不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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埼玉県の「子育て応援マンション認定制度」をひも解いてみた

埼玉県が6月9日、「子育て応援マンション認定制度」の開始を公表。
なぜ、いまこの時期に、かような認定制度を始めるのか、違和感があったので、県が公表した資料をひも解いてみた。


この認定制度の目的は何か?
埼玉県子育て応援マンション認定制度要綱(制定 平成23年4月1日)の第1条(目的)に次のように定義されている。

第1条(目的)
この要綱は、子育てにやさしいハード・ソフトの工夫をしている優良なマンションを埼玉県子育て応援マンションとして知事が認定することで、子育てしやすい住環境の形成と今後の高齢社会を支える若年世代を県内への定住を促進することを目的とする。

「子育てしやすい住環境の形成」と「若年世代の埼玉県内への定住促進」がこの認定制度の導入目的ということらしい。


認定要件のレビュー
次の4つをすべて満たしていることが必要とされている。

  • (1)全住戸の2分の1以上の住戸の住戸専用面積は、分譲住宅の場合は65m2以上、賃貸住宅の場合は55m2以上であること。
  • (2)階数が2以上の場合は、エレベーターを設置していること。ただし、2階建てのメゾネット形式の建築物の場合は、この限りでない。
  • (3)品確法に基づく住宅性能第5条第1項に定める設計住宅性能評価書及び建設住宅性能評価書を取得していること。ただし、要綱制定前に着工している場合は、この限りでない。
  • (4)その他法令等に違反していないこと。



子育てマンション(=若年世代用マンション)だから、分譲マンションの専有面積は65m2以上あればいいという発想なのだろうか。
良好な住宅ストックが求められている最近の流れに反していないのか?
と思って、平成19年3月に策定された「埼玉県住生活基本計画」をひも解くと、「都市居住型誘導居住面積水準」として、2人以上の世帯の面積は次のように記されていた。

  • 20m2×世帯人数+15m2
  • 上記の式における世帯人数は、3歳未満の者は0.25人、3歳以上6歳未満の者は0.5人、6歳以上10歳未満の者は0.75人として算定する。ただし、これらにより算定された世帯人数が2人に満たない場合は2人とする。

「子育て応援マンション認定基準」では、「子どもとは、0歳児から概ね12歳児(小学校6年生)までの者をいう」となっているから、夫婦と幼稚園児一人の場合、上式によれば、65m2(=20m2×2.5人+15m2)が「都市居住型誘導居住面積水準」ということになり、認定基準の65m2以上とも整合しているが――
この幼稚園児が小学校に入ると70m2(=20m2×2.75人+15m2)に増加するし、中学生にもなると75m2(=20m2×3人+15m2)とさらに増加する。
また、二人目の子供ができると、もはや「子育て応援マンション認定基準」の65m2以上あればいいという、面積水準では狭すぎるのだ。


(3)の設計住宅性能評価書・建設住宅性能評価書を取得していることが認定の前提となっているとことについては、どうか?
某大手デベロッパーは、「住宅性能表示はあくまで最低限のチェックポイントにすぎない」として、評価書取得の道を選ばず、独自の基準にこだわりをみせている。
この某大手デベロッパーのマンションは、「子育て応援マンション認定制度」からは門前払い状態だ。


(4)の法令順守要件についてはどうか?
建築基準関係法令を満足していないと建設できないのだから、認定基準の(4)は、言わずもがなだろう。


とまあ、批判めいたことばかり書き連ねたが、ただ1点、特筆すべきことがあった。
認定基準のうちの「必須項目」の一つに、専有部分の仕様として、次のように音環境が明記されていることだ。

  • (4)軽量床衝撃音対策として、上下階との界床には、日本工業規格のLi、r、L-50 等級相当以上の材料を使用すること。
  • (5)重量床衝撃音対策として、上下階との界床には、日本工業規格のLi、r、H-55 等級相当以上の材料を使用すること。

軽量床衝撃音対策のL-50、重量床衝撃音対策のH-55は、どちらも品確法の「等級4」相当で、日本建築学会が「一般的な性能標準」としているレベルだ。
「日本建築学会が推奨する好ましい性能水準」である、最上級の「等級5」でないが、品格法が「音環境に関すること」を選択項目(=表示義務がない)としているのに対して、「子育て応援マンション認定制度」では具体的な基準が義務付けられている点が画期的なのだ。


この他にも、認定を取得するための基準について、「間取り等の工夫」や「事故防止への配慮」といった専有部分に係る事項から、「近隣の子育て支援施設の数・そこからの距離」や「生活関連施設からの距離」といった立地に係る事項まで、微に入り細に入り規定されている。
その割には、肝心の日当たりについて規定がない。
都市部で良好な日当たり確保することを最初から諦めた結果なのか・・・・・・。


「子育て応援マンション認定制度」のご利益は?
この「子育て応援マンション認定制度」の対象は、新築マンションだけでなく既存(中古)マンションも対象となっている。
生活者サイドから見て、「子育て応援マンション」を選ぶメリットはどこにあるのか?
一つは、建物仕様や立地環境について、県のお墨付きが得られていること(安心感をもって選べること)だろう。


もう一つは、埼玉りそな銀行(店頭表示金利マイナス1.2%)や武蔵野銀行(店頭標準金利マイナス1.4%)など、住宅ローンが優遇されていることだ。
※他行の状況など、詳細はこちら

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以上、「子育て応援マンション認定制度」の内容ををひも解いてみたのだが、結局、なぜ今この時期に、かような認定制度を始めたのか、よく分からなかった。
ただ、東京都が1年前(10年5月18日)に公表した「子育てに配慮した住宅のガイドブック」よりは、はるかに内容が充実していることだけは分かった。

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2019年6月1日、このブログ開設から15周年を迎えました (^_^)/
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