不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


マスコミは「民泊問題」を的確に伝えているか

 宿泊施設不足の改善を錦の御旗に、「民泊」の規制緩和がドンドン進もうとしている。

もくじ

「民泊」を推進する国に対して自治体の反旗、業界団体の利権確保の動き・・・

「民泊サービス」のあり方に関する検討会 」の議論を経て、旅館業法の規定が見直され、この4月から「民泊」が旅館業法の「簡易宿所」に位置づけられた。
今後はさらに「民泊」を拡大するために、「1泊2日からOK」とか、「住宅地での民泊もOK」といった新法制定の動きも聞こえてくる。

また、「民泊は騒音ゴミ出しなどのトラブルが懸念されるので、近隣住民の安全・安心につながるよう適正な管理を有する賃貸住宅管理業者(宅建業者)のノウハウを十分に活用する必要がある」といった「ちんたい3団体」による権益確保の動きまで出てきて、かなり騒がしい状況になっている。

 

民泊を推進する「規制改革会議」に対して、反旗を翻す自治体が出始めている。

台東区は3月29日に「民泊待った!条例」を可決。軽井沢町は3月30日に”民泊NO!”を決意表明。

有識者らは実態をどこまで把握したうえで議論しているのか

このように世間では民泊問題の論議がかまびすしい。

ただ、旅館・ホテル業界の利益確保とシェアリングエコノミーの綱引きは盛んに議論されているが、マンション住人の安全・安心については、あまり議論がされていないように思えてならない。

そもそも民泊サービスのあり方を検討している有識者らは、実態をどこまで把握したうえで議論しているのだろうか。

 

全国のAirbnb登録件数が3万件を突破したことだけでなく、大阪市中央区のAirbnb登録件数は新宿区よりも多いこともご存じだろうか。

f:id:flats:20160409173701p:plain

f:id:flats:20160409173739p:plain
1都2府で全国の4分の3を占める!Airbnb登録件数(4月1日現在)」より

 

あるいは、渋谷区で最もAirbnbの登録物件が集中しているエリアは、ラブホテル街として知られる円山町であることをご存じだろうか。

f:id:flats:20160409174127p:plain
渋谷区Airbnbの集中エリアを可視化してみた」より

 

マスコミは「民泊問題」を正確に伝えているか

テレビでは訪日外国人を一軒家でオモテナシしている日本人ゲストが映し出される。

「日本人の暮らしが間近に見られていい」という外国人のお決まりの感想に沿って番組が進行されていないか。

民泊にはそのような良い面があるのは確かだが、自宅の一部を開放し海外からの旅行者とのコミュニケーションを図ることを意識した「ホームステイ型民泊」の割合はそれほど多くはない。

なぜならば、全国でAibnbの登録件数が最も多い東京23区では、登録されている物件は一軒家よりもマンションのほうがはるかに多いからだ。

以下に具体的な数字(グラフ)で説明しよう。

 

すでに3万件を突破した全国のAirbnb登録物件のうち、1都2府がその4分の3を占めている。東京23区は全国の約4割(次図)。

f:id:flats:20160410055121p:plain
1都2府で全国の4分の3を占める!Airbnb登録件数(4月1日現在)」より

 

都内でAirbnbに登録されている物件の約8割はマンション/アパートだ。一軒家は15%に過ぎない(次図)。

f:id:flats:20160410063503p:plain
AirLABOデータをもとに作成)

 

平成25年住宅・土地統計調査」データによれば、東京23区で「居住世帯のある住宅」は全部で約460万戸。うちマンション(共同住宅)の戸数は約344万世帯で全体の4分の3を占めている(次図)。

f:id:flats:20160410115233p:plain

 

マスコミがより多く報じるべきは、事例の少ない「ホームステイ型民泊」ではなく多数を占める「投資型民泊」の実態のほうではないのか

上述のように、全国でAibnbの登録件数が最も多い東京23区では、登録されている物件は一軒家よりもマンションのほうがはるかに多い。

だからマスコミがより多く報じるべきは、一軒家の「ホームステイ型民泊」ではなく、投資目的で購入あるいは借り上げたマンションを貸し出す「投資型民泊」のほうであろう。

ただ、「投資型民泊」は「ホームステイ型民泊」と違って、秘密裏に営まれいる場合が多いので、マスメディアはその実態をなかなか報じれないのかもしれない。

 

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)・日本旅館協会の主催で3月17日、緊急フォーラム「民泊の真実~今、観光大国フランスで起こっていること~」が東京平河町で開催された。

ところが、元プロ野球選手の清原和博被告が保釈された日と重なったため、マスコミ報道から抜け落ちてしまった。

パリでは民泊の議論をしている間に、民泊が爆発的に広がり、コントロール不能になってしまったという。

パリのように、ホテル従業員の雇用が減少するだけでなく、Airbnbの増加により住居不足が蔓延化し家賃が上昇するといった弊害に加え、犯罪の温床になってしまうことが懸念される。

マスコミは「マンションの資産価値の毀損問題」や「犯罪の温床リスク問題」といった民泊の負の側面を伝えきれていないと思う。

 

あわせて読みたい

(本日、マンション広告なし)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.