免震・制振データ改ざん事件は、KYBの業績にどのくらいの影響を与えるのか?
KYB社の決算関係書類をひも解いてみた。
- 全セグメント利益(日本基準の営業利益)200億円を突破
- 免制振事業は、特装システム等の「等」に含まれている
- セグメント利益10億円に満たない免制振事業がKYBを揺さぶる…
- 【追記】KYB中間決算、ダンパー交換費用144億円
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全セグメント利益(日本基準の営業利益)200億円を突破
「15年に免震偽装が発覚した東洋ゴム工業では全国で154棟に出荷。いまだ作業完了は全体の6割にとどまるが、15年12月期からの特別損失は累計で1400億円を超える」(日経新聞18年 10月20日)。
KYBの改ざん件数は東洋ゴムの6.4倍(=986÷154)。内容が違うので単純に比較はできないが、KYBの業績に与える影響は小さくなさそうだ。
KYBが過去に公表している「通期 決算説明会資料」をひも解き、連結決算(国際会計基準)のセグメント利益(日本基準の営業利益に相当)の推移を可視化してみた。ここ数年セグメント利益は拡大傾向にあり17年度は200億円を突破(次図)。
免制振事業は、特装システム等の「等」に含まれている
KYB社の事業は次の3つのセグメントに大別されている。
- AC事業:オートモーティブ・コンポーネンツ事業
- HC事業:ハイドロリック・コンポーネンツ事業
- 特装システム等:特装車両、航空機器、システム製品および電子機器等
免制振事業は、「その他(特装システム等)」の「等」に含まれている(次図)。
KYB「2017年度決算説明会」P26より
セグメント利益10億円に満たない免制振事業がKYBを揺さぶる…
免制振装置事業は、全セグメント利益216億円のうち、10億円しかない「特装システム等」のさらにその一部の事業なのである(17年度)。
不正の疑いのある装置の交換は最短でも20年9月までかかるとされている。年間10億円に満たない免制振装置事業の特別損失が東洋ゴムの1400億円を大きく超えるようだと、年間のセグメント利益200億円のKYBの業績に与えるインパクトはかなりのものになりそうだ。
セグメント利益が10億円に満たない免制振事業がKYBの本体を大きく揺さぶる……。
【追記】KYB中間決算、ダンパー交換費用144億円
KYBは11月6日に発表した2018年9月中間決算で、119億円の純損失になったと発表した。交換用ダンパーの生産や設置工事などにかかる費用約144億2500万円を計上し、赤字に転落した。
約144億2500万円は、現時点において収集可能な情報、及びその情報が合理的な事実に基づくものであると判断された免震・制振用オイルダンパーの製作費用並びに免震用オイルダンパーの交換工事に要する費用を見積り、製品保証引当金繰入額。補償費用等は含まれていない。
また、制振用オイルダンパーについては、交換工事に要する費用だけでなく、交換工事の実施に伴って発生する補償等の付随費用についても含まれていない。
今後、対策費用はさらに膨らむ。