国交省はダンパー交換作業が長期化する恐れがあると見て、検証して安全が確認できた建物については「地震時における構造安全性について、支障がないものとして取り扱って差し支えない」という通知を出した。
国交省、免震・制振データ改ざんへの対応を加速
交通省は10月23日、相次いで発覚する免震・制振ダンパーの検査データ改ざん問題を受け、同種の製品を製造するメーカーに通知した一斉調査の報告期限を年内から前倒しし、不正などが確認された場合、10月26日にも報告するよう要請していた。
10月26日に出てきた結果は、86社中81社「不正なし」、5社「調査中」。
81社「不正なし」回答=免震・制振装置メーカー―国交省
(前略)石井啓一国土交通相は26日の閣議後会見で、不正の有無について調査報告を求めていたメーカー86社のうち、81社から「不正はない」との報告を受けたと明らかにした。
残りの5社は調査中で、国交省は早期の報告を求めている。(以下略)
(時事通信 10月26日)
たった3日の確認期間で、81社が「不正なし」という回答。あとから「よく調べたら一部で改ざんがありました」なんてことはないのだろうか。まあ、そのときの言い訳は「十分な確認期間がとれなかったから」とでもいうことになるのか。
今回、「調査中」と回答した5社には、改ざんの可能性があるのか気になるところである。調査結果が待たれる。
このように国交省は、免震・制振データ改ざんへの対応を加速している。なぜなのか?
鎮火を急ぐ国交省の通知
国交省はダンパー交換作業が長期化する恐れがあると見て、検証して安全が確認できた建物については「地震時における構造安全性について、支障がないものとして取り扱って差し支えない」という通知を出した。
不正免震ダンパー用いた工事中物件、国交省が条件付きで仮使用認める通知
免震・制振ダンパーの検査データ改ざん問題で、国土交通省は完了検査前の建築物についての対応方針を特定行政庁や指定確認検査機関へ通知したことが、日経 xTECH/日経アーキテクチュアの取材で分かった。通知は10月23日付。
大臣認定に適合しないダンパーや、適合するか確認できないダンパーが使われた建築物では、特定行政庁のみが仮使用認定できる、とする内容だ。
大臣認定に適合しないオイルダンパーが使われた建築物は、建築基準法違反に該当する。今回の問題では免震建物がこれに当たる。適合するか確認できないダンパーを使った場合も含め、工事中の新築建築物なら交換が済むまで検査済み証を交付できない。国交省はメーカーによる交換作業が長期化する恐れがあると見て、今回の通知を実施した。(中略)
今回の通知は、検証で安全が確認できたものについては「地震時における構造安全性について、支障がないものとして取り扱って差し支えない」とした。(以下略)
免震・制振データ改ざん問題が長引くと、マンション市場をけん引してきた免震マンション(その多くは大規模タワーマンション)の売れ行きに悪影響が及ぶ。
データ改ざんダンパーが使われてマンションは、免震効果が低下しても建物が揺れやすくなるだけで耐震性能に問題はない、と鎮火を急ぐ国交省。
東洋ゴムのときは、迅速な火消しに成功したが…
3年前(15年2月9日)の東洋ゴムのときは、迅速な火消しに成功し、2か月もすると世間の耳目を集めることはなかった。ただ、今回のKYBの改ざん事件は、東洋ゴムはいまだに3割近くの物件が取り換え工事の着工に至っていないことまで世間に知らしめてしまった(KYB免震・制振データ改ざん|費用・期間(東洋ゴムの事例))。
今回の免震・制振データ改ざん事件は、うまく鎮火できるのか?
Googleでどれだけ検索されているかを可視化すると(次図)、いったん燃え上がった火は、鎮火に向かっているようにも見えるのだが……。
【追記】
- 10月30日(石井国交相)
石井国交相は10月30日の閣議後記者会見で、未報告だった5社のうち4社から「不正を行った事実はない」との報告があったことを明らかにした。 - 10月31日(国交省)
残り1社からも不正を行った事実はないとの報告があり、結果として10月16日及び23日に公表した事案以外に不正がなされた事実は報告されませんでした。