国交省が10月16日に公表した資料によれば、KYBが免震・制振ダンパーの性能検査記録データを改ざんしたのは、全国のマンションや病院、事務所、庁舎など調査中を含め986物件。
データが改ざんされた免震マンションはどのくらいあるのか……。
データが改ざんされた免震マンション名は非公
KYBが免震・制振ダンパーの性能検査記録データを改ざんしたのは、全国のマンションや病院、事務所、庁舎など調査中を含め986物件。
KYB社は「不特定多数の方々に関係の深い物件について所有者様、建設会社様をはじめとする関係者の皆様のご了解が得られた物件」につき、10月19 日(金)午後、公表するとしている(10月17日プレスリリース)。
「不特定多数の方々に関係の深い物件」とは、病院や庁舎、文化施設や商業施設のことを指している。だからデータ改ざん件数が最も多かった住宅(265件)の名称は公表されないということだ。
まあ、自分が住んでいるマンションの免震・制振ダンパーに不具合があるなんて、知られたくないだろうから当然と言えば当然の対応だろう。
データが改ざんされた免震マンションの件数(推定)
では、実際のところ、データが改ざんされた免震ダンパーが設置されているマンションはどのくらいあるのだろうか。推定してみよう。
東京カンテイが15年10月29日に、「全国 免震・制震マンションの供給動向報告」を発表している。同報告のなかには、「東京都免震・制震分譲マンション棟数(累計)」グラフが掲載されている。95年~15年までの間に供給された、免震・制振分譲マンションの累計棟数の値が表示されているので、可視化してみた(次図)。
データの改ざんがあった時期は03年1 月~18年9月。東京カンテイのデータでは、03~15年の間に免震マンション117棟(年平均9棟)、制振マンション93棟(7棟)が供給されている。
よって、03年1 月~18年9月の間に都内で供給された免震マンションは140棟(=117棟+9棟×2.5年)。
KYBの免震・制振ダンパーは「国内シェアトップの約45%を占めている(日経新聞 10月17日)」ということと、「7割以上が国土交通省や顧客が指定した基準を満たしていない疑いがある(毎日記事10月18日)」ことから、都内の免震マンション44棟(≒140棟×45%×70%)くらいにデータ改ざんダンパーが設置されているのではないのか。
売主は安全宣言を出せない…
竣工済みの免震マンションの免震ダンパーの交換となると、これから免震ダンパーを製造し、ゼネコンとの調整やマンション住人への事前説明など、時間が掛かりそうだ。
現在販売中の新築の免震マンションであれば、竣工までにデータ改ざんダンパーが取りかえられれば、何事もかなったように済ますことができるが、KBYの製造能力から、免震・制振ダンパーの交換が完了する時期は最短でも2020年9月と報道されている。
ちなみに、都内でLIFULL HOME'Sに登録されている新築マンション(新古マンションを含む)は439件。うち免震マンションは次の15件(10月19日現在)。
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現在販売中の新築免震マンションに、KBY社製の免震ダンパーが使われているのかどうか、売主には「速やかに安全宣言を出してほしい」という声がある。でも、ヘタに安全宣言を出してしまうと、同じ売主から安全宣言が出なかった免震マンションは早くても2020年までデータ改ざん物件であり続けることが世間に知れてしまう。そうなると資産価値への影響が免れないので、軽々に安全宣言など出せない……。