不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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マンション広告に見る”販促ワザ”、ワースト10(ソフト編)


マンションチラシの“定点観測”を始めて、来月で10年になる。この間に見てきたチラシは4,700枚を超える。
駐車場だけでなく、シャトルバスやスクールバスでも”無料”を謳うマンション・チラシがある。
ノー・フリー・ランチ(タダ飯はない)。“無料”とされている大半は、まわり回って、マンション購入者が負担していることを認識する必要がある。
あくまでも筆者の独断であるが、過去10年間に“観測”された「販促ワザ・ワースト10(ソフト編)」を以下に示そう。


1位:管理費・修繕積立金2年間無料(2005年2月19日)

大手町駅20分(快速利用・途中乗換え)、駅徒歩18分、総戸数47戸、14階建ての駅から遠い小規模マンション(平成17年10月竣工)。
「第1期完売御礼 今なら管理費・修繕積立金2年間無料。当社が2年間、管理費・修繕積立金を負担いたします」というとんでもないキャッチコピー。
返済例として掲載されている2LDK+S(66.23m2)販売価格2,728万円の住戸の場合には、月々12,030円(=管理費7,390+修繕積立金4,640円)の支払を2年間、売主が負担してくれるというのだ。
管理費・修繕積立金の2年間無料は、実質的に分譲価格の1%割引。
2年間無料のチラシに釣られてくるような人が多ければ、本物件の将来は危うい。「月々返済7万円台」は、2年間固定の優遇金利0.7%・35年元利均等返済が前提条件だから、3年目からは金利見直しによるローン負担増が確実だし、管理費・修繕積立金の無料期間終了がローン破綻に向かって追い打ちをかける。
「2年間無料」は、ローン破綻者が出やすく、マンションのスラム化につながりやすい、オキテ破りのとても危険なキャッチコピーだ。

2位:管理費ゼロ(2010年11月9日)

横浜市中区、JR関内駅徒歩9分、総戸数82戸のマンション。
1階店舗の家賃収入が入るから、マンション居住者の管理費はゼロという謳い文句。
賃料保証は最初の5年間だけ。6年以降は保証されていない。
店子(たなこ)に逃げられたら、家賃収入は入らず、修繕費用や固定資産税を負担し続けなければならないことになる。欲しくもない1階の店舗の建設費を負担させられて、「管理費ゼロ」を素直に喜ぶ人は、よほどの能天気だと思う。

3位:電車代1年間無料販促ワザ(2005年5月30日)

阪急不動産とオリックス不動産が兵庫県宝塚市で建築中の総戸数約600戸(32階建て+33階建て)の超高層マンション「ジオタワー宝塚」。マンション購入者は、1年間電車が無料になるという。
リリース記事をよく読むと、サービス対象は、阪急と阪神(ただし神戸高速線を除く)。相互乗入れ路線の電車、バス・タクシーは対象外。利用できるのは、1住戸あたり1名。IC定期券も対象外。
阪神、阪急で最も長い区間でも、大人片道600円。100万円を365日で割ると、2,777円。
ということは、阪神、阪急で最も長い区間を毎日2往復しても、100万円は使い切れない計算になる。
「電車代1年間無料」は、物件の差別化を狙った販促ワザだ。

4位:「焼きたてパン」販売サービス(2005年6月10日)

東京駅直通29分(快速利用)、駅徒歩10分、総戸数290戸(うち賃貸住戸34戸)、3棟(14階建+10階建+8階建)からなる、湾岸エリアに建つ大規模マンション。
「エントランス・ラウンジでは、焼きたての美味しいパンを味わっていただけます」という謳い文句。
フロントサービスのスタッフが、この先何十年も毎朝高級パンを焼いて販売し続けることは、はたして可能なのか?
「焼きたてパン」販売の経営者は、マンション管理組合。総戸数290戸の狭い市場を相手に、黒字を続けることは難しそうだ。オーブンが壊れたところで、「焼きたてパン」販売のサービスは終了か――。

5位:無料シャトルバス(2009年10月23日)

秋葉原駅直通12分、駅徒歩15分、総戸数567戸、14階建ての物流センター跡地に建つ中層の大規模マンション(平成22年1月竣工)。
このエコの時代に「駅徒歩15分」のために、わざわざ「無料シャトルバス」を走らせるのはなぜゆえか?
朝の通勤ピーク時の人数をさばけるのか? 残業で遅くなっても、「無料シャトルバス」は走っているのか?
多様な住民のニーズに応じられず、将来、「無料シャトルバス」の利用者数が減少したとしても、総戸数567戸の合意を取り付けて廃止するのは容易ではないだろう。かくして管理費の垂れ流しは続く・・・・・・。

6位:無料スクールバス(2008年4月26日)

秋葉原駅直通30分(つくばエクスプレス利用)、駅徒歩1分、総戸数977戸、5棟(35階建+18階建+34階建+18階建+32階建)からなる、ゴルフ場跡地を活用した新駅周辺開発地に建つ超大規模マンション群(平成21年3月竣工)。
「住民専用リムジンバス」はよく見かけるが、「無料スクールバス」を謳うマンション・チラシは珍しい。
8年後の「最長平成27年3月期末まで運行いたします」ということだから、当面は通学の足の心配はないだろう。
でも、2年後に小学校に入学する子供は、小学校を卒業する前に無料スクールバスがなくなってしまうぞ!

7位:総額5億円キャンペーン(2008年12月12日)

銀座駅乗り入れ24分、駅徒歩3分、駅前の大規模再開発の地に建つ10階建てと14階建ての大規模マンション。

  • マンション購入資金(割引券)プレゼントキャンペーン! 総額5億円!
    • 1等×3本(各期間1本):1,000万円券
    • 2等×15本(各期間5本):500万円券
    • 3等×132本(各期間44本):300万円券

1等に当選すれば、1,000万円券がもらえる(マンションが1,000万円安く買える)のだから、マンションを検討されている方にとっては、なんとも気になるキャンペーンだ。ただ、当選して割引券をもらうには、売主が指定する物件を購入する必要があるのだ。
たとえば、5,000万円の指定物件の購入契約を締結し、運よく1等の1,000万円券が当選すれば、実質的には2割引で物件を購入できることになる。
「総額5億円」とはいうものの、運よく当選できたとしても6%(3等、44名)から20%(1等、3名)の値引きでしかない。
この大した値引き率ではないのに、「値引き」という表現を用いずに、しかも「総額5億円」というインパクトのある数字で契約を呼び込もうとしているところが巧妙な販促ワザなのだ。

8位:ヘリコプタークルーズ(2007年11月16日)

大手町駅11分(途中快速に乗り換え、さらに地下鉄に乗り換え)、駅徒歩15分、総戸数700戸、17階建ての、河川沿いに建つ大規模マンション(平成21年2月竣工)。
「QUOカード」や「抽選で10万円ギフトカード」などはよく見かけるが、「貸し切りヘリコプタークルーズ」というのは、とても珍しい。
貸し切りヘリコプタークルーズって、どれくらい費用がかかるものなのか?
ネットで調べてみると「エクセル航空」「朝日ヘリコプター」「日本フライトセーフティ」「中日本航空」など、各社がいろいろな遊覧サービスを実施している。たとえば、日本フライトセーフティ(株)の「東京DAYコース」――6ヶ月以内有効の贈答用ペアチケットだと、二人分で34,500円(税込)。
江東区新木場にある東京へリポート(新木場駅より車で約10分)から、お台場〜レインボーブリッジ〜芝浦埠頭〜東京タワー〜東京駅(八重洲口)〜隅田川〜夢の島マリー。
約15分の貸し切りフライトを楽しめる。

9位:引渡し後2カ月間、施工会社担当者の常駐対応サービス(2009年8月28日)

新宿駅直通25分、駅徒歩10分、総戸数76戸、8階建て、第1種住居地域に建つ中規模マンション(平成22年2月竣工)。
「つくり手が直接対応する施工会社2カ月間常駐体制」という、購入後の珍しいサービス。

お引渡し後の2カ月間、施工会社の担当者が建物内もしくは現地付近などに常駐。
ご購入後に気づかれた建物や設備に関するご質問やご要望、各種の手直しなどに対応いたします。
常駐は週5日間の日中のみとなります。

この引渡し後2カ月間の常駐対応サービスという“マニフェスト”は、確実に実行されるのか?
この物件の施工会社は、本社が埼玉県にある無名のゼネコン。この物件近くに支店があるわけではない。
「お引渡し後の2カ月間」だから、たとえば竣工後1年間をかけてチョコチョコ売れるような場合には、施工会社の担当者を1年+2カ月間、「現地付近などに常駐」させる必要がある。
担当者常駐に要する経費がゼネコン負担だとすれば、マンションの工事費を圧縮する(建物の品質が低下する)方向に働くだろうし――売主負担だとすれば、まわり回って購入者の負担になる。
私的整理の一種である事業再生ADR(裁判外紛争解決)手続き中のこの売主。社員の約半分に当たる約360人の希望退職を募集している。
「つくり手が直接対応する施工会社2カ月間常駐体制」が、どのようなカタチで実行されるのか気になるところだ。

10位:ローン返済支援保険料を売主が2年間負担(2006年9月15日)

大手町駅26分(途中乗り換え)、駅徒歩2分、総戸数19戸(店舗1戸含む)、10階建ての商業地域に建つ小規模マンション(平成18年10月竣工)。

  • ローン返済支援プラン/当社負担 当初2年間
    • 世帯主の病気やケガによる長期入院時に、安心サポート
    • 突然の会社倒産による失業時に、安心サポート
  • 分譲サポートプラン/当社負担 当初1年間
    • 火災や水害、盗難時等の家財に対する「分譲家財総合保障」、個人的な賠償責任に対応する「個人賠償責任保障」の二つの安心保障と、全国の温泉旅館や有名レジャースポットの割引サービスをセットにしたお得なプランです。

これらの保険料を「負担」しているのは、表面上は売主かもしれないが――売主が「負担」している保険料は、マンションの分譲価格に含まれているだろうから、実質的に保険料を「負担」しているのはマンションの購入者だ。とうことは、これらの保険を必要としていないマンション購入者にとっては、余計な負担を強いられていることになる。
そもそもこのようなプラン(保険)に惹かれて本マンションを選ぶ人が多いとすれば、「当社負担」期限後に、住宅ローン破綻する人が増える恐れはないのか。ローン返済支援保険料を売主が2年間負担するという販促ワザは、禁じ手だと思う。

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2019年6月1日、このブログ開設から15周年を迎えました (^_^)/
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