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羽田新飛行ルート問題|都議会での議論を振り返る

都議選で羽田新飛行ルートによる騒音問題が争点になることはなかった。多くの都民はそんな問題が存在していることさえ知らないのかもしれない。

でも、都民ファーストの会の基本政策PDF:1.9MB)には、374項目目に「空港を機能強化し、国際線発着枠を約4万回拡大」としっかり記されている。

都議会ではこれまで、どのような議論がなされてきたのか?

過去1年間の都議会議事録をひも解くと、盛んに議論されていたのは3回。

以下、古い順に確認してみよう。


もくじ

問題解決の主体は国にある、というのが都の基本スタンス

2016年年第2回定例会(6月8日)

2016年6月に開催された第2回定例会で、西崎光子委員 (生活者ネット)の質疑は342文字と少ない。

舛添知事の海外出張費用などへの非難にかなりの時間が費やされているのが時代を感じさせる。

西崎光子委員 (生活者ネット)

(前略)最後に、羽田空港の飛行経路の変更についてです。

 提案されている新たな経路は、港、渋谷、品川区など都心の上空を、スカイツリーよりも低い610メートル以下の高度で飛行するルートです。氷やゴムの破片が航空機から落下する事故は、着陸前に車輪を出すいわゆる足出し時に多発するため、成田空港では、海上で行うよう国交省が勧告を出していますが、新ルートでは、住宅密集地の上空での足出しが避けられません。騒音や、民家の頭上で事故が起きる危険性などに対する懸念からも、計画見直しを求める声が各地から上がっているのは当然といえます。
 このような都民の声を都としてもしっかりと受けとめ、騒音や落下物への不安を解消するとともに、丁寧な説明を行うよう国に働きかけるべきと考えますが、都の所見を伺い、質問を終わります。

 

都市整備局長の答弁は、「引き続き国に対して、地元への丁寧な説明と、騒音の影響を軽減する方策や、徹底した安全管理に取り組むこと等を要望」するとしている。

都市整備局長(邊見隆氏)

羽田空港の飛行経路の変更についてでございます。
 2020年大会やその後の航空需要に応え、国際便の就航をふやしていくためにも、羽田空港の容量拡大は必要不可欠でございます。
 国は昨年度、都内16カ所で延べ70日間にわたり説明会を開催し、住民からは騒音や落下物への懸念も含め、さまざまな意見や要望がございました。
 都は、こうした状況なども踏まえ、引き続き国に対して、地元への丁寧な説明と、騒音の影響を軽減する方策や、徹底した安全管理に取り組むこと等を要望してまいります。
 今後とも、都民の理解が深まるよう、積極的に取り組み、国際的な拠点空港としての羽田空港のさらなる機能強化を図ってまいります。

羽田新飛行ルート問題を解決すべき主体は国であるというのが、都だけではなく、野党議員(生活者ネット)も含めた共通認識となっている。

国に対して、騒音軽減・安全管理に取り組むことを要請

2016年 都市整備委員会(11月8日)

2016年11月に開催された都市整備委員会で、西沢けいた委員(民進党)の質疑は13回(合計6,437文字)に及ぶ。
12回目に、都として国に「今後どのように意見を伝えていくのか」と質問。

西沢けいた委員(民進党)

12回目の質疑

(前略)羽田空港のこの新ルートについて質疑をしてまいりましたが、地元の自治体として国へ意見を伝えるべきだと。これまでの意見というものも、資料を読むと、余り私が読める、情報公開されているものはそんなに多くないんですね。日々要請をするとか、区も働きかけるという答弁をたくさんいただいていますけれども、じゃどれだけ働きかけているんだというようなことがちょっと見えづらいと思います。見えている部分は本当に一部なんだろうと思うんですね。
 小池知事になって情報公開が叫ばれている中で、きょういただいたたくさんの答弁、国に働きかける、国に要請をしていくというようなことですが、これまでどのように意見を伝えてきたのかというのはもちろんですけれども、今後どのように意見を伝えていくのかお伺いいたします。

 

答弁者は都市整備局理事(航空政策・交通基盤整備・交通政策担当)。

今後とも都は、国に対して丁寧な説明と対策を要請していくとしている。

都市整備局理事(佐藤伸朗氏)

国が提案した羽田空港の飛行ルート変更につきまして、都は、国と関係都県市等との協議会に参加し、国に対して、住民への丁寧な説明と騒音の影響を軽減する方策の検討や徹底した安全管理に取り組むことを要請してまいりました。(中略)
今後とも、都は、国に対しまして、あらゆる機会を捉えまして、引き続き地元への丁寧な情報提供と騒音、安全対策の取り組みを求めた上で、2020年までに必要な施設整備や環境対策を着実に推進していくことを要請してまいります。

都市整備局理事の「国に対しまして、・・・、引き続き地元への丁寧な情報提供と騒音、安全対策の取り組みを求めた上で、・・・要請」という文言は、5か月前に開催された定例会の都市整備局長の答弁がシッカリ継承されている。

小池知事「地域への騒音影響の軽減を引き続き国に求め」

2017年 第1回定例会(3月1日)

2017年3月に開催された定例会で、白石たみお委員(共産党)の質疑に対して、小池知事が答えている。
白石たみお委員の羽田新飛行ルート問題(お役所の言い方では「羽田空港の機能強化」という)に係る質問は2,527文字と長い。

知事に対して「新ルートがもたらす地域への騒音影響」を問い、新ルートを白紙撤回するよう求めている。

白石たみお委員(共産党)

(前略)新着陸コースは、午後3時から7時の4時間、新宿、渋谷、港、目黒と降下し、品川上空では、東京タワーよりも低い高度300メーターで飛行し、その回数は1時間に44機、1分20秒間に1機と、山手線の朝のラッシュ時よりも多いのです。
 その騒音は、私の地元品川区で最大80デシベル、地下鉄の車内並みの音です。航空機騒音は数十秒にわたり続くので、夕方の家族の団らんの時間帯に、休む間もなく、地下鉄の車内並みの騒音にさらされることになります。
 騒音は、健康や子供の発達にも影響をもたらします。世界保健機構、WHOは、1日平均で65~70デシベルの騒音は、心筋梗塞などの心疾患を増加させるとしています。騒音が子供の読解力や長期記憶力の低下につながるとの研究もあります。
 これまでの騒音軽減や安全確保への配慮と逆行する事態ですが、知事は、新ルートがもたらす地域への騒音影響などについて、どう考えますか。(中略)

私の地元品川区を初め、目黒区や港区などの区議会で、区長や区の担当者から、国の提案する新ルートについては了承していないとしています。国も第四回の協議会で、新ルートについての関係自治体の合意や了承がなされたようにメディアが報道したことに対し、そういった事実はないと認めています。(中略)

これまで、空港周辺地域の住民や自治体は、航空機がもたらす危険と負担を軽減させるよう、国に対し声を上げてきました。国も海上ルートを最大限に活用するなど、曲がりなりにも軽減策を図ってきました。その積み重ねてきた歴史をほごにする国の新ルート案は、白紙撤回をするよう強く求めておきます。

 

小池都知事の回答は521文字。「騒音影響の軽減を引き続き国に求めてまいる所存」と、あくまでも国側で解決すべき問題であるというのが都の基本スタンス

小池知事

飛行経路の見直しによりまして新たな騒音影響が生じるために、都は、その軽減に取り組むことを国に求めてまいりました。こうした要望も踏まえまして、国は昨年7月に、低騒音機の導入促進、学校や病院などの防音工事助成の拡充などの軽減方策を打ち出しているところでございます。
 都といたしましては、地域への騒音影響の軽減を引き続き国に求めてまいる所存でございます。(以下略)

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