自分が住んでいる、あるいは購入しようとしている免震・制振マンションにデータが改ざんされたダンパーが使われていたら、無償で交換してもらえるにしても、いつごろまでに交換してもらえるのか、気になるところだろう。
中古マンションを転売するにしても、ダンパー交換前となると安く叩かれる可能性が高そうだ。新築だから竣工・引き渡しまでにダンパーを交換してもらえれば全く問題ないのだが、はたして間に合うのか。
KYBがデータを改ざんした建物986件のうち最も多いのが住宅265件(次図)。
週刊新潮が独自に入手した「KYB被害マンション」によれば、データが改ざんされたマンションは23区で59棟(うち調査中35棟)。
※詳しくは、「週刊新潮|「KYB被害マンション」59棟リスト」参照。
KYBは「KYB被害マンション」59棟を優先して交換してくれるのだろうか。
あくまでも一般論としてだが、ダンパーが交換される建物の優先順位を推定してみよう。
KYBは免震・制振装置の供給メーカであって、力関係としてはゼネコンが上になる。実際に交換工事を行うのもゼネコンだ。数多のゼネコンのなかでも、バーゲニングパワーが卓越するいわゆるスーパーゼネコン5社(鹿島、清水、大成、大林、竹中)の調達能力が高い(中小ゼネコンへの免震・制振ダンパーの供給は後回しになる)。だから、ダンパーが交換される物件の優先順位は、スーパーゼネコンが鍵を握っている。
では、このスーパーゼネコンは、マンションを優先させるのか、あるいは庁舎や病学校といった公共施設を優先させるのか? はたまた生産施設やデータセンターなどの民間施設を優先させるのか?
民間企業と役所との力関係(発注力)で決まるのではないか。
もともとゼネコンは利幅の少ないうえに対応が面倒なマンション(総戸数ぶんの”施主”への対応を迫られる)よりも、公共施設を志向しているようなところがあるし、今後とも役所とは良好な関係を維持しておきたいと考えてもおかしくはない。
でも、新築物件の竣工時期を超えることは、ペナルティに直結するので可能な限り避けたい。
よってもって、免震・制振ダンパーの交換工事は、次のような順になるのではないだろうか。
1.スーパーゼネコン施工物件
- (1)公共施設(新築)
- (2)新築マンション、民間施設(新築)
- (3)公共施設(既存)
- (4)中古マンション、民間施設(既存)
2.中小ゼネコン施工物件
- (5)公共施設(新築)
- (6)新築マンション、民間施設(新築)
- (7)公共施設(既存)
- (8)中古マンション、民間施設(既存)
繰り返すが、この優先順位はあくまでも一般論としての想定。実際には個別の事情があるので、もちろん全てがこの通り進むというものではない。