楽天やサイバーエージェントなどインターネットを利用したコンテンツ産業を行う企業群が参加する経済団体である新経済連盟(代表理事三木谷 浩史)は12月8日、「ホームシェアの制度設計に対する考え方」を発表。
「シェアリングエコノミーの健全な発展の観点から」として、ワンペーパーに4つの要望が記されている。
筆者の考察を交えながら、1項目ごとに確認してみた。
- 【日数制限】←閣議決定内容をひっくり返そうというのか?
- 【条例による規制】←住環境保護を目的とした規制に限定すべき
- 【管理者の要件】←投資型民泊から宅建業者を排除
- 【海外事業者への対応】←法令を遵守しないホストへの言及がない
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【日数制限】←閣議決定内容をひっくり返そうというのか?
1 日数制限
- (1)日数制限の導入に断固反対。
- (2)仮に日数制限を導入する場合、事前に届け出た募集可能日以外の募集を認めない制度は、需要に対して柔軟にサービス提供するシェアリングエコノミーの本質を著しく損なうものであり反対。
日経のアドバルーン記事(12月4日)によれば、国土交通・厚生労働両省は「民泊営業、年180日上限」とすることに決めたとされている(既成事実化が進む!?民泊新法「年180日上限、・・・」)。
「民泊営業、年180日上限」は6月2日に「規制改革実施計画」のなかで「民泊サービスにおける規制改革」として既に閣議決定されている。
賃貸業界は、この閣議決定をひっくり返そうとしていたが(ちんたい3団体は、閣議決定「民泊180日以下ルール」をひっくり返せるか?)、現在は「特定簡易宿所」制度の創設に注力している(マンション住民の安全・安心の危機!「特定簡易宿所」制度が創設される?)。
新経済連盟は、この閣議決定内容をひっくり返そうというのか?
【条例による規制】←住環境保護を目的とした規制に限定すべき
2 条例による規制
- (1)地域によってばらばらの規制が定められることはホームシェア普及の重大な妨げとなるため、可能な限り全国統一の基準とすべき。
- (2)仮に条例による制限を認める場合でも、住環境保護を目的とした規制に限定すべき。特に、需給調整や旅館業との住み分けを目的とする規制はホームシェア市場の健全な発展や正常な競争を妨げる統制経済的規制であり認めるべきではない。
例えば、制限日数を条例で引き下げるのは、住環境保護ではなく需給調整等を目的とする規制と考えられるため、認められない(「法律の範囲内」ではない)ことを明確化すべき。
民泊新法の調整が難航している主要な論点は二つ。「民泊営業、年180日上限」と「自治体が独自に条例で営業日数を決められる仕組みをどうするか」という点(臨時国会「民泊新法」提出見送り 二つの論点)。
自治体の多くは、「地域の実情の応じた運用を認める」(自治体の裁量権を認める)ことを民泊新法に求めている(都道府県の「民泊」スタンス(まとめ))。
パリのようにトンデモナイことになってしまうことが気になるところではあるのだが(パリの「民泊」がトンデモナイことになっている)、需給調整や旅館業との住み分けを目的とする規制の是非はともかく、住環境保護を目的とした規制は大いに導入してほしいものだ。
新経済連盟の方々にも、民泊被害のリアルを認識してほしい。
【管理者の要件】←投資型民泊から宅建業者を排除
3 管理者の要件
- シェアリングエコノミーは個人の柔軟な働き方の実現により一億総活躍に資するため、個人を含めた多様な主体がサービスに参入できるようにすべき。
管理者の要件を過度に厳格なもの(例:事業者に限定、特定の業種に限定、実質的に特定の事業者しか参入できなくなる要件を設定)とすることに反対。
「3 管理者の要件」の記載内容では、新経済連盟が何を言いたいのか、よく分からないのではないのか?
平たく言えば、家主不在型(≒投資型)民泊では、住宅提供者は民泊の管理を管理者(≒宅建業者)に委託しなければならいことに対して反対しているのである。
民泊に宅建業者を絡ませることは、賃貸業界にとってはハッピイだが、民泊ホストにとっては儲けが減ることに直結するからだ(民泊の”全面解禁”で潤う賃貸不動産業者、安全・安心が脅かされる住民)。
【海外事業者への対応】←法令を遵守しないホストへの言及がない
4 海外事業者への対応
- 無登録その他法令を遵守しない事業者として公表された事業者に対してホストが物件を掲載することを明確に違法とすべき。
Airbnbだけでなく、中国版Airbnbなど、日本の法律で外資系の民泊仲介サイトを規制することには困難が伴う。
ならばということで、法令を遵守しない事業者(=民泊仲介サイト)に物件を掲載した人(=ホスト)のほうを違法とすべき、というロジックなのであろう。
ただ、法令を遵守しないホストへの言及がない。マンション住人の安全・安心より、「個人の柔軟な働き方の実現」を重視しているからなのか――。