全国的に猛暑が続いている。
日刊スポーツ新聞社のすまい情報サイトに「マンションの最上階は、他の階よりも暑いってホント!?検証してみた」という興味深い記事が掲載されていた。
記者が住む10階建てマンションの10階と9階(記者の事務所)の、朝8時前後の室温データ(表形式)の記録が公開されている。
グラフにするとこんな結果。
軒並み10階のほうが高い。
8日間の平均では2℃も10階(最上階)のほうが高い結果となっている。
なぜ、最上階の住戸は暑いのか?
この辺の事情を解説した文章を拙著『<スーパー建築士が教える>一生住めるマンション』から、以下に抜粋しておこう。
最上階の住戸は眺望は良いが、温熱環境的には良くない
マンション棟内で、夏涼しく冬暖かいベストポジションは、最上階のひとつ下の階で、かつ両隣を住戸に挟まれた位置です。
上下左右を住戸に挟まれているわけですから、自分の住戸の周りが分厚い断熱材で覆われたのと同様の状態にあると言えます。そのうえ夏であれば上下左右の住戸が冷房している冷熱効果、冬であれば暖房の温熱効果も期待できます。では、眺望が一番良い(もちろん分譲価格的には高い)最上階の住戸を、どうして選んではいけないのでしょうか。
最上階の住戸は眺望は良いのですが、温熱環境的に良くないので、選ぶべきではないというのが理由です。確かに質の良いマンションであれば、最上階の住戸の天井裏には、夏の日射の影響を低減させるために充分な断熱材が施されているはずです。でも、夏の強い日射を受けた屋上のコンクリート(=最上階の天井裏)は、昼間は熱を蓄積し、夜間に室内外に向かって熱を放射します。このとき、天井裏に充分に断熱材が施されていたとしても、天井のコンクリート面から放射された熱の一部は断熱材を通過して室内側に放射されてきます。つまり昼間に蓄積された日射熱が天井面から室内に向けて放射されるわけです。
天井面の表面温度が体温より高い場合には、ふく射熱となって人体に直接伝わり、ほてりを感じるため、エアコンでいくら冷たい空気を対流させて部屋の温度を下げても、寝苦しいということになります(焚き火に近づくと、外気温が低くても体が熱を感じるのと同様の原理です)。
最上階の熱的な弱点を理屈で解説するとそういうことなのです。以前私が住んでいた千葉の住戸で実際にこの現象をいやというほど体験しました。
大手ゼネコン施工による三階建ての集合住宅の最上階(三階)に七年間住んでいたのですが、毎年夏になると、エアコンを入れても天井面からのふく射熱でずいぶん寝苦しかったことを、今でもよく覚えています。