3月17日、東京平河町ビルにて全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)・日本旅館協会主催の緊急フォーラム「民泊の真実~今、観光大国フランスで起こっていること~」が開催されたことはあまり知られていない。
元プロ野球選手の清原和博被告が保釈された日と重なったため、マスコミ報道から抜け落ちてしまったからだ。
忙しいマスコミに代わって、同フォーラムの概要をお伝えしよう。
主な情報はプレゼンに使われたPDFも含め、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部のフェイスブックページで公開されている。
参加者は、国会議員、厚生労働省、観光庁、旅館ホテル関係者のほか、30名のマスコミを加え100名超。
フランスから来日したホテル協会2団体UMIHとGNI(国内1、2位)の代表者により「民泊をめぐる不都合な真実〜今観光立国フランスで起こっていること」のプレゼンが行われた。
パリではAirbnbは制御不能なほどに急成長!(UMIHプレゼン)
- UMIHプレゼンテーション(PDF:5.8MB):スライド25枚
パリではコントロールが不可能なほどAirbnbが急成長しているという(次図)。
(スライドP12)
上図は、赤色の棒がAirbnb登録件数、グレーが行政面積を示している。
チョット分かりにくいので、行政面積当たりのAirbnb登録件数を計算し、東京(3月20日現在)も含めてグラフ化してみた(次図)。
たしかにパリはAirbnbが圧倒的に多いことが分かる。
ただ、渋谷、新宿も負けてないぞ。
約3万人の雇用を創出していたホテル・レストラン業界であったが、Airbnbの増加に伴い、2012年から雇用が激減しているという(次図)。
(スライドP18)
Airbnbは”ホテルを所有しない巨大なホテル業者”(GNIプレゼン)
- GNIプレゼンテーション(PDF:3.5MB):スライド38枚
2015年のパリではAirbnbの件数(22万8,000床)がホテルのベッド数(11万床)の約2倍あるという(次図)。
(スライドP7)
Airbnbの株式評価はヒルトンに匹敵するという。
Airbnbは”ホテルを所有しない巨大なホテル業者”という表現が言い得て妙である。
(スライドP11)
Airbnbの増加により、住居不足が蔓延化し、賃貸契約の25%が更新されないとか、家賃が急上昇といった弊害が生じているという。
(スライドP23)
乱行パーティーほか、Airbnbの数々の負の側面が紹介されている。
(スライドP29)
「民泊」に対する日仏4団体による共同声明
第一部のプレゼン、第二部のパネルディスカッションを経て、最後にUMIH、GNI、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、日本旅館協会の4団体にて民泊に関して法整備、取り締まり等を厳しく求める共同声明が採択された。
「”民泊”に対する共同声明」より
共同声明の内容は次のとおりだ。
我々は世界の観光客に安全・安心を提供し、観光の健全かつ持続的な発展を遂げる為に下記の共同声明を採択し、実行を求める。
- 1.“民泊”を含め全ての宿泊施設は行政官庁への申告登録を経て、許認可を得る必要があるとすべきであり、無許可営業並びに脱税行為を厳しく取り締まる必要がある。
- 2.テロの脅威を未然に防ぐ為に、“民泊”を含め全ての宿泊施設は宿泊者の対面確認と記録の保存をすることが必要である。
- 3.“民泊”を営むものは他の宿泊施設と同様に納税、衛生管理、消防の義務を負わなければいけない。また近隣住民に対する告知の義務を負う必要がある。
- 4.“民泊”を仲介するプラットフォーム提供事業者は、“民泊”を含める全ての宿泊施設が正式な許認可を得ているか確認しなければいけない。また、プラットフォーム提供事業者は税務署に対して宿泊施設の所得を開示する義務があり、その他宿泊地の法令を順守する必要がある。
- 5.“民泊”を含む違法な宿泊業者、プラットフォーム提供事業者の罰則を強化することが観光の発展に必要である。
日本では1~3について、一部は実現しそうだ。厚労省が3月15日に公表した「『民泊サービス』のあり方について(中間整理)」にその兆候が見られる。
4、5は、筆者が指摘している民泊の2大問題(マンションの資産価値の毀損問題、犯罪の温床リスク問題:あなたの知らない「民泊」のもう一つの負の側面)を解決するためは最も効果的な提言だ。
すなわち、“民泊”を仲介するプラットフォーム提供事業者に“民泊”を含める全ての宿泊施設が正式な許認可を得ているか否かの確認義務を負わせること。
でも、この提言はあまり現実的ではない(だから4番目、5番目なのか?)。
なぜならば、“民泊”を仲介するプラットフォーム提供事業者は、Airbnbだけでなく、homeawayやCouchsurfing、Flipkeyといった米国生まれのプラットフォームのほか、「住百家」「自在客」「途家」といった中国生まれのプラットフォーム(東京よりも大阪のほうが熱い!中国版Airbnb)もあるからだ。
そもそもこれらプラットフォームの運用主体は日本にないのだから、日本の法律で縛ることは困難であろう。
とはいうものの、今後の全旅連の活動に期待したい。
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