不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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免震偽装事件 3つの疑問

※KYB免震・制振データ改ざん記事は、「KYB免震・制振データ改ざん|交換・補償費用は?」参照。

湾岸エリア(豊洲)に建つ大規模超高層マンション。

物件概要

【予告広告】有楽町駅直通7分、駅徒歩5分。総戸数693戸、22階建。販売戸数/未定、2LDK(56.37m2)~4LDK(88.47m2)。予定販売価格4,900万円台~10,900万円台、予定最多価格帯6,900万円台。平成29年1月下旬竣工(本チラシ掲載日の1年8カ月後)。

  • 2015年1月10日(土)・4月3日(金)・4月10日(金)の物件と同じ。

 

新聞全紙大のチラシ裏面に、免震構造をPRする文言。

安心を支える「免震構造」を採用。

地震による建物への被害を抑える免震構造を採用。

「積層ゴム支承」などの3種類の「支承材」と、建物の揺れを抑える「オイルダンパー」をバランス良く組み合わせ、大地震への備えをはじめ、一般の免震構造では効果を出しにくい中小地震等による揺れも抑制します。

日常の不安感まで軽減することを配慮した構造です。

東洋ゴム工業の免震ゴム偽装事件で、免震そのものが揺れている(3分で分かる、東洋ゴム工業の免震ゴム偽装問題まとめ)ので、このチラシを見た多くの人は、「この免震装置は、問題ないのかな?」と一瞬でも思うに違いない。

ところが、このチラシには「問題の免震ゴムは使っていないので、問題ありません」といった趣旨のな説明がどこにも記されていない。

 

ただ、感の良い人ならば、このマンションはこれから建設するので、問題の東洋ゴムの製品が決して使われることがないことは直ぐに気が付くであろう。

 

さて、免震偽装事件は、その後どのように展開しているのか?


もくじ

免震偽装事件のその後

最新の免震材料に関する第三者委員会(第2回 平成27年4月27日開催)の資料によれば、主な点は次の通りだ。

  • 154棟中、55棟「所要の性能あり」、99棟「構造安全検証が必要」
  • 他の26社に対する積層ゴム支承に関する実態調査の結果26社中26社から、積層ゴム支承に係る全ての認定について認定不適合及び認定不正取得がないとの回答があった

ということで、東洋ゴム工業以外の製品については問題ないので(ただし自己申告!)、今後は99棟の構造安全検証に関心が移ることになっている。

 

また、最新の不正免震材料を用いた建築物の安全対策に関する省内連絡会議(第5回 平成27年4月21日開催)の資料によれば、「経緯・原因の究明、再発防止策について」は、5月上旬を目途に公表される予定となっている(もうすぐだ!)。

5月8日衆院国土交通委員会に山本卓司東洋ゴム工業社長らが参考人として招致された放送をご覧になった方もおられるだろう。

 

以上のように免震偽装事件は幕引きに向かいつつあるのだが、耐震偽装事件のときと比べて、疑問に感じる点が3つある

  • なぜ、免震偽装事件では、誰も罰せられないのか?
  • なぜ、免震偽装マンションの名前が公表されていないのか?
  • なぜ、マスコミによる追及はないのか?

これら3つの疑問について、もう少し詳しく述べる。

なぜ、免震偽装事件では、誰も罰せられないのか?

耐震偽装事件では、関係者は次の通り厳しく罰せられている。

  • A元建築士(懲役5年の実刑判決)
  • 木村建設元社長(懲役3年、執行猶予5年)
  • 木村建設元東京支店長(執行猶予3年)
  • イーホームズ社長(懲役1年6ヶ月、執行猶予3年)
  • ヒューザー元社長(懲役3年、執行猶予5年)

個人設計事務所やマイナー企業は罰せられるが、大企業の場合には罰せられないということなのか――。

 

なぜ、免震偽装マンションの名前が公表されないのか?

耐震偽装事件では、事件が発覚して1カ月後には、偽装物件として57件のマンション名が公表(PDF)されている。

耐震偽装の57件に対して、免震偽装のほうはマンションだけで74件。耐震偽装のときよりも件数は多い。

耐震偽装でマンション名を公表したときのドタバタを避けたいということなのか――

 

なぜ、マスコミによる追及はないのか?

マスコミが耐震偽装事件を盛んに取り上げたのは、プレイヤーが個人設計事務所やマイナー企業であったことや、それぞれのプレイヤーがマスコミ受けしそうなキャラクター(ズラをつけて容姿まで偽装していた建築士とか)であったことが理由のひとつとして考えられる。

 

一方、免震偽装のほうは、直接的には東洋ゴム工業の不祥事。東証1部上場、資本金304億円の大企業だ。

東洋ゴム工業の関係者を追及してもいいようなものだが、大企業(≒マスコミのスポンサー)だから、追求しにくいのか?

あるいは同社の製品を使っているのがマスコミの大口スポンサーである不動産会社だから、記事の取扱いに慎重になっているのか――。

(本日、マンション広告3枚)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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