不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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答申案は問題を先送り?超高層マンション施策や外国人によるマンション購入問題

東京都都市整備局が都心の優良マンションの大暴落を招く「戦犯」になる、という現代ビジネス(講談社)のネット記事。


もくじ

東京都住宅政策審議会が暴露した「真の2020年問題」

まずは、現代ビジネス(講談社)のネット記事を抜粋しておこう。

審議会が暴露した「真の2020年問題」

(略)きっかけは約1年前。都市整備局が中心となって不動産のプロたちを一堂に結集して、「マンションの2020年問題」について話し合う審議会を始めたことにある。

審議会の正式名称は、東京都住宅政策審議会

昨年7月にスタートし、去る9月3日に1年間の議論を答申にまとめたのだが、この答申が業界に大きな波紋を広げているのだ。

  • 空き住戸の増加や管理組合の機能低下等によって管理不全に陥り、スラム化を引き起こす
  • 一たびマンションがスラム化すれば、周辺市街地や生活環境における、治安や景観、衛生面での悪化を招き、地域社会における深刻な問題へと発展する

答申にはマンション危機に警鐘を鳴らす言葉がズラリと並ぶ。(略)

都心の優良物件も大暴落! マンション神話を崩壊させる「2020年問題」は、本当だった 現代ビジネス|講談社 10月20日

 

次に、現代ビジネス(講談社)のネット記事で、都市整備局が「戦犯」扱いされた答申文書「東京におけるマンション施策の新たな展開について-東京都住宅政策審議会 答申-」を確認してみよう。

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不動産業界にとってショッキングな答申案の内容

答申(PDF1.18MB)は5つの章から構成されていて、参考資料も含めると全部で49ページ。

  • Ⅰ 「世界一の都市・東京」にふさわしい安全で良質なマンションストックの形成を目指して
  • Ⅱ マンションの管理・再生をめぐる状況
  • Ⅲ 今後のマンション施策推進に当たっての基本的な考え方
  • Ⅳ 具体的な施策
  • Ⅴ 提言の実現に向けて
  • 参考資料

 

マンションのスラム化の件は、答申書の2ページに記載されている(次図)。

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審議会の答申文書とはいえ、マンションのスラム化の可能性が公的文書で言及されたことは、不動産業界にとってショッキングなことであったということなのであろう。

 

超高層マンション施策や外国人によるマンション購入問題を先送りする答申案

この答申に対しては、このブログでも過去に2回記事を書いた。

 

特に7月15日の記事では、この答申に掲げられている「具体的な施策」には次の3つの項目が欠けていることを指摘しておいた。 

 

8月24日に開催された「第3回 東京都住宅政策審議会マンション部会」では、資料2として、「東京都住宅政策審議会「答申素案」パブリックコメントに寄せられた主な意見と審議会の見解・対応(案)」(PDF:511KB)が示されている。

この見解・対応(案)を読んでも、筆者の上記3つの指摘に対して、納得感が得られるものにはなっていない。

 

答申素案では超高層マンション施策について触れていないことについて

将来的な超高層マンションの建設・管理のあり方や施策の方向性については、人口減少社会における住宅供給や都市づくりのあり方などとも密接に関連することから、本審議会における住宅政策全般に係る議論等を踏まえて検討する必要があると考えます

これでは回答になっていないのでは。

 

合意形成が困難な超高層マンションの建て替え問題について

超高層マンションの建替えについては、今後の検討課題であると認識しています。

超高層マンションの諸問題については、先送り。

 

外国人によるマンション購入が増えていることに対して

賃貸化の進行とその影響については、答申素案でも指摘していますが、マンションにおける外国人の区分所有者や居住者の増加については、具体的なデータがなく実態が把握できていないため、答申素案には記載していません。今後の検討課題とさせていただきます。

外国人の”爆買い”についても、問題の先送りですな。

 

人口減少によりマンション空き住戸の増加やスラム化を生じないよう、マンション戸数の減数化を図るべきとする意見に対して

ご指摘の課題は、マンションだけでなく、住宅政策全体で検討すべきものと考えます。

これも回答になっていないのでは。

 

答申案のなかで、マンションのスラム化問題に触れた勇気は称賛に値するものの、パブコメ意見に対する見解案は腰砕けの感が否めない。

 

マンションの実需用からかけ離れ(いま、マンションを買うべきか?)、タワーマンションの購入による節税対策に規制が入るのではないかと言われている状況(そろそろやばい?タワーマンション節税 )において発生したマンション施工データ偽装事件「横浜市のマンション傾斜問題」 7人のプレーヤー)。

 

この事件は、マンションバブルの崩壊の引き金になるのか――。

(本日、マンション広告なし)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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