不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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「マンション総合調査結果報告書」にみる老朽化問題(建替え問題)


国土交通省が4月23日、「平成25年度マンション総合調査結果」を公表。
同調査は、「管理状況」や「居住者の管理に対する意識」等、マンション管理に係る基礎的な資料を得ることを目的として、約5年ごとに実施されている。
データ編も含めて344ページとかなりのボリュームのある報告書の中から、マンションの老朽化問題(建替え問題)をひも解いてみた。


「長期修繕計画」の作成状況
マンションのスラム化を回避するうえで重要なことのひとつは、シッカリした「長期修繕計画」に基づいた修繕積立金を算出することだ。
ところがこれが結構いい加減で、「長期修繕計画で算出された必要額に基づいて決めた」マンションは全体の76%。「管理費の一定割合とした」のが7%、「近隣のマンションの金額を参考にして決めた」のが2%ある。
修繕積立金の額の決定方法


竣工年次別に見ると、次図のように古いマンションほど「長期修繕計画で算出された必要額に基づいて決めた」割合が低くなっている。
修繕積立金の額の決定方法(竣工年次別)


そもそも「長期修繕計画」が作成されているのかと言えば、全体の89%のマンションで作成されているのでチョット安心できるのだが――
竣工年次別に見ると、次図のように古いマンションほど作成されている割合が低くなっている。
長期修繕計画の作成状況


長期修繕計画の計画期間を見てみると、最近のマンションは30年で計画されているのだが、古いマンションほど計画年数が短くなる傾向がある。
長期修繕計画の計画期間


古いマンションほど寿命が短いのだから、計画年数が短くなるのは当然だが、では計画年数が短くなったからといって、マンションの老朽化問題(建替え問題)にシッカリと向き合っているかといえばそうでもない。
マンションの老朽化問題(建替え問題)
マンションの老朽化問題の対策について、シッカリと議論を行っている管理組合は全体の36%。
しかも22%が建替えではなく、「修繕・改修の方向」で具体的な検討をしたとなっている。
また、11%は「議論はしたが、具体的な検討をするにいたっていない」。
老朽化問題についての議論の有無・方向性


老朽化が進んでいよいよ建替えしなければならなくなったときに、容積率に余裕がないと建替え後の戸数を増やせないので、そのぶん現住民の負担が大きくなる。
「平成25年度マンション総合調査結果」には、「現在の法定容積率」に対する「実際に利用している容積率」の割合として「充足比」のデータも掲載されている。
「充足比」とは、ようするに建替え後にどれだけ戸数を増やすことができるかという指標だ。
竣工年次別に容積率の充足比を示したのが次のグラフ。
容積率の充足比(竣工年次別)


この10年間に建てられたマンションの充足比は1.0なので、将来、容積率が緩和されない限り建替えが難しいことを意味している。


建物規模別に容積率の充足比を示したのが次のグラフ。
容積率の充足比(規模別)
75戸未満のマンションは充足比が1.0なので建替えが難しいのだが、75戸超・150戸以下のマンションは充足比が0.9なので多少は建て替えがしやすくなるかもしれない。
300戸超となると充足比が0.8を下回るので、建替えの現住民負担が少なくなりそうだが、大規模ゆえに建て替えの合意形成が難しそうだ。


マンション再生協会のホームページに掲載されているマンション建替え円滑化法による建替え事例を可視化したのが次のグラフ。
建て替え前戸数と倍率の関係
ヨコ軸が建て替え前の戸数、タテ軸は建替え倍率(=建替後戸数÷建替前戸数)。
一部の例外を除き、建て替え後の戸数が増えていることが分かる。戸数が増えないと建替えが難しいことを示唆している。


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