企業が民泊事業をアナウンスした途端、株価が上昇するらしい。
たとえば全国にフランチャイズ事業を展開しているハウスドゥ。
民泊の活用に向けて旅行関連のネット企業との業務提携の検討開始をプレスリリース。株価が4連騰しているという。
ハウスドゥが大幅高、民泊事業の業務提携に向けた検討を開始
ハウスドゥ<3457.T>が大幅高で4連騰となっている。
同社はきょう、訪日外国人(インバウンド)マーケットを意識した民泊の活用に向けてイー・旅ネット・ドット・コム(東京都港区)と業務提携の検討を開始したことを明らかにした。
(株式経済新聞 3月10日)
民泊事業参入をアナウンスすることにより株価が上昇するという「民泊アナウンス効果」はどの程度のものなのか?
先日のブログ記事「不動産業界から「民泊」事業へ参入する企業一覧 」で紹介した不動会社の株価を確認してみた。
Yahoo!ファイナンスに「株価時系列」データが掲載されている。
そこで、各社の15年4月1日~16年3月13日までの「調整後終値」データをグラフ化し、「民泊アナウンス効果」の程度を分析してみよう。
民泊事業に参入する不動産の株価変動
左側縦軸を各社の株価、右側縦軸を日経平均として描いたのが次のグラフ。
各社の株価が異なるし、日経平均の上下に影響されるので、「民泊アナウンス効果」を分析しにくい。
そこで、15年4月1日時点の各社の株価を100として、指数の変動をグラフ化してみた(次図)。
ハウスドゥやアパマンショップホールディングスの指数が大きく上昇している様子がよく分かる。
売上高の多い順に、各社の指数が変動する様子をみてみよう。
大京
大京が特区の大田区で16年春から民泊事業に参入することが報じられたのは1月19日の日経新聞。
大京自身は、なんらプレスリリースしているワケではない。
大京の株価は日経記事が出る前日よりも1%上昇したが、日経平均も1%上昇している。
だから民泊事業参入をアナウンスすることにより株価が上昇するという「民泊アナウンス効果」はあまりなさそうだ。
というか、大京穴吹不動産(大京の完全子会社)が昨年の10月5日、マンションの空室を利用した長期滞在サービスを本格的に事業展開していくと発表しているので(企業による「空室活用ビジネス」の夜明け? )、大京が民泊事業に参入することはすでに株価に織り込み済みなのであろう。
シノケングループ
同社の民泊関連のプレスリリースは次の1回のみ。
- 16年2月17日:民泊事業における業務提携に向けた検討開始のお知らせ
プレスリリースに対して、株価は前日よりも1%上昇(同▲1%)。
「民泊アナウンス効果」はあまり見られない。
シノケングループの民泊関連情報は、同社のプレスリリース以外に、下記のようにマスコミ報道が多いので、「民泊アナウンス効果」はあまりないのであろう。
- 16年3月4日:「民泊」関連事業に参入
- 16年2月3日:シノケングループが民泊対応型マンションを新規開発
- 16年1月21日:民泊需要をにらんだ開発に着手
- 16年1月8日:各事業で民泊に対応 特区内の社有物件も活用
- 15年12月17日:シノケン「民泊参入」 特区基準対応 物件開発や清掃
アパマンショップホールディングス
同社の民泊関連のプレスリリースは次の3回。
- 16年2月12日:「民泊」サービスに向けたQrio Smart Lockの試験導入に関するお知らせ
- 15年12月9日:「民泊」及び「短期・中期」賃貸のサイトオープンに関するお知らせ
- 15年11月17日:「民泊」及び「短期・中期」賃貸への参入に関するお知らせ
初めてのプレスリリース(15年11月17日)に対して、株価は前日よりも7%上昇(同1%)。
2回目のプレスリリース(15年12月9日)に対して、株価は前日よりも9%上昇(同▲1%)。
「民泊アナウンス効果」が大きいように見える。
でも、3回目のプレスリリース(16年2月12日)に対して、株価は前日よりも▲23%と大きく下落(同▲4%)していて、まったく「民泊アナウンス効果」が見られない。
「民泊アナウンス効果」は何度も効かないということなのか――。
日本管理センター
同社の民泊関連のプレスリリースは、いまのところ次の1回だけ。
- 15年12月18日:「民泊サービス」参入に向けて専用サイトを開設
プレスリリースに対して、株価は前日よりも▲1%下降(同▲2%)。
「民泊アナウンス効果」はあまり見られない。
ハウスドゥ
同社の民泊関連のプレスリリースは、いまのところ次の1回だけ。
- 16年3月10日 :民泊事業において業務提携に向けた検討開始のお知らせ
プレスリリースに対して、株価は前日よりも17%上昇(同2%)。
2月4日に発表された中間決算での経常利益が大幅に伸長したことが市場に好感を持たれていたところに、次のプレスリリースが連続したことなどが株価を引き上げているのであろう。
「民泊アナウンス効果」だけではないのだ。
- 3月8日:引越し時の不用品買い取りサービスの開始について
- 3月9日:空部屋・空地・空家の資産活用サービス開始について
- 3月10日:民泊事業において業務提携に向けた検討開始のお知らせ
プロパスト
同社の民泊関連のプレスリリースは、いまのところ次の1回だけ。
- 15年12月16日:株式会社シノケングループと連携したバリューアップ業務の推進について
プレスリリースに対して、株価は前日比べて±0%(同2%)。
「民泊アナウンス効果」は見られない。
AMBITION
同社の民泊関連のプレスリリースは、いまのところ次の1回だけ。
- 16年2月4日:株式会社アドベンチャーと民泊事業において業務提携に向けた検討開始のお知らせ
プレスリリースに対して、株価は前日よりも▲2%下降(同±0%)。
「民泊アナウンス効果」は見られない。
まとめ
- 民泊事業参入をアナウンスすることにより株価が上昇するという「民泊アナウンス効果」は何度も効かない(アパマンショップホールディングスの例)。
- 民泊関連銘柄には、すでに株価に織り込み済みなので、「民泊アナウンス効果」はあまりみられない。
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