大阪市の民泊条例が10月31日に施行されることを伝える毎日新聞の記事。
- 大阪市 民泊条例、来月31日施行(毎日記事)
- 大阪市の民泊条例の中身
- 大阪市内のAirbnb登録件数の状況
- 大阪市の民泊条例は実効性が担保されているのか?
- 大阪市は民泊条例を遵守させる気がない?
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大阪市 民泊条例、来月31日施行(毎日記事)
1月に条例は成立していたが市議会の付帯決議で10月以降に施行することになっていた。9月27日の市会民生保健委員会で異論がなかったことから10月31日に施行することとなった。
大阪市 民泊条例、来月31日施行
大阪市は28日、マンションなどの空き部屋に観光客を泊める「民泊」を認める条例を10月31日に施行し、事業者の認定業務も始めると発表した。市は事業者向けの説明会を来月12日から開催する。
政府の国家戦略特区を活用し、旅館業法の例外としてホテルや旅館以外での宿泊施設の営業を認める。近隣住民への事前説明▽苦情窓口の設置▽6泊7日以上の滞在−−などが要件。(毎日新聞 9月29日)
大阪市の民泊条例の中身
宿泊期間7日以上ルールや立入調査権、賃貸人や管理組合への事前承諾義務、近隣への事前説明義務など、大阪市の民泊条例の内容は、先行して4月1日に施行された大阪府の民泊条例とほぼ同じ。
条例のほか、規則、要綱、審査基準、特定認定の取り消し処分基準が掲載されている(次図)。
「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に係る認定業務等を開始します」より
大阪市の民泊条例施行で、市内のAirbnb登録件数はどう変化していくのか?
まずは実態を確認しておこう。
大阪市内のAirbnb登録件数の状況
大阪市内のAirbnb登録件数(約11,000件)は東京23区の登録件数(約1万4,800件)には及ばないものの、区単位でみると大阪市中央区(約3,700件)は新宿区(約3,100件)を抜いて、全国で最も多い(数値はいずれも9月1日現在)。
今年の4月に民泊条例が成立(施行時期は10月以降)したにもかかわらず、同条例の影響を受けることなく、中央区や浪速区では以前として増加し続けている(次図)。
(AirbDatabankデータをもとに筆者作成)
大阪市内のAirbnb登録物件の分布をみると、中央区と浪速区に多いのが一目瞭然であろう(次図)。
(AirLABO地図に追記)
大阪市の民泊条例は実効性が担保されているのか?
いくら立派な条例が施行されたとしても、大田区の民泊条例と同様に罰則規定がなくて、実効性が担保されるのか?
「特定認定の取り消しに係る処分基準」が制定されているとはいえ、そもそも「賃貸人や管理組合への事前承諾義務」や「近隣への事前説明義務」を果たしてまで、民泊施設としての特定認定を申請をしようというホストはどれくらいいるのか?
特定認定を受けていない民泊に対しては、処分基準も意味をなさない。
中央区のなかでも、Airbnbの登録物件が最も集中しているのは島之内エリア(同エリアの南側は飲食店が集中する歓楽街)。
これらのエリアで民泊条例はキチンと遵守されるのか?
「大阪市内でAirbnb物件が最も集中しているエリアはどこか?」より
大阪市は民泊条例を遵守させる気がない?
今年の4月に民泊条例が施行された大田区では、Airbnbの登録件数257件(8月10日現在)に対して、区の認定を受けたのは50室でしかない(大田区のAirbnb物件は区認定物件の5倍)。
Airbnbの登録件数が約1万件もある大阪市で、何件の申請があるのか気になるところである。
大阪市が開催する事業者向け説明会は全6回が予定されている(次図)。
6回の定員の合計は750人。
Airbnb登録件数約1万件に対して、会場で予定している定員は7.5%でしかない。
大田区でさえ、全5回の説明会で予定した定員の合計は1,000人(参加実績は1,013人)であった(次図)。
「外国人滞在施設経営事業について(大田区)」より作成
大阪市は、民泊運営者らに条例を遵守してもらおうという気が最初からないのではないのか、と思ってしまう。