ちんたい議連(会長 石破茂)は11月16日、「民泊に係る決議(案)」を承認した。
トランプ旋風や朴槿恵大統領スキャンダルなど、映像受けし、かつオカミを慮る必要のないニュースの報道で忙しマスコミに代わって、同決議の内容を解説しよう。
マンション住民が知らないところで、トンデモナイ議論が進んでいるのである。
- 1.民泊新法における「営業日は年間180日」
- 2.民泊を管理する事業者は宅建業の登録者
- 3.簡易宿所とする場合は既存の簡易宿所とは「別類型で法制化」
- 4.民泊転用促進助成制度の新設
- 雑感
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ちんたい議連が承認した「民泊に係る決議(案)」は次の4項目。
- 民泊新法における「営業日は年間180日」とする
- 民泊を管理する事業者は「宅建業、旅館業、旅行業、管理業」の登録者とする
- 共同住宅や戸建住宅の空き家(室)を活用して、簡易宿所とする場合は既存の簡易宿所とは「別類型で法制化」すること
- 民泊転用促進助成制度の新設を求める
以下、ちんたい議連の決議内容を項目ごとに解説していこう。
1.民泊新法における「営業日は年間180日」
これまで、ちんたい議連に大きな影響力を持つ、ちんたい3団体(全国賃貸管理ビジネス協会、全国賃貸住宅経営者協会連合会、日本賃貸住宅管理協会)は、6月2日に閣議決定された「民泊180日以下ルール」の撤廃を求めてロビー活動を展開していた(ちんたい3団体は、閣議決定「民泊180日以下ルール」をひっくり返せるか?)。
でも、今回ちんたい議連が承認したのは「少なくとも180日」。ちんたい3団体が求めていた「民泊180日以下ルール」の撤廃とはならなかった。
まあ、旅館・ホテル業界が当初求めていた「年間営業日数30日以下」にもならかったので、ここは痛み分けか――。
1.民泊新法における「営業日は年間180日」とする
少なくとも180日の営業が可能な制度として創設し、この原則を法律に明記することを求める
2.民泊を管理する事業者は宅建業の登録者
自ら宅建業の登録をしていない民泊ホストは、宅建業者を介在させなくては民泊ができなくなるということだ。
これは賃貸業界にとっては、とってもオイシイ話。
でも、同業者が介在したからといって、近隣住民の安全・安心はホントに確保できるのか・・・・・・。
2.民泊を管理する事業者は「宅建業、旅館業、旅行業、管理業」の登録者とする
各業法の免許等を得ている者が担い手となることで、トラブルを未然に防止し利用者と周辺環境の安心安全の確保を担保することができる
3.簡易宿所とする場合は既存の簡易宿所とは「別類型で法制化」
この3項目目がマンション住人にとって、最も影響のある項目。
マンションの住戸を民泊にしたい場合、新たに創設される「特定簡易宿所」で運用が可能になる。
この「特定簡易宿所」は、既定の法制度や手続き等を簡素化されるカタチで旅館業法に組み込まれる。
ポイントは、「条例で上乗せ要件が課せられないよう旅館業法令を改正」するとされている点。
つまり、地域の実態に合わせて、自治体が独自に条例で規制できる仕組み(自治体の裁量権)を奪うことになるのだ。
筆者の調査によれば、多くの自治体が自治体が独自に条例で規制できる仕組みを求める意見書を提出している(都道府県の「民泊」スタンス(まとめ))。
3.共同住宅や戸建住宅の空き家(室)を活用して、簡易宿所とする場合は既存の簡易宿所とは「別類型で法制化」すること
共同住宅や戸建住宅の空き家(室)のー戸(棟)を簡易宿所に転用する場合は、「特定簡易宿所」として旅館業法に新たに定め、既定の法制度や手続き等を簡素化すること
例えば、点在する共同住宅や戸建住宅の空き家(室)を活用して、簡易宿所に転用する場合は、「サテライト民泊(共用フロント設置型)」として旅館業法に新たに定めること
- ※上記は、条例で上乗せ要件が課せられないよう旅館業法令を改正し、適正な措置を講じること
4.民泊転用促進助成制度の新設
住宅ストックを活用型市場への転換を加速するために、「民泊転用促進助成制度」を新設するといえば聞こえはよい。
でも、これって店子が入らない大家さんを救済するための税金のバラマキではないのか――。
4.民泊転用促進助成制度の新設を求める
住宅ストックを活用型市場への転換を加速し、空き家等の有効活用と民泊への転用を促進するために、設備や工事に係る費用に対して「民泊転用促進助成制度」を新設する等の措置を講じること
雑感
ちんたい議連は、地方の条例に左右されない「特定簡易宿所」制度を旅館業法に盛り込もうとしている。
同制度が盛り込まれた旅館業法が改正されると、マンションでは(戸建てもだが)、民泊を容易に始められる可能性が高くなる。
本件については、来年の通常国会で議論されるとされている。
国会議員の先生方には、賃貸業界と旅館・ホテル業界の調整だけでなく、マンション住民のためにも、民泊の実態を把握したうえで、国民の安心・安全が確保されるような調整をお願いしたい。
そのためにも、まずは、「【漫画】民泊被害のリアル!隣戸の民泊にヒドイ目に会った実話」や「京都市議が3つの提案で紹介した、迷惑民泊の深刻な逸話」に目を通していただければ幸甚。
「【漫画】民泊被害のリアル!隣戸の民泊にヒドイ目に会った実話」より