不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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業界本位、短すぎる登録受付期間

スーパー銭湯の跡地に建つ大規模マンション。

【第1期 本広告】大手町駅直通14分、駅徒歩6分。総戸数163戸、13階建。販売戸数10戸、1LDK(46.32m2)〜4LDK(92.11m2)。販売価格3,398万円〜5,998万円、最多価格帯4,600万円台(3戸)。平成23年3月下旬竣工(本チラシ掲載日の10カ月後)。

  • ※1月10日(日)、1月17日(日)、2月7日(日)、5月7日(金)の物件と同じ。



新聞半紙大のチラシのオモテ面に「第1期新発売!!」の目立つ見出し。
左下の隅には、なぜかゴマ粒サイズの小さな文字で、まったく目立たないように次の記載が。

  • 第1期登録受付のご案内
    • 登録受付期間・時間:5/22(土)10:00〜12:00
    • 抽選会日時:5/22(土)12:30〜

通常であれば、大きく目立つように告知される、登録受付のお知らせ。
なぜゆえに、ここまで目立たなく表示するのか?
本日金曜日のチラシで告知し、明日土曜日の午前中に登録受付を締め切るという不自然さに答えがありそうだ。


念のため、『マンション・チラシの定点観測データベース』を使って、過去のチラシを調べていて、大変興味深い事実を確認した。
この物件については、3月26日(金)のチラシで「第1章」として、「販売戸数/65戸」の本広告が出されている。
「第1章」という意味不明な表現はともかく――、この時も、金曜日(3月26日)のチラシで告知して、登録受付は4日後の火曜日(3月30日)という短期間での受付だった。
しかも、受付は、火曜日の午前8時〜11時というピンポイントだ(抽選は同日の午前11時30分)。
平日の火曜日に、わざわざ仕事を休んで登録に出かけた人が何人いたのか・・・・・・。


これら「第1章」と「第1期」の「本広告」の告知期間の短さから想像できるのは――
「予告広告」でモデルルームに集客しながら、販売見通しが得られた段階で「本広告」を出して、短期間で登録受付・抽選を行うという、最近流行りの販促ワザだ。


本来、「予告広告」とは、販売価格などが確定していないために、「本広告」に先立ち、物件の販売開始時期をあらかじめ告知する広告のこと。
平たくいうと、「予告広告」とは、販売価格を早期に決定できない(決定したくない)デベロッパーと、物件情報を早期に入手したい消費者、双方のニーズを満たすために生まれた特例の制度だ。
ところが、物件情報を消費者に早期に伝えようという本来の趣旨から外れ、デベロッパーに都合のよい販売価格決定のための集客手段となっている。


「そんなの当たり前じゃないか」「通常の商行為の範囲じゃないか」といった業界本位の反論が聞こえてきそうだが――。
告知期間を充分に確保することは、消費者の利益になることだと思う。


この物件については、さらにオチがある。
不動産経済研究所が毎月発表している「首都圏マンション市場動向」の4月度の資料に次のような記載があるのだ。

即日完売物件(11物件534戸)

  • ○○(=この物件名) 1期1次 (△△区、90戸、平均5,314万円、平均1倍、最高3倍)
  • The RESIDENCE国立 1期1〜3次 (国立市、49戸、平均5,679万円、平均1.09倍、最高6倍)
  • Brillia e-SQUARE(矢向) (幸区、129戸、平均4,422万円、平均1.8倍、最高5倍)
  • 検見川浜レジデンス 1期 (美浜区、218戸、平均4,048万円、平均1.22倍、最高4倍)

期分け表現が「第1章」、「1期1次」と統一されていないのはともかく――
この物件の第1章(1期1次)のチラシの「本広告」に記されていた販売戸数は「65戸」。
ところが、上記の不動産経済研究所の即日完売情報では、「90戸」が売れたことになっている。
チラシの「本広告」で表示されていた販売戸数「65戸」を超える「90戸」を売ってしまってもいいのか?


第1章の「本広告」では、65戸を対象とした面積や価格等しか表示されていない。
すなわち、25戸分(=90戸−65戸)の面積や価格等は表示されていないのだ。
業界の自主ルール「不動産の表示に関する公正競争規約」第8条(必要な表示事項)が守られていないということでアウト!

(本日、マンション広告6枚)

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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