羽田空港の機能強化に係る一連のブログ記事を書くにあたって、いろいろ調べているうちに、次のような気になる実態があぶり出されてきた。
(1)新飛行ルート下の区民に対して、「新飛行ルート問題」が十分に伝わっていない可能性が高いこと、(2)区民の意思とは関係なく国主導で物事がドンドン進められていること
「新飛行ルート問題」は区民に十分伝わっているか?
15年度に関係自治体の住民を対象に複数回にわたって説明会が実施されている。
「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」のうち第4回(16年7月26日開催)の会議で配布された資料「資料1 羽田空港機能強化に係る第3回協議会以降の取組」には、説明会の開催日と開催場所が第1フェーズと第2フェーズに分けて図上に記されている(次図)。
上図の日程を書き出したのが次表。
第1フェーズ(15年7月22日~9月15日、48日間)の来場者数が約6,000名 、第2フェーズ(15年12月11日~16年1月31日、47日間)の来場者数が約5,100名。
来場者の合計が約1万1千名。
しかも、「オープンハウス型」の説明会なのだ(写真)。
「資料1 羽田空港機能強化に係る第3回協議会以降の取組 P4」より
「オープンハウス型」は、国の職員が、来場者に対し、説明パネルや映像資料、パンフレットなどを用いてフェイス・トゥ・フェイスできめ細やかに情報提供できるメリットがあり、欧米先進国では主流となっている(「羽田空港機能強化に関するコミュニケーションのあり方アドバイザリー会議」の各資料参照)。
ただ、日本で主流の「教室型」と異なり、「オープンハウス型」だと、「新宿駅西口広場」や「渋谷ヒカリエ」にふらっと来た人も「来場者」としてカウントすることができる。
これで”来場者”が約1万1千名というのでは、あまりにも少ないのでは。
「地元自治体の合意」を既成事実化?
奈須りえ大田区議会議員によれば、「地元合意は誤報」だという。
あたかも、決まってしまったかのような新飛行ルート(案)地元合意の報道に、ああ、決まってしまったのか、とがっかりなさった方も少なくないと思います。
でも、まだまだ、諦めるには早い。
肝心の地元区、大田区長は合意していません。(以下略)
奈須りえ区議がいう「誤報」とは、たとえば東京新聞の次のような記事を指しているのであろう。
都心上空飛行で地元合意へ 羽田国際線大幅増、20年までに
羽田空港の国際線発着回数を増やすため、東京都心上空を飛行するルートを新たに設定することで、国と地元自治体が近く合意することが23日、関係者への取材で分かった。
都心上空の飛行は、騒音に配慮し避けてきた経緯がある。新ルートの運用時間は限定し、空港周辺で騒音対策を実施することで地元の理解を得て、大幅増便は実現に向けて動きだした。
(東京新聞 7月24日)
「誤報」というよりも、マスメディアが的確に伝えていないということなのではないだろうか。
第4回(16年7月26日開催)の会議で配布された資料「2020年に向けた羽田空港の機能強化方策について」の文書には次のように記されている。
- 1.国及び関係自治体は、羽田空港機能強化の必要性について認識を共有した。
- 2.(省略)
- 3.国は、第1回協議会で羽田空港機能強化方策として提案した、「滑走路処理能力の再検証」及び「滑走路運用・飛行経路の見直し」の運用に際して実施する方策を第4回協議会で提示した。関係自治体は、本方策が、関係自治体からの要望や住民意見等も踏まえ、環境影響等に配慮した方策であると評価した。国は、引き続き、安全管理の徹底に取り組む。
「羽田空港機能強化の必要性について認識を共有した」や「関係自治体は・・・環境影響等に配慮した方策であると評価した」というなんとも微妙な言い回しである。
「合意」という文言を使わずに、関係自治体があたかも合意したかのように連想させる文書で、”地元自治体の合意”が既成事実化されていく・・・・・・。
今後は、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて新飛行経路の運航が可能となるよう、環境影響評価(環境アセスメント)の手続きが進められることになる。
【17/7/31追記】羽田新飛行ルート|環境アセスは実施されない!
「資料1 羽田空港機能強化に係る第3回協議会以降の取組 P2」より