不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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課徴金制度は不動産の「おとり広告」を絶滅できるか?

首都圏不動産公正取引協議会は11月2日、 公取協通信第272号(11月号)」を発行。

第14回通常総会(10月28日、盛岡市のホテルメトロポリタン盛岡ニューウイングで開催)の様子が紹介されている。

おとり広告が話題になっていた。

いわゆる「おとり広告」が非常に増加し、社会問題にもなっている状態でございます。

このような状況を是正するため、各地区協議会は、ポータルサイト運営会社や関係機関等と連携して是正措置を講じているところでございますが、不当な表示は残念ながら一向に後を絶たない状況にあります

(不動産公正取引協議会連合会 会長挨拶より) 

2度目の改正は、優良誤認や有利誤認といった不当表示行為に対する抑止力の強化のために、新たに不当表示を行った事業者に対して経済的な不利益を賦課するというかたちの課徴金制度を設けたもので、課徴金制度は本年4月1日から施行されています。まだ課徴金が課されたという事例は出ていませんけれども、年度内には1件ぐらい出てくるのではないかと考えております。

(消費者庁 表示対策課長補佐挨拶より)


もくじ

昨年度は不動産広告の違反物件数が多かった。全てがおとり広告というわけではないが、379件に達している(次図)。

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「おとり広告」が増加する不動産業界」より

  

違約金課徴収益は年々増加している

首都圏不動産公正取引協議会のホームページに「情報公開」されている文書をひも解くと、違約金課徴収益が年々増加していることが分かる(次図)。

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12年度までは予算書に「0円」としか見込まれていなかったのだが、13年度以降は予算書に見込まれるようになり、遂に16年度は前年度実績レベルの額が見込まれるようになった。

本来であれば、おとり広告などの違法広告については絶滅させることが建前だから、予算の段階で違約金課徴収益を見込むのはヘンなのだが。

予算書段階で違約金課徴収益を見込んでおかないと、予算書の収まりが悪くなってきたのであろうか。

経常収益約1.6億円の約1割を違約金課徴収益が占めている

15年度の「収支報告(決算)」を見ると、経常収益約1.6億円の約1割を違約金課徴収益が占めている(次図)。

「おとり広告」など不当表示の増加は、首都圏不動産公正取引協議会のフトコロを潤しているのか?

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1件当たりの平均違約金課徴収益も年々増えている

ついでに言えば、1件当たりの平均違約金課徴収益(「違約金課徴収益」を「厳重警告・違約金」の件数で割った金額)も年々増えていることが分かる(次図)。

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09年度には1件平均約20万円だった違約金課徴収益が、14年度以降は30万円を超えている。

悪質な違反行為が増えたのであろうか――。

課徴金制度は「おとり広告」を絶滅できるか?

違反行為に対しては、不動産の公正競争規約第27条により、2段階で処分されることになっている。

すなわち、違反行為に対して「50万円以下の違約金」を課す。それでも違反する場合には「500万円以下の違約金を課し、公正取引協議会の構成員である資格を停止し、除名処分」。

ただ、上図(1件当たりの平均違約金課徴収益)を見る限り、500万円の違約金が課せられたことはなさそうだ。

 

今年の4月1日に施行された課徴金制度は、不当表示による「やり得」を認めず、事業者が不当表示を行おうとする動機づけを奪うことを目的として設けられたもの。課徴金額は、対象商品・役務の売上額に3%を乗じた額とされている。

売上額の3%となると、けっこうな抑止効果があるのかもしれない。

 

不当表示防止のための「通報・報奨金制度(仮称)」

首都圏不動産公正取引協議会は、62名に委嘱した「不動産広告収集モニター」から収集・送付された広告を点検し、軽微な違反行為については、不動産事業者に対して文書による改善要請し、是正に努めるとしている(「平成28年度事業計画」P6より)。

こんなアナログなやり方で、おとり広告が絶滅できるのか?

ネット民の力を利用してはどうか?

たとえば、不当表示防止のための「通報・報奨金制度(仮称)」を設け、ネット民から広くおとり広告情報を受け付ける。通報者には報奨金を支払い、その原資は違反者の罰金の一部で充当するとか。

同業者からの密告もあるかも・・・・・・。

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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