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羽田新ルート|品川区長選挙シミュレーション

今月末の投開票日を迎える品川区長選挙をきっかけに、羽田新ルート問題が世間に周知されることを期待しているのだが、近畿四国を直撃した台風21号北海道胆振東部地震といった大災害が続いて、選挙報道が全く流れてこない。

品川区長選挙で羽田新ルート問題が争点になれば、自公支持にあぐらをかいて4選目を目指している現職浜野健氏に赤信号が点滅する可能性は否定できない。そのあたりの状況をシミュレーションしてみた。


もくじ

浜野氏の過去3回の選挙結果を可視化

まず、現職浜野氏の過去3回の選挙結果を可視化(次図)。

1期目の選挙こそ、5人の候補者が乱立したので浜野氏の得票率(=得票数÷投票総数)、絶対得票率(=得票数÷有権者数)ともに低いものの、2期目以降は得票率が7割を超えている。

2期目以降、投票率が低下し、絶対得票率が2割程度にとどまっているのは、対立候補に共産党推薦の1名しか立っていなかったからなのではないか。

浜野氏の得票数等(1期~3期選挙結果)

羽田新ルート周辺の有権者数を推定する

次に、羽田新ルート周辺の有権者数を推定する。

結論を先にいえば、羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は約10万人という推定結果となった。

以下、10万人を推定した手順を記しているので、時間がない方は次の見出し「羽田新ルートの影響を受ける町丁目(37か所)」まで読み飛ばしても構わない。

 

品川区民の約3割(12万人)が羽田新ルートによる騒音などの影響を受けることについては、先日このブログで紹介した。

品川区の人口のメッシュデータに羽田新ルートを重ねた図
羽田新ルート|品川区民3割が騒音の影響」より
※ピンク色のエリアは、新飛行ルート直下から水平距離で500mの範囲を示している。

 

「品川区民の約3割(12万人)」という数字は、15年10月1日時点の国勢調査のメッシュ・データ(250mメッシュ)がもとになっている。

では、今月末の区長選挙時点での、有権者数のうち何人くらいが羽田新ルートの影響を受けるのか? 

15年国勢調査のメッシュデータには、総人口のほか、「20歳以上人口総数」と「外国人人口総数」も公開されている。ただ、残念ながら18歳以上の人口総数までは分からない。

そこでまず、「20歳以上人口総数」から「外国人人口総数」を差し引いたデータを「有権者数」として、羽田新ルート500m範囲のメッシュデータを集計した(次表)。

羽田新ルート500m範囲の品川区有権者数(推定)

羽田新ルート500m範囲には、2015年の国勢調査時点で品川区全有権者数の約3割(9.5万人)が住んでいることが確認できた。

では、羽田新ルート500m範囲には現時点では、何人くらい住んでいるのか?

2015年の国勢調査時点9.5万人をベースに、その後の人口増と選挙権が18歳まで拡大されたぶんを補正してみよう。

補正に用いたのは、品川区HPで公開されている次の最新データ。

最新データで補正した結果、羽田新ルート500m範囲の現在の有権者数は約10万人となった。その推定根拠は次のとおり。

【羽田新ルート500m範囲の有権者10万人の推定根拠】

現在の羽田新ルート500m範囲の有権者数=2015年の羽田新ルート500m範囲の有権者数×人口割増(18年8月1日/15年10月1日)×18歳割増(選挙権拡大ぶん)

9.5万人×1.015×1.015=9.8万人⇒10万人

  •  人口割増:1.015=392,598人÷ 386,855人
  • 18歳割増:1.5%=5,024人(18年8月1日18~19歳)÷340,585人(同18歳以上)

羽田新ルートの影響を受ける町丁目(37か所)

羽田新ルート周辺の有権者が住んでいる地区は具体的にどこなのか?

品川区の町丁目レベルの行政境界マップに羽田新ルートを重ねたのが次図。 

羽田新ルートの影響を受ける町丁目
※図中の小さな文字は町丁目名を示している。
クリックすると 拡大版(PDF349KB)が開く


上図をもとに、「羽田新ルートが通過する地区」と、通過しないけれども「羽田新ルート直下から水平距離500m範囲にかかる地区」に分けて整理した地区名(合計37か所)を以下に示す。

羽田新ルートが通過する地区

  • 【A滑走路到着ルート(16地区)】
    大崎2丁目、大崎3丁目、大崎5丁目、勝島1丁目、勝島2丁目、上大崎2丁目、上大崎3丁目、西五反田1丁目、西五反田2丁目、西品川1丁目、西品川3丁目、東大井2丁目、東大井3丁目、東大井5丁目、東五反田5丁目、広町2丁目

  • 【C滑走路到着ルート(3地区)】
    東品川2丁目、八潮1丁目、八潮2丁目

羽田新ルート直下から水平距離500m範囲にかかる地区

  • 【A滑走路到着ルート(16地区)】
    大井1丁目、大崎1丁目、大崎4丁目、上大崎1丁目、上大崎4丁目、西五反田3丁目、西品川2丁目、東大井1丁目、東大井4丁目、東大井6丁目、東五反田1丁目、東五反田2丁目、広町1丁目、南品川5丁目、南品川6丁目、八潮4丁目

  • 【C滑走路到着ルート(2地区)】
    東品川3丁目、東品川5丁目

羽田新ルート周辺の有権者の投票行動の影響力 

現在の羽田新ルート周辺の有権者数は10万人と推定した。

次に、区長選挙の当選ラインを推定する。

筆者が推定した区長選挙の当選ラインは6.5万票

その根拠は以下のとおり。

【区長選挙当選ライン6.5万票の推定根拠】

当選ライン=過去2回(10年・14年)の得票数の平均値×人口割増(18年8月1日/14年10月1日)×18歳割増(選挙権拡大)

58,847人×1.056×1.015=63,075人⇒6.5万人

  • 過去2回(10年・14年)の得票数の平均値:58,847人=(66,315人+51,378人)÷2
  • 人口割増:1.056=392,598人÷ 371,907人
  • 18歳割増:1.5%=5,024人(18年8月1日18~19歳)÷340,585人(同18歳以上)

 

当選ラインを6.5万票と想定した場合に、羽田新ルートの「撤回」を掲げている野党統一候補(佐藤裕彦氏)が当選するには、ルート周辺に居住している有権者10万人の投票率を上げ、多くの反対票を投じてもらうことが鍵となる。

たとえば、ルート周辺に居住している有権者10万人の8割が投票所に足を運び、その8割が反対票(新ルート撤回)を投じれば、それだけで6.4万票(=10万人×投票率80%×反対票80%)になる。ルート周辺以外で1,000票が得られれば当選ラインを突破できる(次図)。

もし9割が投票所に足を運び、その8割が反対票を投じれば、それだけで7.2万票(=10万人×投票率90%×反対票80%)になるので当確できる。

図 2018品川区長選挙シミュレーション

羽田新ルート周辺の有権者10万人に投票所まで足を運んでもらうためには、やみくもに「羽田新ルート撤回」を叫ぶのではなく――

羽田新ルートの影響を受ける地区(37か所)を重点的に攻めるとか、「みなとの空を守る会」が港区の新ルート下の住民を対象に配布している「アンケート」(下図)にならうとか、的を絞った戦略が求められる。

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航路下住民1万人アンケート計画 | みなとの空を守る会

 

※本試算には慎重を期しているが、データの精度について保証するものではない。これらの情報をあなたが利用することによって生ずるいかなる損害に対しても一切責任を負うものではない。念のため。

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