不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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「設備の省エネ性」「建物の断熱性」は三つ星が当たり前!「東京都マンション環境性能表示」の相場感

東京都がマンションに関連して創設した制度には、「東京都LCP住宅情報登録・閲覧制度」や「東京都優良マンション登録表示制度」のように、ほとんど機能していないトンデモナイ制度がある。

 

ただ、中には比較的うまくいている制度もある。

そのひとつが「東京都マンション環境性能表示」だ。


もくじ

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マンション選びのために、マンション環境性能表示を有効に利用したい。

「☆の数」は多いに越したことはないが、そのぶん分譲価格が高くなる。

「太陽光発電・太陽熱」が3つ星だと、「環境に優しいですよ」とか「省エネの進んだマンションですよ」とかセールストークになり得るが、コストパフォーマンスはどうなのか? 後々の維持管理が大変になることはないのか? 

あなたが選ぼうとしているマンションの「☆の数」は妥当なのか?
そのための相場観が得られるように、都のホームページに公開されている全143件(3月8日現在)の評価内容を分析してみた。

三つ星評価は分かりやすいのだが・・・

マンション環境性能表示は、「建築物環境計画書制度」の一部として、下記を目的に2005年10月に開始された。

  1. マンションを購入しようとする人に情報を提供し、環境に配慮したマンションを選択しやすいようにする
  2. 環境に配慮したマンションが市場で評価されるしくみをつくる
  3. マンション建築主の自主的な環境配慮の取組を促す

マンション環境性能表示制度の概要 | 東京都環境局

 

三つ星評価というシンプルな手法を用いて、複雑な技術的内容を消費者に分かりやすい形で提示している点は高く評価できる。

でも、表示ラベルの「〇〇年度基準」というのが分かりにくい。

なぜ「年度基準」の違うラベルが混在しているのか?

チラシで見かける「東京都マンション環境性能表示」のラベルは、「2009年度基準」と表示されていたり、「2013年度基準」と表示されていたり。

最近は「2014年度基準」なんて表示も見かける。

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なぜ「年度基準」の違うラベルが混在しているのか?

 

マンション環境性能表示は、「建築物環境計画書」が提出された時期によって表示するラベルが決められているのだ。

「建築物環境計画書」が提出されるのは、マンションの設計時。

たとえば、2013年度に設計されたマンションの表示ラベルは「2013年度基準」。だからこのマンションが完売するまでチラシには「2013年度基準」のラベルが掲載され続けることになる。

一方、2014年度に設計された別のマンションのチラシは「2014年度基準」のラベルを掲載している。

だから2014年度に「2013年度基準」と「2014年度基準」のラベルが掲載されたチラシが目に触れるのだ。

 

これまでに発行された「年度基準」は4種類

これまでに発行された「年度基準」は、次の4種類。( )内は「建築物環境計画書」が提出された時期を示している。

  • 2009年度基準以前2005年10月~2009年12月

  • 2009年度基準(2010年1月~2013年3月)
    延べ床面積5,000m2を超える分譲マンション及び賃貸マンションの新築・増築に表示が義務づけられた(2009年度基準)。
    また、延床面積2,000m2以上のマンションも任意で表示できるようになった。

その後基準の変更(省エネ基準等の変更)に伴い、「2013年度基準」「2014年度基準」ができた。

  • 2013年度基準(2013年4月~2014年3月)
  • 2014年度基準(2014年4月~)

図表にすると、各「年度基準」の発行された期間がバラバラであることがよく分かる。「2013年度基準」が発行れたのは2013年度の1年間だけだ。

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「2009年度基準以前」という表現は、2009年度も含んでしまうので正確は表現ではないが(「2009年度基準より前」と表現すべきだ!)、都の呼称に倣って、以下「2009年度基準以前」と呼ぶことにする。

 

具体的に、各「年度基準」の届出件数を確認してみよう。

表示が義務化され「2009年度基準」以降の件数が急増

都のマンション環境性能表示のページから、市区町村ごとの公表データを閲覧することかできる。

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特にページ左下の「マンション環境性能表示の一覧」(ピンク色破線囲み)をクリックすると、全ての市区町村のデータが「年度基準」の新しい順に表示される(次図)。 

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表示されるのは全部で143件(3月8日現在)。

「年度基準」ごとの件数を年度ごとに集計し、グラフ化してみた(次図)。

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表示が義務化された「2009年度基準」以降、件数が急増していることが分かる。

 

評価項目(3つ星評価)は次の5つ。

「2009年度基準以前」は、「太陽光発電・太陽熱」が無かったので4つ。

  • 建物の断熱性
  • 設備の省エネ性
  • 太陽光発電・太陽熱(←「2009年度基準以前」は無かった)
  • 建物の長寿命化
  • みどり

 

「☆の数」の経年変化

これまでに届け出されたマンション(全143件)は、どの程度「☆の数」を獲得しているのか? 

「2009年度基準以前」(4項目評価)とそれ以外の年度基準(5項目評価)とでは評価項目数が異なるので、物件ごとの「☆の数」の合計(最大で15)を評価項目数で割った値(最大で3)でグラフ化した。

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「年度基準」ごとにみると、年とともに「☆の数」が増加傾向にあることが分かる。

ただ、「年度基準」が変わるごとに「☆の数」が少なくなっている。

 

なぜ、 「年度基準」が変わるごとに「☆の数」が少なくなっているのか?

「年度基準」別に、評価項目ごとの「☆の数」の変化を確認してみよう。

「2009年度基準以前」:「設備の省エネ性」の「☆の数」の伸びが大きい

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「2009年度基準以前」では、「設備の省エネ性」の「☆の数」の伸びが大きい。
「建物の長寿命化」の「☆の数」も伸びてはいるが、2.3個どまり。

「みどり」は概ね2.5個。

 

「2009年度基準」:「太陽光発電・太陽熱」は大きく伸びているが、二つ星どまり

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「2009年度基準」では、「設備の省エネ性」と「建物の断熱性」は三つ星が当たり前の状況となっている。
それらに比べて、「建物の長寿命化」と「みどり」は二つ星強といったところ。
「太陽光発電・太陽熱」は大きく伸びているが、二つ星どまり。このことが「2009年度基準以前」よりも評価項目平均の「☆の数」の少ないことに大きく影響している。

 

「2013年度基準」:「太陽光発電・太陽熱」は1つ星どまり

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「2013年度基準」は、「2009年度基準」同様、「設備の省エネ性」と「建物の断熱性」は三つ星が当たり前の状況となっている。

「太陽光発電・太陽熱」は、二つ星どまりの「2009年度基準」よりもさらに少ない1つ星どまり。このことが「2013年度基準」が他の年度基準と比べて評価項目平均の「☆の数」の少ないことに大きく影響している。

「建物の長寿命化」と「みどり」は概ね2個。

 

「2014年度基準」:「設備の省エネ性」と「建物の断熱性」は三つ星が当たり前の状況

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「2009年度基準」「2013年度基準」では、「設備の省エネ性」と「建物の断熱性」は「☆の数」が最大で2.9個だった。「2014年度基準」では、3.0個。三つ星が当たり前の状況となっている。

逆にいえば、「設備の省エネ性」「建物の断熱性」が三つ星でないマンションは選んではいけないというのが相場感。

年度基準が変わるたびに減少してきた「太陽光発電・太陽熱」の「☆の数」は、「2014年度基準」では1個にも満たない(0.7個)。

「建物の長寿命化」と「みどり」は概ね2個。

まとめ

  • マンション環境性能表示で、「年度基準」の違うラベルが混在しているのは、届出時(≒マンションの設計時)で表示ラベルが異なるため。
  • マンション環境性能表示の届出件数は、義務化された「2009年度基準」以降急増している。
  • 「2009年度基準」以降、「設備の省エネ性」と「建物の断熱性」は三つ星が当たり前の状況となっている。
  • 年度基準が変わるたびに減少してきた「太陽光発電・太陽熱」の「☆の数」は、「2014年度基準」では1個にも満たない(0.7個)。
  • 「建物の長寿命化」と「みどり」は概ね2個。

 

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