である」という国交相と大田区の文書が残っています。歴史的経緯から見ても、大田区長の発言が区民生活はもとより、首都圏、日本国民に与える影響は非常に大きいのです。
区長はこの羽田空港飛行ルート変更による都心低空飛行問題でも、区民の生命や住環境より企業の利益ほかを優先するのでしょうか。そこで伺います。
新飛行ルート案における大田区長の責任が非常に大きいことは、文書によって明らかです。ところが、大田区長はその責任から逃げるかのように、その立場を明らかにしていません。しかし、仮に新飛行ルート案が決まったとなれば、「大田区長が協議に合意した」ということですし、今のまま態度を表明しなければ、松原区長が反対しなかったから都心低空飛行が始まったことになります。「隣の品川区長は反対表明した」というふうに聞いています。
松原忠義大田区長は新飛行ルート案による都心低空飛行について、賛成ですか、反対ですか。その立場を明らかにしてください。
態度を表明しなければ、賛成側に立っていると区民からは取られるでしょう。
区長の判断が区民のみならず、都民、国民への将来にわたり大きく影響するという責任・役割を自覚したうえでお答えください。
空港まちづくり本部長:区として賛否は表明してございません
空港まちづくり本部長
次に、空港等に関してご質問にお答えします。
これまでに様々な場面で繰り返しご説明してまいりましたが、航空機の飛行経路設定やその変更は、国家としての航空政策の一環であり、しかるべき手順を踏み、国の責任において判断するものと理解しており、区として賛否は表明してございません。一方、区では羽田空港の滑走路運用に関して、国と確認書を取り交わし、区に関連する部分を変更する場合については協議することとしております。
機能強化提案に関しては、国は提案当初から2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの実現を目指しております。区としては、この提案(羽田空港の機能強化提案)を重大なものと受け止め、広く区民の皆さんに正確な情報を知って頂きたいと考え、国に対し機会を捉えて、丁寧な説明の実施を求めてまいりました。引き続き様々な手法を活用した情報提供を国に求めてまいります。
また、現在でもゴーアラウンド等により区内上空を比較的低空で通過する場合があり、区民の皆さんにご心配をおかけしていることから、現行課題についても、引き続き国に適切な対応を要請してまいります。私からは以上でございます。
雑感(賛否は表明していないが、容認…)
奈須議員に新飛行ルート案に賛成か、反対か、態度を明らかにせよと迫られ、「区として賛否は表明してございません」と本部長が答弁。
賛否は表明していないが、「区としては、この提案(羽田空港の機能強化提案)を重大なものと受け止め」ていると答弁していることから、実質的に「容認」しているとみていいだろう。
他の多くの区議会で聞かれた、国への丸投げ答弁(国に丁寧な説明の実施を求めること、情報提供を求めること)は、この大田区でも観測された。
※マスメディアが取り上げなければ、羽田新ルート問題は区民には届かない。区議会議事録の肥しとなるだけだ。弱小なこのブログメディアによる区議会質疑応答の全文書き起こし情報が少しでもお役に立てば幸甚。
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