不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


「幼児用自転車」「幼児用三輪車」も見込んだマンション

敷地の北側を幹線道路が走っている小規模マンション。

【予告広告】大手町駅直通11分、駅徒歩9分。総戸数39戸、13階建。販売戸数/未定、3LDK(63.30m2)〜4LDK(83.84m2)。販売価格/未定。平成26年10月上旬竣工(本チラシ掲載日の1年半後)。

新聞半紙大のチラシのオモテ面のキャッチコピー。

  • 家族の思いをかたちにする上質レジデンス

チラシ裏面の「物件概要」に目を凝らすと、珍しい表記に気がつく。

  • 駐輪場/78台、幼児用自転車置き場/7台、幼児用三輪車/5台

「幼児用自転車置き場」や「幼児用三輪車」の台数まで配慮されているのは、「家族の思いをかたちにする上質レジデンス」としての意思の表れか。


でも、よ〜く考えると、この設定に無理があることにすぐに思い当たる。
総戸数が39戸だから、駐輪場78台は1世帯あたり2台の設定。1世帯あたり2台の設定の良し悪しは別として、よく見かかる設定だ。
「幼児用三輪車/5台」は、大ざっぱに言えば小学校に上がる前の幼児のためのスペース。
39世帯のうち、1割強に幼児がいるという設定。
また、「幼児用自転車置き場/7台」は、小学校の中・低学年のためのスペースだから、39世帯のうち2割弱に小学校の中・低学年の児童が一人いるという設定になる。


数年後にどうなるかと言えば、「幼児用三輪車」に乗っていた5人の幼児は、三輪車から「幼児用自転車」に乗り換えることになる。
ところが、その際に「幼児用自転車」に乗っていた児童7人のうち5名が「幼児用自転車」を卒業していないと、「幼児用三輪車」を卒業した5人の「幼児用自転車」の置き場が確保できないことになる。
確実に困るのは、「幼児用自転車」を卒業した7名の大人用自転車置き場が想定されていないことだ。


このように「家族の思いをかたちにする上質レジデンス」の具体的なカタチとして、「幼児用自転車」や「幼児用三輪車」の設置スペースを確保しているのは、一見良さそうだが、目先の販促ワザでしかないことに思い当たる。


ところで、駐輪場の設置台数はどのくらい必要なのか?

駐輪場の設置台数はどのくらい必要なのか?
本物件のようにファミリー向けのマンションであれば、パパとママと子供の、最低でも一家に3台以上の駐輪スペースが必要というのが筆者の基本スタンス。
でも、筆者が5年前に調べた首都圏の新築マンション(全198件)の駐輪場の設置台数は、平均値が1.8台/戸。1戸あたり2台の物件が全体の約7割を占めているという結果だった。
総戸数と1戸あたりの駐輪台数の関係
1戸あたりの駐輪台数の分布
駐輪台数が1戸あたり2台に満たないという新築時の設定が、数年後の駐輪スペース不足問題を発生させている例は少なくない。


23区の駐輪場の設置基準はどうなっているのか?
都内23区の条例等をザットひも解いてみたところ、具体的な数値が規定されていたのは下記の10の区。
ただ、最大でも「1戸当たり2台以上」というのが現状だ(江東区・中野区・葛飾区・江戸川区)。

  • 台東区(集合住宅の建築及び管理に関する条例)
    • 総戸数と同数以上を敷地内に設置して下さい。
  • 墨田区(集合住宅条例)
    • 1住戸(室)につき1台以上の駐輪場(ラックの場合はラックを台数分、平置きの場合は自転車1台あたりの面積は幅0.6m奥行1.8m)を整備
  • 江東区(江東区マンション等の建設に関する条例施行規則)
    • 1戸当たり2台以上
  • 中野区(集合住宅の建築及び管理に関する条例施行規則)
    • ファミリータイプ住戸数の2倍に、ファミリータイプ以外の住戸数を加えた数の台数を収容する自転車等置場(バイク置場を含む)を設けること。
  • 豊島区(中高層集合住宅建築物の建築に関する条例施行規則)
    • 駐車施設の収容台数は、建築計画に係る住戸の総戸数以上の数とし、そのうちの4分の1以上を原動機付自転車の駐車施設として兼ねられるようにすること。【努力義務】
  • 北区(集合住宅の建築及び管理に関する条例)
    • 55m2未満の住戸1.0台/戸
    • 55m2以上の住戸1.5台/戸
  • 板橋区(大規模建築物等指導要綱)
    • 総住戸数 (a) < 100戸 → 総住戸数(a )台
    • 100戸 ≦ 総住戸数 (a) → (b)+{(a)−(b)}×1.30台
      • 35m2以上の住戸数の130%
      • 35m2未満の住戸数(b)の100%
  • 足立区(「足立区環境整備基準」の協議事項(集合住宅編))
    • 「住戸数×150%(単身者向け住戸については、100%)」の台数を収容できる自転車駐車場を敷地内に確保して下さい。
  • 葛飾区(中高層集合住宅等建設指導要綱)
    • 敷地内に住戸数の2倍(ワンルーム形式住戸については住戸数)に相当する台数以上の自転車(原動機付自転車を含む。)を収容できる自転車置場を設置するものとする。
  • 江戸川区(住宅等整備事業における基準等に関する条例)
    • 次の各住戸専有面積に応じた台数分の合計以上
      • 50m2未満 1台/戸
      • 50m2以上 1.5台/戸
      • 60 m2以上 2台/戸
2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.