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経済同友会『民泊新法に関する意見』 をひも解く

住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行(6月15日)されて、4か月が経過。最近は民泊のニュースをあまり聞かなくなった。

そんななか、経済同友会は10月15日、民泊新法の見直しを求める「住宅宿泊事業法(民泊新法)に関する意見」(PDF:638KB)を発表した。

住宅宿泊事業法(民泊新法)に関する意見

目次

  • Ⅰ.住宅宿泊事業法の課題
  • Ⅱ.民泊に係るステークホルダーの全体最適を実現する規制のデザインを
  • Ⅲ.民泊新法の見直しに向けた意見
    1.住民にとって安心・安全な民泊を行う事業者の責任を前提に規制改革を
    2.家主居住型及びそれに準じる住宅における民泊の規制は抜本的に見直す
    3.早期に行うべき制度運用の改革

 

経済同友会は、同法の施行3年後の見直し条項(附則第4条)を見すえ、先手を打ったのか。

附則 第4条(検討)

  • 政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

全部で13頁からなる文書のなかから、気になるところを整理しておこう。

朱書きは筆者の雑感。


もくじ

民泊に係るステークホルダーの全体最適が必要

過剰な規制は民泊の発展を阻害しかねないという指摘。全体最適の必要性と地域に応じた規制のカスタマイズを求めている。

Ⅰ.住宅宿泊事業法の課題――過剰な規制は健全な民泊の発展を阻害

(前略)民泊は、インターネット上で住宅を旅行者等の宿泊に提供する者と、それを利用する者(C to C)とをマッチングする機能により成長してきた。しかし、民泊新法は、共有型経済の特徴である C to C のビジネスに適した設計にはなっていない。このままでは、過剰な規制が事業者の撤退を加速し、民泊の発展を阻害しかねない。(P1)

Ⅱ.民泊に係るステークホルダーの全体最適を実現する規制のデザインを

こうした民泊の魅力や意義を踏まえ、まずは観光庁が民泊に関する規制の大きなデザインを描くべきである。健全な民泊の発展には、民泊に係るステークホルダー(住宅宿泊事業者、管理業者、仲介業者、宿泊者、地域住民、地方自治体、ホテル・旅館業者)の全体最適が必要であり、これを実現すべく規制を設計しなければならない。
また、地方自治体は、観光庁による規制を基本に、民泊の魅力、効果を地域経済の活性化やグローバル化に取り込む戦略性を持ち、地域に応じた規制のカスタマイズを行うべきである。(P2-3)

民泊サービスの年間提供日数(180 日)の規制緩和

「民泊サービスの年間提供日数を画一的に180日に定めるべきではない」という意見。

様々なタイプの民泊施設があるなかで、民泊サービスの年間提供日数を画一的に180日に定めるべきではない

住宅提供者(家主・ホスト)と利用者(ゲスト)との交流という民泊の魅力を最大限提供することが期待できる家主居住型、及び家主不在型でも住宅提供者による実質的管理が能な民泊は、年間提供日数の上限は撤廃すべきである。(P5)

※上限180日規制は、これまでさんざん議論されてきた妥協の産物。定量的な分析データなしに上限撤廃を提言しても、説得力がないのではないか。

地方自治体の条例による規制の上乗せの抑制

自治体の上乗せ規制検討プロセスを公表するよう、国のガイドラインに求めている。

家主居住型、及び家主不在型でも住宅提供者による実質的管理が可能な民泊に関する規制は、基本的には国会が定める法律の範囲内とすべきである。(中略)

上記の民泊に対し地方自治体が条例による区域・期間制限や行為規制を設ける場合、その理由や、法律より厳しい上乗せ規制についての検討プロセスを地方自治体が公表するよう、国はガイドラインに提示すべきである。(P7)

※自治体の上乗せ規制検討プロセスを公表させることを国のガイドラインに追記することが、上乗せ規制の抑止力になるのだろうか。

早期に行うべき制度運用の改革

(1)届出手続きの簡素化、共通化、原則オンライン化

  • 届出に必要な書類を最小限にし、関連する行政手続のオンライン化や行政機関間の情報連携等を通じたワンスオンリーを徹底すべきである。また、各種の行政手続に共通する問題でもあるが、民泊に係る地方自治体の業務や手続きの標準化も必要である。(P8)

※無駄な書類を要求する”お役所仕事”は、民泊に限らない話であろう。

(2)届出番号の真正性を確認するシステムの構築

  • 物件の届出番号の真正性を確認できるシステムを構築し、違法物件の仲介サイトへの掲載防止や、物件に関する地域住民からの苦情・問合せへの対応などにおいて、地方自治体と住宅宿泊仲介業者の連携を強化していくべきである。(P8)

※海外ではAirbnbと自治体との連携強化は進んでいる。たとえば、Airbnbが1年半前にサンフランシスコ市と和解した内容はこうだ。
部屋のオーナーがAirbnbのウェブページ上で市への登録ができるような簡素な仕組みを導入。毎月、貸し出し物件の一覧を市に提出し、市側が登録の有無をチェックできるようにする。詳しくは、「Airbnb、サンフランシスコ市と和解」参照。

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