最近、都内のホテルは予約が取りにくく、宿泊料金も高くなっているという話をよく聞く。
実際どうなのか?
宿泊施設の稼働率や宿泊料金を調べてみた。
- 都内のホテルは概ね8割以上の稼働率を維持
- ビジネスホテルは訪日外国人の増加ペースに追いついているか
- 都内のビジネスホテルは年々稼働率が上昇
- 宿泊料金は確かに上昇している
- ホテルの宿泊料金は2年で約2千円上昇(全国)
- Airbnbは宿泊施設不足を補うことができるか
都内のホテルは概ね8割以上の稼働率を維持
観光庁が毎月実施している「宿泊旅行統計調査」に、第8表として都道府県別に宿泊施設タイプ別の客室稼働率が掲載されている。そこで東京都のデータをグラフ化してみた。
ビジネスホテル、シティホテルとも概ね8割以上の高稼働率を維持している様子がよく分かる。
旅館はこの1年ほどの間に稼働率が上昇しているのが興味深い。
ホテルの予約が取れなかったビジネスパーソンが旅館に流れているのか・・・・・・。
ビジネスホテルやシティホテルのキャパシティが足りないのであれば、もっと旅館の稼働率を上げればいいではないか、という思いが湧いてくる。
でも、残念ながら旅館の稼働率を上げたくらいでは、宿泊施設不足は改善されなことは次を読めば理解できる。
ビジネスホテルは訪日外国人の増加ペースに追いついているか
観光庁が公表している同じ資料の第7表に掲載されている宿泊施設タイプ別の客室数をグラフ化したのが次図。
稼働率が低い旅館の客室数は、ビジネスホテルやシティホテルの客室数と比べると一桁少ない。
だから、どんなに旅館の稼働率を上げても、ホテルの客室数不足を劇的に改善することはできないのだ。
ビジネスホテルの客室数は若干増加傾向にあるが、この程度で訪日外国人の増加ペース(次図)に追いつけるのか――。
都内のビジネスホテルは年々稼働率が上昇
上に示した「客室数の推移(東京都)」の図に用いたビジネスホテルの稼働率のデータを年次別にグラフ化に描き直してみた。
季節にかかわらず、年々稼働率が上昇していることがよく分かる。
では、宿泊料金のほうはどうか?
宿泊料金は確かに上昇している
総務省統計局が毎月公表している「小売物価統計調査」には、「全国統一価格品目の価格」として「宿泊料」データも掲載されている。
官営の宿泊施設が調査対象から外れた2012年1月以降のデータをグラフ化してみた。
宿泊料金が上昇傾向にあることが見て取れる。
特にこの7月、8月は大幅に上昇しているぞ!
なお、宿泊料調査は、全国の99市町村の約320の調査旅館・ホテルが対象(PDF:436KB)。残念ながら都内だけを抽出したデータはない。
ホテルの宿泊料金は2年で約2千円上昇(全国)
上図のうち、「1泊朝食、平日(洋室)」のデータを取り出して、年次別にグラフ化してみた。
季節にかかわらず、年々宿泊料金が上昇していることがよく分かる。
もう少し具体的に言えば、ここ2年ほどで概ね2千円の上昇といったところ。
ただし、この上昇価格2千円は、全国99市町村にある宿泊者数の多い約320の調査旅館・ホテルを対象に、宿泊者数で重みづけした平均価格。都内の価格ではい。念のため。
以上により、宿泊施設の稼働率(都内)と宿泊料金(全国)の上昇傾向を定量的に把握することができた。
では、Airbnbはこの宿泊施設不足を補うことができるのか?
Airbnbは宿泊施設不足を補うことができるか
筆者の最新調査により、9月1日現在の都内のAirbnb登録件数は6,642件であることが分かっている(Airbnb登録物件数、新宿区が渋谷区に迫っている)。
「Airbnb登録物件数、新宿区が渋谷区に迫っている」より
都内のAirbnb登録件数は6,642件は、都内のビジネスホテルの2,005,770 室(6月)の0.3%でしかない。
国家戦略特別区域法の施行令第12条第2号で「7~10 日までの範囲において」条例で定めることができるとされているので、この法律が厳格に適用されると、特区(※1)ではAirbnbは7日未満の部屋の貸し出しができなくなってしまう(もちろん非特区ではAirbnb部屋貸しそのものができない)。
そうなると、事実上、都内でのAirbnbによって宿泊施設不足を補うことはほとんど期待できなくなるのではないだろうか。
※1:具体的に特区として設定されているエリアについは、「民泊条例を制定できるエリアを可視化してみた」参照。
とはいえ、この「7日未満の部屋貸し禁止ルール」が厳格に適用できるはずもなく、深刻な事件・事故でも発生ない限り、都内ではAirbnbの貸し出しの黙認状態が続くであろう。
行政の黙認状態が続き、Airbnb登録物件数が増加し続ければ、Airbnbは宿泊施設不足にある程度対応できるのかもしれない。
(本日、マンション広告なし)