国土交通省の有識者委員会によれば、東洋ゴム工業以外には同種の装置(積層ゴム支承)で偽装しているメーカーはなかったようだ。
東洋ゴム工業(大阪市)の免震装置のゴムの性能を示すデータの改ざん問題で、原因究明などのための国土交通省の有識者委員会は27日、東洋ゴムと同種の装置で国の認定を受けた26社について、認定の不正取得や不適合品の出荷は確認されなかったと明らかにした。
(日本経済新聞 4月28日)
今後は、東洋ゴム工業が偽装していた55物件(うち、マンション25物件。3月13日国交省公表)以外の154 物件(うち、マンション 49物件。4月21日国交省公表)の安全性検証と東洋ゴム問題の再発防止策へと話題が移っていくのであろう。
さて、この免震偽装問題に対する大手不動産各社の反応はかなりの違いが見られることをご存知だろうか。
- 住友不動産(勇み足な反応)
- 東急不動産(中途半端な反応)
- その他の大手不動産(無反応)
住友不動産の反応(勇み足な反応)
国交省の最初の公表(3月13日)に対して、大手不動産のなかですぐに反応したのは住友不動産だけだった。
公表内容によると、現時点で大臣認定不適合が判明した建物が 55 棟ある(調査中)とのことでありますが、弊社の分譲済み物件、および分譲中の物件は該当していないことを確認いたしましたので、ご安心下さい。
平成 27年3月16日 住友不動産
「他社に先駆けて安心宣言」をしたまでは良かった。
でも、国交省の3月25日公表「55棟以外にも不正の疑いがある」には、関係者はかなり焦ったに相違ない。
他社との差別化が裏目に出て、勇み足状況になってしまっている。
住友不動産からは翌日、プレスリリースがなされている。
今般の報道を受け、弊社におきましても、同社から正式な発表があり次第、弊社物件について鋭意調査し、速やかにご報告申し上げます。
平成27年3月26日 住友不動産
その後、国交省が4月21日「新たに154物件ある」と公表しているが、住友不動産からは安全宣言が出されていない(4月28日現在)。
東急不動産の反応(中途半端な反応)
国交省の最初の公表(3月13日)に対して、住友不動産から一日遅れでプレスリリースがなされている。
2015年3月13付国土交通省から発表がありました、東洋ゴム工業(株)製造免震材料の大臣認定不適合等について、当社の開発・分譲物件(予定含む)については該当しないことを確認いたしましたのでお知らせいたします。
2015年3月17日 東急不動産
「住友不動産の後塵を拝したものの、他の大手不動産会社よりは早く『安全宣言』ができたのでよかった」と関係者は考えていたのかもしれないが(あくまでも筆者の想像ですが)、そのあとがよくない。
国交省の4月21日公表「新たに154物件ある」に対して、無反応なのだ。
これでは、東急不動産の免震マンションに問題の東洋ゴム製品が使われていると思われても仕方がないのでは。
住友不動産にしても、東急不動産にしても、最初の55物件に対して、確認結果を公表したのであれば、次の154物件に対しても、結果のいかんに係らず公表するのが筋であろう。
もし、偽造ゴムが使われていたマンションがあったとしても、正直に公表したほうが(もちろんマンション名は伏せざるを得ないが)、企業としては評価されるのではないだろうか。
ただ、他社が公表した後では、その評価の価値は下がるが。
その他の大手不動産(無反応)
その他の大手不動産(三井不動産、三菱地所、野村不動産、大京)からは、本件について、これまでのところまったくプレスリリースがなされていない(4月28日現在)。
実際に問題の免震装置が使われていたから、プレスリリースをしなかったのか。
あるいは、国交省の最初の公表(3月13日)の段階で、問題の免震装置が使われていないことが確認できていたが、様子見としたのかもしれない。
いずれにしても、本件についてプレスリリースをすることは、デメリットの方が大きいと判断した結果なのではないだろうか。
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