不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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選手村 なぜ大会終了後にタワーマンションを建てるのか

東京都は12月19日「選手村 大会終了後における住宅棟のモデルプラン」を公表。
2020年東京オリンピック・パラリンピックで使用された選手村の住宅棟はその後、特定建築者制度という民活によって、住居などに生まれ変わる計画となっている。


住宅棟のモデルプランなるものを見てみると、板状の 住宅棟が22棟(14階~17階)、大会終了後に建設するという超高層マンションが2棟(50階)総戸数6,000戸というデベロッパーが泣いて喜ぶような絵が描かれている。

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(出所:東京都)

 

23区の新築マンションの供給戸数は、2010年~2012年が2万戸の水準。2013年は消費増税前の駆け込みでやや上昇し3万戸弱(下図参照)。

だから選手村に建設されるマンションの総戸数6,000戸というのは(単年度で供給されるわけではないが)、23区に供給されている新築マンションの2割~3割にも相当する戸数だ。

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(不動産経済研究所のデータより作成)

 

都心でも空き家問題が顕在化されつつある中で(都心の「空き家率」を可視化(地図化)してみた)、選手の宿泊施設を改装して販売される板状の 住宅22棟(14階~17階)はまだしも、大会終了後に建設するという超高層マンションが2棟(50階)は不要ではないのか。

舛添知事の定例記者会見(12月19日)での記者との質疑応答を見てみよう。

【記者】読売新聞の吉良と申します。

選手村の新しいプランが出てるんですけど、この中で新しいの、超高層タワーが2棟建つということが非常に新しいと思うんですが。

これは大会が終わった後に建てるということで、知事の中では、その周辺の住宅でも売り切るのが非常に大変だという発言を以前聞いていたもんですから、これは何か時間をずらしてですね、こういうのを建ててですね、重層的な世代が住むまちにするとかですね、ロンドン行ったときの視察とかの経験を受けた内容かなと思うんですが、そのあたりのことがあれば教えていただけますか。

さすが読売の記者はヨイショ質問がうまい。

【知事】街づくりをやる時に単身者だけしか住まない街ということだと、やはり街になりません。そうすると、子供が3人いる家族も来てもらうというようなことになれば、おそらく、それは間仕切りを取るにしても、これだと無理だと思うのです。

だから、そういうことが可能な住宅棟をつくることによって、この二つの住居用超高層タワーを含めて2棟あるわけですけれど、約6000戸ということなので、少なくともバラエティのある間取りをつくることによって、あらゆる年齢層、あらゆる家族構成の方々が来る。

大体普通の街はそうですよね。単身者もいれば結婚している人、子供がいない人もいれば、子供が3人おられる方も、おじいちゃん、おばあちゃんと住んでいる方もおられる。

そういう意味での街づくりということなので、逆にこれがなかった、全くこの二つがなかったらもっと売れるスピードが落ちると思います。そういう観点からのモデルプランということなので、まだ完全に決めている訳はないですから、今からいろいろな意見を入れながら修正すべきところは修正したいと思っています。

なぜ大会終了後に超高層タワーマンションを(2棟)建てるのか。

舛添知事の回答を要約すると次のようになる。

  • 単身者だけでなく、家族連れも住める街づくりが必要
  • 選手の宿泊施設の間仕切りを取って改装しても、3人家族が住めるような間取りにはできない
  • だから家族も住めるような超高層タワー棟を大会後に建てる

最初から、選手の宿泊施設に、大会後の改装で3人家族(あるいは4人家族)が住めるような工夫を折り込んでおくことはできなかったのか。

50階建ての超高層マンションを購入することができるような3人家族は限られているのではないか(投資用マンションになるのではないか)。

 

ちなみに、招致活動時期の2009年2月に作成された、開催プラン「テーマ11 選手村PDF/11.8MB)」頁282を見ると、すでに超高層建物が薄らと描かれていることが確認できる(赤枠内)。

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(出所:東京都)

 

2009年2月といえば、石原慎太郎都知事の時代。

なんだ、超高層マンションは舛添さんのアイデアではなかったのね。

(本日、マンション広告なし)

 

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